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【かごしま地域企業名鑑】#003 ひおき地域エネルギー

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(インタビュー・文 小平勘太)

※本記事は期間限定で無料公開されます。

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本日は、日置市や地元金融機関、地域の企業14社が出資して2015年に設立された「ひおき地域エネルギー株式会社」の中の人“中尾 雄(なかお ゆう)“さんに会社のことを語っていただきます。日置市でエネルギーの地産地消と再生エネルギーの普及のため、発電・送電・売電まで行うひおき地域エネルギー株式会社の描く未来はどのようなものなのでしょうか?

【中尾さんヒストリー】 アフリカとの出会い

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中尾さんは37才。日置市伊集院町出身です。中尾さんのライフワークの一つ目は「アフリカ」。小学校三年生の頃に難民キャンプのビデオを見てショックを受けアフリカの貧困問題の解決のために何かできないかと思ったのが始まり。慶應義塾大学でサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南)の地域研究、特に南部アフリカ政治を専攻していました。中尾さん曰く、アフリカの政治は「目上の人にノーと言えない」、「地縁血縁が重視される」といった特徴があり、昔ながらの日本の政治に似ているそう。ただ日本と違ってメディアも規制されているので独裁を止める仕組みがなく、中尾さんも在学中にケニアやタンザニアを旅行したり、アフリカ政治を勉強していく中で無力感に苛まれることもあったそうです。

【中尾さんヒストリー】ホテルオークラ・在ジンバブエ大使館勤務

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また、中尾さんのライフワーク2つ目は「飲食サービス業」です。学生時代にイタリアレストランでアルバイトをしていて、調理師免許も取ったそう。卒業時にアフリカ繋がりでJICAも受けたりしたそうですが、最終的には日本一のサービス業の会社で働いてみたいとホテルオークラに就職します。オークラでは一番キツいと言われる早朝から深夜まで営業するダイニングカフェでの勤務やベルボーイ、裏方の営業などを歴任しますが「やっぱりアフリカに関わる仕事をしたい」という思いが日々募ります。

心機一転、ホテルオークラを辞め慶應大学の大学院(法学研究科政治学専攻の公共政策専修コース)に入学しました。また大学院の一年目が終わった後に、在ジンバブエ日本大使館の草の根委嘱員の募集に申し込み、ジンバブエで仕事をします。ジンバブエの人は礼儀正しく、勤勉で恥ずかしがり。一緒に働くのはすごく楽しくて、大学院卒業後は専門調査員という職で在ジンバブエ日本大使館に2年間勤務しました。妻の出産もあり地元に戻ったのですが、次のボツワナでの勤務まで時間があり、地元の伊集院でバイトを探します。それがひおき地域エネルギーとの出会いでした。

ボツワナの日本大使館に勤務し、任期も終わりに近づいた頃、突然、ひおき地域エネルギー社長の小平竜平がやってきて、「ひおき地域エネルギーに戻ってほしい」というスカウトを受けました。ボツワナ後はJICAや外務省の仕事をできないかと思っていた中尾さんですが地元日置市にも貢献したいという思いがありました。中尾さんのライフワークに「地域エネルギー」が加わり、帰国を決めた瞬間でした。

ひおき地域エネルギーの作りたい世界

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中尾さんが入社した、ひおき地域エネルギーは日置市と地域の企業が作った会社です。会社の目的はエネルギー地産地消の達成と再生可能エネルギーを可能な限り割合を増やすこと。また、地域にとって必要があれば、事業の採算性が低くてもやっていきます。例えば公共施設の蓄電池や太陽光を入れると、ひおき地域エネルギーの電力小売事業の利益が下がってしまいますが、災害時の住民のセーフティネットを作るという意味で取り組んでいきたいそうです。

ひおき地域エネルギーはエネルギーの地産地消の実現のため、電気の小売りだけではなく、発電・送電・小売りまで全部行える地域電力会社にならないといけないと考えています。そこで2018年、再生可能エネルギーでも環境負荷の低い小水力発電事業に参入、永吉川水力発電所を建設しました。また、分散型エネルギー導入のためのコンパクトグリッド事業も既存送電施設を使った取り組みとしては国内ではほとんど例がない事例として実現しました。これは日置市役所周辺で複数の施設と再生可能エネルギー発電設備、蓄電池(実証実験で導入中)を一つにまとめ、その中で電気を融通する仕組みです。これらの取り組みは日本の最先端事例として環境庁の「令和2年度版 再生可能エネルギー事業支援ガイドブック」(PDFへのリンク) に掲載され、同ハンドブック内の全15事例のうち、3事例がひおき地域エネルギー社の事業でした。

地域エネルギーとアフリカ豚骨ラーメン事業

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中尾さんがひおき地域エネルギーとして今後、広めていきたいのは、分散型エネルギーモデル。前述のコンパクトグリッドを大規模施設中心にいくつも作って再生エネルギー比率を上げたり、地産地消につなげていきたいと持っています。また施設の屋根を借りて発電、需要者に再生可能エネルギーを直接購入してもらうオンサイトPPA (Power Purchase Agreement)スキームの導入も進めたいそう。技術や制度など目まぐるしく変わるので、日置市と地域の人の生活にとって最もいい選択をしていきたいそうです。

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また、中尾さんは副業で豚骨ラーメン屋をアフリカに開業予定。アフリカの人々の口に一番合ったのは豚骨ラーメンだったそうで、その副業を許可してもらうことが、ひおき地域エネルギーに入社する条件でした。休暇を取り自分でラーメン修行を行い、製麺機も購入済み。コロナが落ち着き次第、アフリカに渡り現地パートナーにラーメンの作り方を教えに行くそうです。

「アフリカ」「飲食サービス業」「地域エネルギー」とに3つのライフワークを同時に実現する中尾さんの欲張りな挑戦は、ひおき地域エネルギーの挑戦と共に続きます。

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