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2021年は、ポジティブ用心で。

いずれ新型コロナウイルスを主題にした絵本が作られるとしたら、出だしは次のようになるかも知れない。「その年、ぼくたちは、小さな布で顔をおおって、小さなデビルから隠れていた」。この1年間、私たちは感染のリスクを恐れながら、日々を過ごしてきた。「世の中に気がかりや不安が多い」と回答した人は、この夏、77・7%に達した (博報堂生活総研調べ。首都圏・阪神圏20歳〜69歳の男女・2059人・6月〜7月調査)。同調査の2年前の結果57・7%から、20ポイントの上昇。東日本大震災翌年の72・0% (2012年)を超えた。8月以降、自殺者の数は前年より大幅に増加し、とくに女性が増えた。今年前半の緊迫感があった頃、自殺者数は前年を下回っていた。戦時など、社会に緊張が走る時、自殺者数は減る。だが、世の中の雰囲気が緩み始め、失業など経済的な厳しさが現実になったことが自殺者数に影響を与えた。1997年の金融危機の翌年、自殺者数が一気に3万人の大台に乗ったことが思い出される。
 全体として日常を取り戻してきた中で、人々のリスク意識にも濃淡が見える(図参照)。感染リスクに無頓着な「不用心」層が増加。各地の感染拡大の一因になっている。一方、第3、第4の波を恐れる「用心」層は二分された。極度に外出を減らす高齢者などは「ネガティブ用心」層。リスクをゼロにしようと、通常の生活をすべて諦める。健康なのに家に閉じこもることで、「フレイル(虚弱)」など別のリスクを生んでしまう。若い女性でも「どうせマスクだし (お化粧はしない)」「どうせテレワークだし(おしゃれはしない)」と感染予防を口実に生活態度が消極的になった人もいる。それに対して「ポジティブ用心」層は、縮み込まずに感染予防に努める。コロナ禍が長く続くことを前提に平常心で対処する。オゾンガス、光触媒、紫外線、渋柿からの抽出物などウイルスの感染力を減らす技術が進む。二酸化炭素濃度を簡便に測る器具、マスク、フェイスシールドなども、新製品が増えた。2021年は、ワクチンの普及を待ちながら、「ポジティブ用心」が求められる年になるだろう(発想コンサルタント)

2020年12月4日日経産業新聞 関沢コラムより

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