データセンターとは?
一言で言えば…
インターネット用のサーバやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した建物の総称を指します。
特にインターネット接続に特化したものをインターネットデータセンター (Internet data center、iDC)と言う場合があります。
データセンターの特徴
まず、大量の通信回線を利用できることが挙げられます。通信事業者の光ファイバーなどの通信回線が通常のオフィスビルよりも多く引き込まれており、複数の通信事業者の回線が利用可能です。
次に、災害時にもサービスの提供に支障が出ないように、建物自体が耐震構造になっています。さらに、大容量の蓄電池や自家発電装置を備えており、電力供給が途絶えた場合に備えています。
データセンター内で火災が発生した場合には、通常のスプリンクラーではなく、二酸化炭素やフロンガスによる消火設備が設置されています。これにより、設置されている機器を極力痛めないようにしています。
また、複数のコンピュータを集約して設置しているため、運用を工夫すればデータの処理量に応じて最適な台数で処理を行うことが可能です。これにより、余分なコンピュータリソースを導入する必要がなくなり、コスト削減、ひいては省エネ化の推進につながります。
さらに、専門の管理者が24時間365日体制で高品質な運用を効率的に行っているため、運用コストの削減にも寄与しています。このように、データセンターの活用促進は、個人のみならず、あらゆる企業活動においてさまざまなメリットをもたらし、豊かで持続可能な低炭素社会の実現につながると考えられます。
データセンターの効用
建物の利用によるエネルギー効率化
オフィスでは、夜間や休日など室内に人がいない時でも、室内のサーバの冷却のため、空調を行っているところがあります。このため、夜間や休日には、効率が悪い低稼働率領域で空調機器を運転しています。
オフィスでは、室内全体を冷やすため、送風経路が長くなる、窓からの日射など建物外から侵入する熱が大きい、室内で冷風がサーバに届く前にサーバの排気熱と混ざってしまうなどの問題があります。
サーバを収容する専用の建物であるデータセンターは、こうした問題を解決して設計されており、最も少ないエネルギーでサーバを稼働できる施設です。
専用設備の利用によるエネルギー効率化
旧式の設備で空調効率の悪いオフィスからサーバを、最新の空調設備・電源設備を備えたデータセンターに移設することで、空調や電源による電力消費を大幅に削減することができます。
データセンターはサーバなどコンピュータ機器を冷却するために、データセンター専用の空調機を設置しています。また、万一の停電時のために無停電電源装置(UPS)を備えています。
例えば、空調機の例(左のグラフ)は空調機の冷却効率であるCOP値の推移を示したものです。COP値(Coefficient Of Performance)は動作係数(どうさけいすう)ともいい、冷房機器などのエネルギー消費効率の目安として使われる係数で空調機の消費電力1kWあたりの冷却・加熱能力を表した値です。
日本の空調機は平均でCOP値が約5となっており、これは世界でもトップクラスの省エネ効率を誇っています。
また右の図は、ハウジングサービスと呼ばれる複数の企業のサーバーを同じデータセンタ内に配置するということにより、従来の各企業に分散している形態よりもCO2の排出量が抑えられることを意味しています。
データセンターをとりまく昨今の市場環境
従来のコンピュータ利用形態では、ユーザー(企業や個人)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを自分で保有・管理していました。しかし、クラウドコンピューティングの時代になると、ユーザーはインターネットを通じてサービスを受け、その利用料金を支払う形に変わります。
具体的には、情報システムを利用する際に、自社管理下の設備に機材を設置し、ソフトウェアを配備・運用する従来のオンプレミスの形態は減少します。その代わりに、企業の情報システムがデータセンターに設置される形態にシフトしていきます。この変化により、企業は自社での設備管理の手間を省き、クラウドサービスの提供者に依存することが増えます。
企業が今後さらに成長するためには、クラウドコンピューティングを積極的に活用する必要があります。クラウドサービスを利用することで、企業は柔軟かつ迅速にリソースを追加したり、削減したりできるため、コスト効率が良くなり、競争力が高まります。
一部の企業では既にクラウドコンピューティングの活用が始まっており、この流れは今後さらに広がっていくと予想されます。クラウドコンピューティングの普及により、企業はより効率的なIT運用が可能となり、事業の拡大や新しいビジネスチャンスの創出にもつながります。
要するに、従来のオンプレミスからクラウドコンピューティングへの移行は、企業にとって避けられないトレンドであり、これをいかに効果的に活用するかが今後の成長の鍵となるでしょう。
クラウド活用にかかわるリスク
反面、クラウドコンピューティングを企業が活用するには、いくつかのリスクが潜んでいます。
以下にガートナー社(世界最大規模のICT(情報通信技術)リサーチ&アドバイザリ企業)がまとめたリスクを示します。
特権ユーザによるアクセス: 従業員の情報をベンダに提供し、特権を持つ管理者や彼らに対するアクセス監視/制御が必要です。
コンプライアンス関連: 通常のベンダであれば、外部の監査や安全性のチェックを受けていますが、クラウド・ベンダの中にはこの種の調査を拒否するものもあり、その場合は重要性の最も低いデータしか任せられません。
データの保管場所: データの保管や処理が明確な法的権限に基づいて行われ、現地のプライバシ保護規制に従っているかを事前にベンダに確認する必要があります。
データの隔離: データがどのような方法で保管され、隔離されているかを把握する必要があります。
データの復旧: ベンダに完璧なリストアの備えや復旧にかかる時間について確認する必要があります。
調査に対する協力姿勢: 契約に調査に協力する条件を盛り込む必要があります。ベンダが積極的な協力を示している場合を除き、調査や証拠開示に対する要求は通らないことが多いです。
長期に渡る事業継続性: データの回収方法やフォーマットが後継アプリケーションに移植可能かどうかを確認する必要があります。
これらの課題は、主にデータのセキュリティ、コンプライアンス、内部統制、事業継続などの観点であり、クラウドコンピューティングを活用する企業にとって重要です。
データセンター関連事業者は、これらの課題に真摯に取り組み、安心して利用できる環境を提供するために努力する必要があります。
日本のデータセンターのメリットと課題
日本国内のデータセンターにおけるメリットと課題は以下のような点にまとめられます。
メリット:
治安と政情の安定性: 日本は治安が世界トップクラスであり、テロや紛争などの脅威にさらされるリスクが少ないため、事業継続の観点で優位にあります。
高信頼・高品質のインフラ: 日本国内の電力・通信インフラは世界でもトップクラスの信頼性と品質を持ち、企業の重要なデータを安心して預けることができます。
技術力とデータセキュリティ: 日本人のおもてなしや真面目な精神を持つ技術力の高い運用管理者が豊富におり、データセキュリティの観点からも信頼性が高い環境です。
課題:
政府・自治体の施策との連動不足: データセンター産業は新しいため、政府や自治体の施策との連動が不十分であり、CO2排出量規制などの施策においてデータセンター事業の特性が考慮されていないことが問題です。
規格・標準化の不足: 海外では環境配慮や事業継続の観点でデータセンター設置に対する規格・標準化が積極的に行われていますが、日本国内ではその内容が適切でない場合があります。したがって、日本国内におけるデータセンターの規格・標準化の活性化が必要です。
人材不足とスキルセットの確立: データセンター運用管理者として必要なスキルセットや賃金体系、就業基準が業界で確立されていないため、優秀な人材が集まりにくい状況があります。
これらの課題を解決するためには、政府や業界が積極的に取り組む必要があると考えられます。
参考文献
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