ナイアガラの月の光
2023年12月30日は大瀧詠一さんが亡くなって10年になる日だ。
大瀧詠一(以降は敬称は省略する)がこの世から旅立っても世間ではCM曲に「君は天然色」が相変わらず使用されていたり、また事あるごとに「大瀧詠一特集」が雑誌媒体で組まれて彼の影響力はこれからもとどまる事を知らないのではないか?と感じるこの頃だ。
世間一般に知られる大瀧詠一のイメージは「A LONG VACATION」に代表されるキャッチーなメロディーラインを奏でるヒットメーカーという側面が強い。これはこれひとつの真実かもしれないが、実は彼を表す上で正確ではない。
では彼の本質はどこにあるのか?と問われればパロディ(洒落)好きな少し哀愁を帯びたノベルティソングが大瀧詠一の本質なのだと思う。
生前、細野晴臣からアルバム「大瀧詠一」について(どちらにも振り切っていないという意味で)中途半端、と言われた大瀧は同じナイアガラレーペルの山下達郎が生粋のメロディーメーカーということもあり、リズム重視で生きていく事を決意。そのリズムに彼の人間形成として欠かせないアメリカンポップスやトニー谷を代表する喜劇要素をギミックとして散りばめて彼の音楽は出来ているのだ。
そこには彼の青春時代に培った原風景が確かに存在しその青春のドアをふいにノックすれば気の合う仲間と卓を囲みながらそれでもこんな時あの娘がいてくれたらなぁ、とナイアガラの月を眺めながらセンチメンタルに浸るのだ。