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ヘタレ剣士の覚醒

【誉田哲也「武士道シックスティーン」文春文庫、2010】

高校1年生でありながら、 新免武蔵(決して「宮本」とは呼ばない。なんでやったっけ?)を崇拝し、稽古中に至っても勝ち負けにこだわる、磯山香織。幼少期から日本舞踊に長けていたが、ちょっとしたきっかけで始めたこの武道に日舞の動きを応用して、時に相手を知らず知らず翻弄してしまう、西荻早苗。この2人の剣士が織りなす、青春小説である。

僕も、高3のインターハイ大阪府予選までは剣道部にいた。3年間レギュラーにもなれなかった(なるつもりもなかった、と言うのがふさわしいかも知れない)ヘタレ部員だったので、この小説に描かれているような竹刀の合わせ方や間の取り方など、そんなことを少しでも考えてやっていたら、もうちょっと何かが残る3年間になったはずなのに……と、自分で選んで買った本でありながら、読み進めるに連れてだんだん胸が苦しくなっていった。

しかし、香織の大落ち込み、早苗の助けによる復活、更に、あろうことか早苗が福岡に引っ越して、2人がまさかの別離?!という怒濤の展開に、根性なし剣道少年のくだらん後悔は、もうどうでもよくなった。

本作は、「武士道四部作」の次作「武士道セブンティーン」につないだ形で終わっている。移動中に「シックスティーン」を読み終わった僕は、普段は古本しか買わないくせに、乗換駅で迷わず有隣堂の文庫売場に駆け込んだ。

バナー写真は、2010年の春に映画化されたときのポスターである。当時、成海璃子さん17歳、北乃きいさん19歳。璃子さんを僕が初めて意識して観たのは、テレビ版「1リットルの涙」(フジテレビ系、2005)での主人公・沢尻エリカさんの妹役としてだ。当時から存在感ありありの女優やったで。

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