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リソグラフィとは?

リソグラフィ(Lithography)は、半導体製造プロセスにおける核心的な技術であり、微細構造をウエハー上に転写するための方法です。この技術は、トランジスタの微細化、回路の高密度化、性能の向上に欠かせません。

本記事では、リソグラフィの基礎から最新技術、応用事例、将来の展望までを詳しく解説します。



リソグラフィの種類

リソグラフィは、光や電子ビームを使用して、フォトレジストと呼ばれる感光性材料をウエハー上にパターン化するプロセスです。これにより、半導体チップの回路パターンを正確に形成することができます。

リソグラフィ技術には、さまざまな種類があります。
以下に主要なものを紹介します。

光リソグラフィ

光リソグラフィは、最も一般的なリソグラフィ技術であり、光を利用してパターンを転写します。使用される波長により、さまざまな方式があります。

  • 遠紫外線リソグラフィ(DUV):248 nmおよび193 nmの波長を使用し、90 nmおよび65 nmの技術ノードで広く使用されます。

  • 極端紫外線リソグラフィ(EUV):13.5 nmの波長を使用し、7 nmおよび5 nmの技術ノードで重要な役割を果たします。

リソグラフィで用いられるDeep UV(DUV)およびExtreme UV(EUV)(引用元

電子ビームリソグラフィ(EBL)

電子ビームリソグラフィは、電子ビームを使用してパターンを転写する技術です。高解像度を実現できますが、プロセスが遅く、大量生産には適していません。主に研究開発やプロトタイプ作成に使用されます。

電子線リソグラフィ装置の概略図(引用元

ナノインプリントリソグラフィ(NIL)

ナノインプリントリソグラフィは、物理的にパターンをウエハーに押し付けて転写する技術です。この方法は、コスト効率が高く、細かいパターンを作成するのに適していますが、量産向けのプロセスではまだ限界があります。

ナノインプリントリソグラフィと光リソグラフィの比較(引用元


フォトリソグラフィのプロセス

ここでは最も代表的なフォトリソグラフィのプロセスについて説明します。

  1. コーティング:ウエハー表面にフォトレジストを均一に塗布します。

  2. アライメント:マスクアライナーを使用して、マスク(回路パターンが描かれたプレート)をウエハーと正確に位置合わせします。

  3. 露光:光源(通常は紫外線)を使用して、マスクのパターンをフォトレジストに転写します。

  4. 現像:露光されたフォトレジストを化学薬品で現像し、不要な部分を除去します。

リソグラフィ工程の概観:フォトレジスト塗布、露光、現像(引用元


最新技術とトレンド

リソグラフィ技術は、半導体業界の進化とともに常に進化しています。ここでは、最新の技術とトレンドをいくつか紹介します。

マルチパターン技術

マルチパターン技術は、1回の露光で微細なパターンを作成できない場合に使用される手法です。複数回の露光とエッチングを組み合わせて、より細かいパターンを形成します。これにより、従来のリソグラフィの限界を超えることができます。

一般的には、LELE(Litho-etch Litho-etch)、SADP(Self Aligned Double Patterning)、SAQP(Self Aligned Quadrable Patterning)の3つの技術を総称して、マルチパターニング技術と言います。

LELE(Litho-etch Litho-etch)の概略図(引用元

イマージョンリソグラフィ(液浸露光)

イマージョンリソグラフィは、液体(水)をレンズとウエハーの間に挟むことで、解像度を向上させる技術です。液体の屈折率を利用して、光の波長を短縮し、より微細なパターンを実現します。この技術は、45 nmおよび32 nmの技術ノードで広く使用されました。

液浸露光技術(引用元

光源の進化

リソグラフィ光源も進化しています。最初は水銀ランプが使用されましたが、現在ではエキシマレーザーやEUV光源が主流です。これらの光源は、短波長で高エネルギーの光を提供し、微細化を推進しています。

ASMLのEUVリソグラフィ技術のロードマップ(引用元


リソグラフィの応用事例

リソグラフィ技術は、さまざまな分野で応用されています。以下に主要な応用例を紹介します。

マイクロプロセッサ

マイクロプロセッサは、コンピュータの心臓部であり、その性能向上にはリソグラフィ技術が不可欠です。最新のマイクロプロセッサは、7 nmや5 nmのプロセス技術を使用して製造されており、リソグラフィの微細化技術がその鍵となっています。

メモリーデバイス

NANDフラッシュメモリーやDRAMなどのメモリーデバイスも、リソグラフィ技術の恩恵を受けています。これらのデバイスは、高密度で高性能なストレージソリューションを提供し、スマートフォンやデータセンターで広く使用されています。

CMOSイメージセンサー

CMOSイメージセンサーは、デジタルカメラやスマートフォンのカメラに使用される重要なコンポーネントです。リソグラフィ技術により、画素の微細化と高感度化が進み、より高画質な画像を提供することが可能になっています。

イメージセンサーはこちらの記事で詳しく説明しています。


まとめ

  • リソグラフィ技術は、半導体製造における核心的な技術であり、微細構造をウエハー上に転写する方法です。

  • フォトリソグラフィは、光を使用してパターンを転写する一般的な方法であり、DUVやEUVなどの技術があります。

  • 電子ビームリソグラフィナノインプリントリソグラフィなど、さまざまな種類のリソグラフィ技術があります。

  • 最新技術として、マルチパターン技術イマージョンリソグラフィがあり、光源の進化も進んでいます。

  • マイクロプロセッサメモリーデバイスCMOSイメージセンサーなど、リソグラフィ技術の応用は多岐にわたります。

  • 将来の展望として、さらなる微細化、新材料の導入、次世代リソグラフィ技術の研究が進んでいます。

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参考文献


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