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カラーフィルターとは?

カラーフィルターは、光を特定の色に分離するためのフィルターであり、主にデジタルカメラ、スマートフォン、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)などで使用されます。

カラーフィルターは、光源からの光を選択的に透過させることで、光に色情報を与え、画像や映像の色再現を可能にします。

カラーフィルター(富士フィルムHPより引用)


カラーフィルターの基本構造

カラーフィルターは、薄いガラス基板とカラーレジストで構成されています。ガラス基板上には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーレジストで構成されるパターンが形成されています。

また、各カラーレジストは、隣接し合うカラーレジスト同士の混色を防ぐため、ブラックマトリクス(BM)によって境界が格子状に区切られています。

カラーフィルターの断面構造:RGBパターンとブラックマトリクス(FA ProductsのHPより引用)

カラーフィルターの配列には、主にストライプ配列モザイク配列の2つの型式があります。

ストライプ配列

ストライプ配列は、同色のカラーレジストを縦列に配置してRGBをストライプ状に並べたもので、線や図形、文字など、直線的なモデルの表示に優れています。ストライプ配列は製造コストが安価で、動作時の不具合も少ないため、現在製造されているカラーフィルターのほとんどがこの配列を採用しています。

モザイク配列

モザイク配列は、同色のカラーレジストを斜めに配置したもので、複雑な混色による微細な色表現が可能です。画像の表示に優れており、特に高精細な画像を必要とする用途に適しています。

カラーフィルタの2種類の配列:ストライプとモザイク(FA ProductsのHPより引用)


カラーフィルターのメカニズム

カラーフィルターのメカニズムは、光の三原色(赤、緑、青)を利用して色を再現することに基づいています。

光がカラーフィルターを通過すると、特定の波長の光だけが透過し、他の波長の光は吸収または反射されます。これにより、各ピクセルに特定の色の光が到達し、フォトダイオードで電気信号に変換されます。

例えば、以下の図(左側)は、各カラーフィルタを用いたときに反射してくる光の波長スペクトルを取ったものです。波長=色を意味しており、波長が短い紫側から波長が長くなるにつれて赤色にシフトしていきます。

様々な色の分光反射率曲線(引用元

人間は物体から反射してきた光を目でキャッチして色を識別するので、反射率が高い波長の色が、そのまま物体の色として認識されます。例えば、長波長側の光を多く反射するフィルターを赤色フィルタ(R)として使うということですね。

物体の反射光色のイメージ(ローム社のHPより引用)

カラーフィルターの製造方法

ディスプレイパネル製造を例とすると、カラーフィルターの製造工程は、ガラス基板工程の次に位置しています。カラーフィルター形成後にセルの組み立て、モジュールの組み立てという形で進んでいきます。

ディスプレイパネル製造工程(TOPPAN社のHPより引用)

カラーフィルターの製造方法も多数存在しますが、顔料をベースとしたカラーレジストをガラス上に塗布し、露光や現像を伴うフォトリソグラフィ(フォトリソ)法が現在の主流です。

フォトリソによる製造工程は次の通りです。

フォトリソグラフィ法によるカラーフィルター製造(TOPPAN社HPより引用)


上記の露光工程において発生している化学反応について、さらに詳しく説明します。

全面に塗工したカラーレジストは、「除去したい部分」をマスクし、「残したい部分」だけに紫外線を照射して硬化(不溶化)させます。これは紫外線による光エネルギーが、カラーレジストの重合・架橋反応を誘起することによって実現されます。

紫外線を照射した際に発生する化学反応の模式図(artience社のHPより引用)


これにより、ガラス基板上にブラックマトリックスで区切られたRGBパターンを形成することができます。

このフォトリソグラフィ法以外にも、無機材料を用いた蒸着・スパッタ法もあります。この方法では、無機材料をガラス基板上に蒸着またはスパッタリングし、カラーレジストを形成します。

スパッタリング装置の構造(デクセリアルズ社のHPより引用)


カラーフィルターの応用分野

カラーフィルターは、さまざまな分野で広く利用されています。以下にいくつかの代表的な応用分野を紹介します。

デジタルカメラ

デジタルカメラでは、カラーフィルターを通過した光がフォトダイオードに到達し、画像を電気信号に変換します。これにより、高精細なカラー画像を撮影することが可能です。

スマートフォン

スマートフォンのカメラにもカラーフィルターが搭載されており、鮮やかなカラー写真を撮影するために使用されています。特に、CMOSイメージセンサーと組み合わせることで、高速な撮影と低消費電力を実現しています。

液晶ディスプレイ(LCD)

液晶ディスプレイでは、カラーフィルターがバックライトからの光を透過させ、画面上にカラー画像を表示します。カラーフィルターの品質は、ディスプレイの色再現性に大きな影響を与えます。

有機ELディスプレイ(OLED)

有機ELディスプレイでもカラーフィルターが使用されており、鮮やかな色彩表現を実現しています。OLEDは自発光型ディスプレイであり、カラーフィルターを通じて色を調整することで、高コントラストで広視野角の表示が可能です。

スマホやカメラ内部のイメージセンサーにおいて使われているカラーフィルタ(TOPPAN社のHPより引用)

カラーフィルターの技術革新

カラーフィルターの技術は日々進化しています。以下にいくつかの最新技術を紹介します。

高精細化

カラーフィルターの高精細化が進んでおり、より細かいピクセル単位での色再現が可能になっています。これにより、ディスプレイやカメラの解像度が向上し、より鮮明な画像を提供できます。

広色域化

カラーフィルターの色再現域が広がり、より多くの色を正確に表示できるようになっています。これにより、ディスプレイの色彩表現が豊かになり、よりリアルな映像を楽しむことができます。

低消費電力化

カラーフィルターの材料や構造の改良により、低消費電力で高性能なカラーフィルターが開発されています。これにより、バッテリー駆動のデバイスでも長時間の使用が可能になります。

色域は光の色を平面座標で表す「xy色度図」の上に三角形で示される。各頂点は、その規格(「sRGB」「Adobe RGB」など)で表現できるRGBの限界値を示しており、このカラートライアングルの面積が大きいほど、より多くの色を表現できることを意味する。(artience社のHPより引用)。

まとめ

  • カラーフィルターは、光を特定の色に分離するフィルターであり、デジタルカメラ、スマートフォン、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどで使用されます。

  • カラーフィルターの基本構造は、薄いガラス基板とカラーレジストで構成され、ブラックマトリクスによって境界が区切られています。

  • カラーフィルターの配列には、ストライプ配列モザイク配列の2つの型式があります。

  • カラーフィルターの製造方法には、色素含有レジスト工法無機材料を用いた蒸着・スパッタ工法があります。

  • カラーフィルターは、デジタルカメラ、スマートフォン、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど、さまざまな分野で広く利用されています。

  • カラーフィルターの技術革新により、高精細化広色域化低消費電力化が進んでいます。


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参考文献

https://techtimes.dexerials.jp/elemental-technologies/sputtering-basics/


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