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日本酒がいかにして今の形になったのか『日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技』【読書ログ#148】

『日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技』(和田 美代子、高橋 俊成)

本書は、日本酒に関して醸造から酒のバリエーション、飲み方・楽しみ方までなんでも紹介しているとの説明だが、特に力が入っているのが酒の醸造についての説明だ。

ページ数にして3分の2位の分量を使って、しっかり、みっちり、実に細かく、科学的な説明や文化、歴史の話も交えて紹介してくれているのだが、この部分が本当に面白い。このあたりはさすがブルーバックスだなというクオリティ。

結構あれこれと酒についての本を読んできたし、モリモリ飲んできたのだけど、それでも「へー! そうだったのか!」と思う話が多くて嬉しい。

例えば、酵母の話でも「協会酵母」は正しくは「きょうかい酵母」とひらがなで開くのだよ。とか。

酵母名の末尾に「01」と数字が付く場合、それは泡無し株の酵母で、醪が発行する際の高泡が発生しない品種改良株なんだよ。とか。

最近は鑑評会向けの酒に1801酵母が使われていることが多いのだけど、これは「きょうかい18号」の泡無し株選抜だったのだと知る事が出来る。

この手の知識が、日々の晩酌をさらに素晴らしいものにする為に役立つのか? と問われると、恐らく、この本に書かれている知識が無くても、美味い酒は美味い。

では、なぜこの本を熱心に読むのか? なぜなんでしょうね? きっと、酒飲みは、知識も呑みこんで、全身全霊で酔っていたい生き物なのだ。酒好きがあつまって、酒の蘊蓄をあてに酒を飲む。最高だ。

それにしても、日本酒の製造工程の複雑さに脱帽する。

いったいどれだけの偶然が重なってこの形になったのか。

いったいどれだけの工夫を重ねてこの形になったのか。

あまりにも複雑だし、どうしてそれに気が付いたの? という事があまりにも多すぎる。

進化を学ぶと、生物学を学ぶと、あまりの偶然と自然選択の美しさに神の見えざる手を感じるというけど、日本酒の醸造工程にも同じような感想を抱く。

この酒は、米を心から愛し続けた日本人へ、酒の神様がギフトとして贈ってくれたに違いない、なんて思ってしまう。

以前紹介した「酒米ハンドブック」とあわせて熟読すれば、日本酒製造に関する知識は十分だ。あとは沢山飲みましょう。

飲むぞー!

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。