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X to earnを一通り触って気づいたGameFiとWeb3の理想のズレ

まず前提として、現在私はヘルスケアの会社を経営しており、人類を健康にするようなサービスを提供したいというのがやりたいことです。特に日本においては、皆保険があることにより病気になってから考えればいいやという風潮ができてしまい、積極的にセルフケアする文化はないため、ほとんどのヘルスケアアプリはマスに広がりづらい側面もありましたが、3月中旬にSTEPNと出会い、衝撃を受けました。

その話はヘルスケアアプリをWeb2からWeb3へ進化させたSTEPNの衝撃についてにまとめています。このnoteを書いた日は4/5ですので、STEPNのガバナンストークンGMTのチャートでいうとこの時点です。

BinanceでSTEPN x ASICS NFT Sneakersが配布されたのが4/19ですので、まさにB国誕生前夜に書いており、このパラダイスが永遠に続くと思っていました(この書いた時期が重要なポイントです)。

そこからB国の絶頂から凋落、次々に出てくるMove to Earn銘柄のDEFY、Aglet、Walken、Genopets、Calo Run、RunBlox、MoveZなど一通り触った今、X to earnみたいなGameFiとWeb3の理想のズレを言語化できるようになりました。

Web3も各種プロジェクトも絶賛進化中だと思いますので、X to earnはもうないという話がしたいのではなく、問題をきちんと把握することで前に進んでいこうというのが本稿の趣旨になります。

1.ブロックチェーンやDeFiのようなプロトコル収益が見当たらない

トークンの価格を維持・向上していくためには、①発行枚数を有限にすること②プロトコル収益でトークンをBurnすること、がまずは考えられます。例えばBinanceが発行するBNBが値下がりしにくいのは、取引所の収益でBNBをBurnしているからだと言われています。

ブロックチェーン(Ethereum, Solana, Avalanche etc..)であれば取引の検証と承認に対して利用料(ガス代)を払うのが普通という感覚がありますし、DeFi(Uniswap, Compound etc..)であれば金融サービスを享受する代わりに手数料を払うのが普通という感覚があると思います。

その点、X to earnは「原資回収」が合言葉になってしまっており、パズドラやモンストのように課金しに参加者が来ているわけではない、というのが大きいと思います。つまり、健康習慣が身についたから数十万円使ってもいいいや、とは思ってもらえません。

これはマーケティングの問題もあるかなと思っており、「歩いて稼げる」というキャッチーな言葉で参加者を最初集めてしまったため、最初にNFTを買った額以上にどう回収するか、というのが一番の興味事項になってしまっています。

STEPNでも5月中旬に一瞬、パンダスキンが革命を起こす、と話題になったことがありました。つまり、自分の靴NFTにデザインを施せるようになれば、儲かる儲からないとは別に課金してくれるのでは(Fortniteのskinみたいに)という話でした。

現時点ではまだパンダスキンは実装されていないので、その効果は断言できないのですが、パンダスキンはみんなが集まる場がありその中での承認欲求目的ですので、現在のようにアクティブユーザーが減ってしまうとなかなか検証しづらいかもしれません。

2.トークノミクスの問題ではなく実需がないことが問題

Web3界隈だとトークノミクスが重要だといつも言われますが、どこでトークンを付与してどこでBurnするなどの循環図を作ったところで、1.と関連しているのですが参加者全員が「原資回収」を第一においてしまうと、結局は原資回収できそうでも、できなさそうでもそのプロジェクトから資金を抜いてしまうので、経済圏が保てません。

ブロックチェーンを利用する時は、参加者は必要だから使っていますし、DeFiを利用するときは、参加者は例えばトークンをスワップしたいから使っています。つまり実需があるから、そのプロジェクトにお金を落としてくれるのですね。

その点、ヘルスケアアプリはWeb2のアプリを見ればわかりますが、無料で使えるし課金する気はないというのが現実です。「課金アプリとしてのヘルスケアアプリ」には実需はありません。

この問題をクリアするには、ソシャゲレベルで開発費を投じてめちゃくちゃ面白いゲームに仕立てないといけない(かつ1.の通り稼げますでユーザーを呼び込まない)のですが、その成功事例はポケモンGOやドラクエウォークくらいしかなく、難易度Sでしょう。

※NFTの購入が実需であり、NFTの売買手数料がプロトコル収益だという考えもあるかもしれませんが、NFTを購入する理由はそれ以上に儲けるためであり、売買は儲けたい新規ユーザー/再投資ユーザーがいて初めて成り立ちますので、儲からないと思われたら成立しないと考えています

3.初期ユーザーに報いるためのトークンインセンティブが裏目に出ている

これまでの発信者とファン、運営会社と消費者の関係では初期から支えてくれた方へのお返しがあまりできておらず、その点トークンインセンティブを用いることで初期ユーザーに経済的メリットを与えることができる、というのがWeb3が実現したい1つの理想だと思います。

ただそれがいきすぎてしまったのか、プロジェクトへの共感や愛よりも、先に入ったら儲かるんでしょ?というハイプが起きてしまっているのは否定できないと思います。そして時間が進行すると、初期に入れなかったからもう遅いしやめておこう、とユーザーが後から入ってこないという現象も起きています。

初期参入、継続参入の両方で歪みが起きてしまってるんですね。a16zのCrypto Startup School、Jesse Walden: Fundraising and Deal Structureにあります通り、運営会社側はFinancial Capital(資金)をProduction Capital(プロダクトの価値)に変えていきますので、

最初に入った方は経済的メリット多めだが、後から入った方はプロダクトが磨かれているので仕上がったプロダクトを使えるメリットがある、というのが運営の言い分なのですが、

これまでの話のように、原資回収=Financial Capitalが参加者の第一にきてしまっていますので、プロダクトとしての質よりも現在のプロジェクトの経済圏(NFT数、NFT Floor Price、トークン価格、既存ユーザー数、新規ユーザー見込み数等)の方が重要視されてしまいます。

このなんというか、組織を作って、資金を投下して、プロダクトを磨いても経済圏が落ちていたら評価されない、積み上がる感じを持てないというのは今までになかった感覚です。

4.パラメータのインフレ、マルチチェーン化は根本的な解決策ではない

トークノミクスの話に戻ってしまいますが、ステーブルコインに利確してプロジェクトの外にお金を持ち出されてしまうと経済圏は弱ってしまいますので、いかにプロジェクト内でトークンを使用してもらう仕掛けが作るかは大切です。

そうなると、ドラゴンボールやワンピースよろしく、NFTのパラメータをインフレさせてもっと課金したらもっと強くなれる(稼げる)、新しくできたチェーン(STEPNではレルムと呼ばれます)ができたらもっと稼げる、という次を見せていく必要があります。

ただこれはやればやるほど、より弱いパラメータのNFT、前からあったレルムの価値が落ちてしまいますし、誰の方を向いて運営しているんだというヘイトが溜まりやすいです。

5.CEX/DEXでゲーム内トークンが売買できるとゲームバランスが取りにくい

プロジェクト内でだいたいいくらで最初のNFTを買ってもらい、レベル上げにはこのくらいのトークンを使い、このくらい稼げて、回収期間は何日、というユースケースを設けたとしても、

STEPNでいうところのGST、RunBloxでいうところのRUXがCEX/DEXで自由に売買できる状態ですと、ゲーム内で使用するためにトークンを買ったり稼いだ分を利確で売ったりする以外に、トレーダーがトークンを売り買いしているので価格が動いてしまい、ゲームバランスがとりづらいです。

これをクリアするために、ゲーム内トークンはステーブルコインっぽくしよう、という案も聞いたことがありますが、実例を見ていないのでなんとも言えません。

※STEPNのDynamic Minting Costsも一つの解でしたが、GSTが一番下のIf GST < $4, x = 0%に張り付いてしまったので、最終的には機能しませんでした

6.トークンの流動性が高すぎて長期的な取り組みができない

Web3のトークンは軽さというか、自由さが魅力ではあるのですが、参加者がトークンのチャートを常時見ながらプロジェクトに参加するので、ちょっとトークンが下がっただけで狼狽売りを誘い、プロジェクトへの批判がSNSに出てしまいます。

運営側としても長期的で本質的な取り組みがしづらく、取り急ぎトークンの価格が上がりそうなことをせざるを得ないという葛藤がありそうです。

未上場スタートアップが、ビジネスモデルも組織も仕上がるまで、VCやエンジェルなどごく一部の身内だけに株を持ってもらい、長期目線で支えてもらうという仕組みは、むしろ合理性があるような気さえしてしまいます。

7.Web3の理想である自律分散型の実現がGameFiではより難しい

Web3に惹かれる理由の1つは、これまでのような中央集権型ではなく自律分散的であることだと思います。

Web3の思想は「Own」だと思いますが、例えばSTEPNやRunBloxの参加者の中で、Ownしているという感覚を持っている方はどのくらいいるのでしょうか? だいたいの会話は「運営が〇〇」であり、運営のムーブに合わせてどう儲けるかを考えている、というのが実態でしょう。

これがビットコインやブロックチェーン、DeFiであればまた違います。マイナーや流動性提供者はOwnしている感覚が持てるでしょうし、自律分散的なプロジェクトです。

GameFiは最初は中央集権的にいくが、プロダクトが整ってきたらガバナンストークンでの投票で機能追加を決めるなど徐々に自律分散にしていく、ということを掲げる場合が多いですが、プロダクトが整う前に原資回収して抜けている方が多いので、現実問題としてはどうしても運営<=>儲けたい参加者となりがちです。

※マイナーや流動性供給者は経済的メリットで参加していますので、その点X to earnと同じなのですが、なぜブロックチェーンやDeFiの方は持続的なのでしょうか? それはブロックチェーンの上で何かしたい、トークンをスワップしたいなどの実需に対して貢献しているからだと思っています

解決策:現実世界で実需があるものと組み合わせるのはどうか?

さて、7つほど今自分が感じている、GameFiとWeb3の理想のズレについて書いてきました。

これらを解決する1つの方法として、現実世界ですでに実需があるものから外貨を獲得してプロトコル収益に入れる、というのはどうかなと思っています。

僕らは今Sleepプロテインというプロテインを販売し始めているのですが、このプロテインをマイプロテインくらいの規模にして、グローバルに販売できる体制ができたとしましょう。

そうなると、弊社のプロジェクトへの貢献度合いに応じてプロテインを安く買えたり、またはその方をフィーチャーしたパッケージのプロテインを出すなどして承認欲求を誘ったりする仕掛けを作ったとします。

そうなると、どうせプロテイン他で買うなら弊社の経済圏の中で買った方がいいし、運営はプロテインの粗利でトークンのBurnができるのでトークン価格も維持される、となる可能性があるのではと思っています。

プロテインなので突拍子のある話に思えますが、扱っている商品がWeb3なだけでWeb2の会社、という形は一つの解だと思っています。例えばOpenseaはマーケットプレイスで扱っているものがNFTなだけで、プロダクトはWeb2です。そういう意味では、物販というWeb2の会社の集客施策としてトークンエコノミーというWeb3を用いている、いう場合も反対の場合もあるのかな、と。

これはあくまでこれまでWeb3(主にX to earn)を研究してきて、もっといいヘルスケアサービスってないかな?と思考してきた中で生まれた仮説であって、まだ確信を持てていません。

ただ、Web3みたいな技術・思想的な革命を面白いと思わない、キャッチアップしようとしなくなったらスタートアップとして終わりだと思ってますので、今後も勉強しつつ試行錯誤していきます。

自分の認識違いなどもあるかもしれないので、読んでいただいて気づいたことなどありましたら@ToshiMiyachiまでご連絡ください^^

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