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ストックホルム滞在記 #003 長い時間軸で街をデザインする

欧州は記録的な猛暑。地域によっては日中の気温が40度を超える場所も出ており、熱中症による死者や、山火事のニュースなども聞かれます。

そんな中、ストックホルムはというと、ジリジリと肌が焦げそうなくらい暑かったのは6月下旬の夏至祭(ミッドサマー)前後の2〜3日だけで、その後は「もう冬?((※鹿児島県民にとっては))」と言いたくなるような肌寒い日が続いています。

今回はストックホルムの街のあり方について感じたことをまとめます。

水の都ストックホルムは、緑の都でも

街中に大きな木や芝生の公園が

ストックホルムにはとにかく公園がたくさん。
どの公園も芝生や大きな木が美しく、ストックホルム中心街でも公園で日光浴をする人や、犬を散歩させている人などをたくさん見かけます。

市内のあちこちに公園が

市街地でも住宅地でも感じるのは道沿いに植えてある木の立派さ。
どれもビルの3階〜4階に届くほどの大きさで、朝方は街中で美しい鳥のさえずりが聞こえます。
一朝一夕には実現できない豊かな環境。都市にいながらも森の中に住んでいるような気分を味わえます。人口減少が進み、空き家問題が深刻化している日本の地方などは、残す価値のある建物以外はいっそ中途半端な”活用”に予算をかけず50年後100年後を見越して木を植えていったほうがよほど街の価値が上がるのでは?と思えてきます。

住宅街。建物と建物の間にはどこも大きな木と綺麗に整えられた芝生が
夕方になると外に出て家族や友人と食事をする姿もよく見かけます

死生観

この街中に緑が溢れているという暮らしは、スウェーデン人の死生観にも通じるものがあるようです。
世界遺産にも登録されているスウェーデンの墓地スコーグスシュルコゴーデン。約100ヘクタールの敷地は美しい芝生とさまざまな木が生い茂っており、「死後は森に還る」という大きな命の循環をじっくりと心に落とし込むことができる場所でもあります。

ちなみに、このスコーグスシュルコゴーデンはもともと松の木が生い茂った古い砂利の採石場で、1914年から1915年にかけて行われた新しい墓地の設計コンペ「ストックホルム南墓地国際コンペティション」の結果として生まれたものだとのこと。100年前の意思決定が現代に豊かさを残してくれているよい例だと思います。

世界遺産にも登録されているスウェーデンの墓地スコーグスシュルコゴーデン
スコーグスシュルコゴーデン
スコーグスシュルコゴーデン

公共施設の活用

スコーグスシュルコゴーデンと同じくらいの時代(1909-1923年)に手掛けられたストックホルム市庁舎。
もっとも有名なのは、ノーベル賞授賞式の晩餐会が行われるこの「ブルーホール」というホール。
晩餐会の会場としてだけでなく、一般企業のイベントや大学の卒業式など、年間200~300ものイベントで活用されているとのこと。

「この建物が作られたのは1923年なので、建物としては比較的新しい部類に入りますが、、、」という説明に、よい建物を長く使うヨーロッパのよい文化を感じました。
設計当初は、水の都ストックホルムの象徴として、一面ブルーに塗られる予定だったため「ブルーホール」建築が進みレンガの美しさを残そうと、ブルーには塗らない判断をしたあとも名前はそのままなのだそう。
今もここは市庁舎、そして市議会議場として使われているのですが、ツアーガイドを申し込むと一般の私たちでも中に入ることができます。

また、毎週土曜日には、75組ものカップルがここで結婚式を挙げるのだとか。この日もたまたま土曜日で敷地のあちこちにウェディングドレス姿の女性を見ることが出来ました。
公共施設を、こんなにも多角的に、そして何十年・何百年と活用することは、シビックプライドの醸成、そして後世によい街を残そうという当事者意識の醸成にもつながるのではないかと思います。

今何を決めて、どう動き、どんな未来を創るのか

自然豊かで美しい街ストックホルムも、歴史を遡れば酸性雨による水質汚染に悩まされた時期があったりと、必ずしも「昔からずっと変わらず環境がよかった」というわけではなさそうです。
しかし、その時々で未来を見据え、自然と人類のために今何をすべきかという視点でダイナミックに意思決定をし、掲げられた目標に向かって着実に変化を起こしてきたからこそ今の豊かな暮らしがあるのだと思います。
縦割りによる部分最適や、四半期や単年度といった短期の計画ではなく、街全体を50年、100年、あるいはもっと長い時間軸でとらえてデザインする。

日本がこの国に学ぶべきことはまだまだたくさんありそうです。


ストックホルムHP



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