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薩摩会議 特別番外編 ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう 第一部:観光 天空の森 田島健夫氏(前編)

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薩摩会議特別番外編として開催した「ドルフィンポート跡地にはハコモノではなく街を作ろう」というシンポジウム。第1部は天空の森 オーナーの田島健夫さんと、SELF監事坂口修一郎との対談です。

私たちは体育館の建て替えを反対しているわけではない

坂口:僕たちも体育館自体の建て替えに反対しているわけではありませし、むしろ立て替えたほうが良いと思っています。老朽化もしていますし。ただ、立てる場所が本当にドルフィンポート跡地でいいのかな?という思いがあります。

というのも、ドルフィンポート跡地は、鹿児島市内では唯一残された桜島に面してひらけた場所だと思いますし、北埠頭 南埠頭があって、離島や桜島にいく玄関口でもあり観光客が集中する場所だと思うんです。そこが本当に体育館という内向きに人が集まる場所になっていいのかと思うのです。

スポーツセンターが必要か必要でないか。それ以前の問題

田島:今日もここ(会場)に車で来る時に、国道10号沿いを走りながら「イルカはいるかな?」と思いながら見ていました。残念ながら見えなかったんですが、今お客様って列車に乗っていらっしゃる方が非常に多いです。日豊本線とイルカと桜島。60万の県民がこんなに近くに住んでいる。そういう目で見た時に、計り知れないこれから先の何かを教えているような気がするんです。

鹿児島県はこれからどうやって食べていくの?生活していくの?ということを考えて、その上で体育館が必要だよねとか、これが必要だよねと考えていかなければならない。視座や視点を変えていく必要があると思います。今回の計画は木を見て森を見ずということになりそうな気がします。

今後次の世代に譲っていく上で「観光」というのは本当に基幹産業なんです。私たちの一次産業、農業にしろ漁業にしろ、ジリ貧というか。従事する人はどんどん減っていく。そんな中で私たちは次の世界をどう生きていかなければならないかということを中心に考えた時、観光しかないと思います。本当にこれしかないんです。

では、鹿児島は観光地にふさわしい素材を持っているの?
日本列島の中でこれから世界に通用する観光地ってどこにあるの?

鹿児島のみなさんは自分の足元は見えにくいかもしれませんが、九州、鹿児島は1番に上がってくるという「素材」は持っています。

よく鹿児島の人は「鹿児島は”資源”がある」と言いますが、マーケット、それを必要としている人がいなければそれは「資源」とは言わないんです。「素材」です。

その素材をどうしていくかという上でこのドルフィンポート跡地を考えた時に、この周辺には世界遺産や南洲墓地など日本の歴史を変えていった素材があって、たくさんの観光客はそういう文化的な知的好奇心にくすぐられているんです。そういう視点で見た時にこのドルフィンポート跡地のあり方を考える時体育館に限ってものを考えるというのは、私たちも考えなければならない。

今申し上げたように、未来の鹿児島の産業、経済、そして夢を与えるという部分から考えたら視点を考えて考えなければならないですよね。

「鹿児島港本工区エリア街づくりグランドデザイン」

坂口:ドルフィンポート跡地にどういうものを作るのかという議論はこれまでもずっとなされてきているんですよね。

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ここに書かれているのは、田島さんが今おっしゃったことがそのまま書いてあるんです。

田島:これは、お経みたいなものですか?題目のようにいろんな耳障りのいいことが書いてありますが、じゃぁ具体的にどうするの?なぜそうなの?というところをついていかないと、耳障りのいい言葉だけで通り過ぎてします。

突っ込んだ話ですけど、観光客は今どこにいっているの?インバウンド、富裕層と言われていますけど、テレビを見ていると「インバウンドの門戸が開かれました」とニュースで出る時に最初に出てくるのは浅草とか京都とか。人力車を引っ張っているような、ああいう日本古来の古い伝統的なJAPAN対してのそれが映像に必ず出てくるんです。世界の観光地を見てみても、観光地は「旧市街」なんです。本当に鹿児島らしい。そういう市街に対してたくさんの人たちがそこに集まってくるんです。パリもそうですよね、ミラノもそうです。ベニスもそう。そういう視点から鹿児島をもう一度みてみる必要がある。そういうことを前提とした時に、何が必要か、どうあるべきかを考える。そこからのスタートにしないと、体育館が古くなったからとか、鹿児島の真ん中だからというそういう県民の視点だけで、県民のためのまちづくりもいいかもしれないけど、未来に残すべきかというその視点も外してほしくないですよね。

世界へのゲートウェイ

鹿児島空港にプライベートジェット用のCIQ施設を備えたビルができたのをご存じですか? 

CIQ=税関(Customs)、出入国管理(Immigration)、検疫所(Quarantine)の略で、貿易上必要な手続き・施設のこと

今ね、そういう未来への扉が開かれている。鹿児島空港を中心として4時間圏内に何億人という人がいてそこには超富裕層も住んでいる。その人たちを迎え入れましょうよと、そのために日本国は動いています。それに対して私たちが今話さなければならない視座・視点はどうなんでしょうね。

坂口:確かに鹿児島からだと直線距離だと東京より上海の方が近いですよね。

田島:上海あたりには超富裕層が住んでいらっしゃるわけです。今、検討しようとしているのは国内の1億2千万人。どんどん人間は減っていくそのマーケットのお客様をお呼びするのも一つ。でも、上海だの、台湾だの、韓国だのそういうところには大変な富裕層の方がおいでであって、そういう方たちは鹿児島の天然資源に対して非常に興味がある。そういう状況が周りにきているんです。そういうことをお伝えした上で、あとはみなさんの選択でしょう。

坂口:田島さんがおっしゃることに反論の余地はないですよね。先ほどおっしゃったように、活火山が目の前にあり、静かな海にイルカが泳ぐ景色なんてなかなか世界的にも珍しいものですよね。その場所に今建てられようとしているコンベンションセンターですが、県が出したグランドデザインにはサンフランシスコやシドニー、横浜の赤煉瓦倉庫などのリサーチはなされています。それをもとに練られたグランドデザインに基づいて公募が行われる予定だったんですが今その公募は「延期」されていることになっています。

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公募は延期のまま、スポーツコンベンションセンターは建てられようとしている。

WHOの発表によると、2008年以降人類の半分以上が都市部に住んでいると言われていて、これだけ地球全体で人口過密が進んでいると感染症の爆発が起こるとその時点で予測されていたわけです。その後も全世界都市化が進んでいて、おそらくまた違う形のパンデミックは起こるわけです。そういう時に8000人収容の大型施設がどのくらい機能するかということですよね。

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田島:パンデミックが起こった後には必ず時代が変わってるんです。ペストの後には産業革命が起こっている。社会の考え方がガラッと変わります。今も考え方は確実に変わってきていますよね。友人である建築家やデザイナーといった世界を観ている方たちの目から見たら鹿児島という素材は素晴らしいところなんです。一般的な鹿児島県民の視点だけで考える時代はもう終わりました。僕たちが昔東京に行くときは列車で22時間かかっていましたが、今22時間かけたら地球の裏側までいけるんです。

地球規模で非常に時間が近くなっているのに視点がまだ(狭い)。今後鹿児島を訪れるお客様は東京大阪からよりも海外からの可能性が非常に大きい

鹿児島には生かすべき素材がたくさんあるんです。鹿児島は食糧供給基地であることは間違い無いんですけれども、食べ物を「食糧」として見たら東京マーケット、大阪マーケットで太刀打ちできる状況ではないんです。では鹿児島の農林水産業はダメなのかといったら全くそういうことではないんです。嗜好品としてお酒の肴としたり、フォークでちょっとつまんで食べるというような商品に仕立てていくことで、鹿児島の一次産業を世界に対してブランディングしていくことは確実にできるんです。僕が言いたいのは視点を変えてほしい、視座を変えてほしいということです。

ドルフィンポートのコンベンションの話。それを作るのがいいか悪いかという話ではなくて、それをやることで、今申し上げたようなことが寄与しますか?という話です。

坂口:そうですね。おそらく体育館の話も食の話もそうですが、大量生産大量消費のモデルですよね。観光も何万人も連れてきて、安いものをたくさん食べてもらうのではなくて、これから地球規模で人口が減っていく時にはクオリティをあげて単価をあげていくしかない。

田島:そうです。ドルフィンポートは、そういうものに付加価値を付けれられる。付加価値を付けるための一つの場所であるということ。鹿児島の観光経済を考える時にそれを間違えないでほしい。徹底的に議論していただきたいと思います。

(後編はこちら)


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