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食わず嫌いは良くなかった『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』(三上延)【読書ログ#152】

涼宮ハルヒのシリーズを読み読書ログを書いたとき、このシリーズもすすめられた。きっとあなたは気に入ると。

進められた本は、わりと間髪入れず読むようにしていたのだけど、このシリーズは手を付けられずにいた。だって、似たような表紙の似たような題名のシリーズが一緒に沢山並んでいるから、流行に乗って乱造されたものなのかなぁ、手を付けにくいなぁ、なんて思っていたの。

でも、その似たような一連の本たちの源泉が、本シリーズらしいと聞いて、すこし興味を取り戻した。そうか、そう聞くと面白そうな雰囲気が出て来たぞ。なんて思って書店で手に取る。でも、でもなぁ。表紙の絵が気に入らなかった。おとなしそうな黒髪ロングの女性が、胸の大きさをことさら強調した格好で、沢山の本の中に佇み、本を読んでいる。

一緒に平積みになっている他の巻も、同様に胸の大きさが協調された格好をして本を読む姿。この「おとなしそうな巨乳の女性」を消費させようとしているこの嫌な感じ。

結局買わずにそっと戻す。

なんてことを何度かやっていたら、啓文堂で若い女性が2巻~6巻をまとめ買いする光景に出くわした。そうか、あなた、1巻読んでみて、気に入ったから全部買っていくんでしょ? そうでしょ? 面白かったんでしょ? そうでしょ?

そうかー、面白いのかー。

表紙の絵とか気にせず、余計な事は気にせず、とにかく読んでみたらいいんだろうな。

ということで、1巻を買ってみた。

『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』(三上延)

すぐ読んだ。面白かった。

子供向けのライトノベルかと思っていたが、わりと大人でも楽しめる、古書をめぐるミステリー。古書にまつわる蘊蓄も面白い。ちゃんと取材をして調べて書いているのだろうな、

そうか、面白いから売れているのだね。「おとなしそうな巨乳の女性」ってだけで売れる時代じゃないよね。すみませんでした。

物語の主人公はこの表紙の女性ではなく、五浦大輔(ごうらだいすけ)という23歳の男性だ。彼は、あることがきっかけで本が読めなくなってしまった。本を手に取り、ページを手繰ると気分が悪くなってしまう。そんな彼が古書店でアルバイトをすることになった。

表紙の女性は篠川栞子(しのかわしおりこ)という。鎌倉の片隅に「ビブリア古書堂」という古書店で店主をしている。極度の人見知りで、家族や気心知れた人以外とはまともに会話も出来ない。だが、古書に関する知識と情熱が並外れており、一度読んだ本であれば、あらかた内容は覚えているという異能の持ち主だ。

そして、この二人が「付かず離れずで男女の関係になるかならないかの微妙な距離感のまま」という、例のパターンで物語が進んでいく。もう、ガチで定番なんだけど、この手の話は受けれてしまえばとても楽しい。

そして、このシリーズで大事な役割を果たすのが古書だ。本シリーズは各巻に3つから4つの短編が収められており、各話ごとに1冊、テーマとなる古書が用意される。

シリーズ1作目となる本書では、下記のようなラインナップだ。

第一話 夏目漱石「漱石全集・新書版」(岩波書店)
第二話 小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」(新潮文庫)
第三話 ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)
第四話 太宰治「晩年」(砂小屋書房)

なかなか渋い。

1話目では、大輔が祖母の残した本を見てもらう為に足を向けたのが、栞子が店主を務める「ビブリア古書堂」だったことから思わぬ方向に話が転がる。大輔と栞子が出会い、大輔の「本が読めない」の秘密を解き明かし、大輔が栞子の店で働くことになった話。

その後2話、3話と、栞子のまわりの人物達を紹介するようなエピソードが続き、4話はとたんにミステリー色の強い展開に。

この4話、すこし話の流れに無理はあるのだけど、大輔の栞子理解につながる様なエピソードになっていて、よし、この先の長い展開にも付き合ってやるかと思わせるような話だ。

ということで、2巻から先も購入したのでした。そちらも紹介しますね。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。