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物語としての国家―政府観光局ウェブサイトの分析

(2024年の訪日外客数は3500万人近くになると予測されています。国としての観光マーケティングについての原稿を共有したいと思います。初出は『コミュニケーション科学』31号・2010年。現在の各国のウェブサイトをご覧になり、時代の変化と変わらない問題点を考えてみてください)

はじめに
1.物語としての観光
2.物語としての国家
3.政府観光局の戦略
 
 
はじめに
 
 観光は,物語が交錯する場である。日常生活を逃れ,多様な物語を求めて,旅行者は旅に出る。2008年には,世界中で9億2400万人の人々が国境を越えて旅をした(UNWTO,2009)。今後も,一時的な落ち込みはあるだろうが,中長期的には,発展途上国も含めて外国旅行は一層盛んになっていくと考えられる。各国は,外国人観光客を増やすための施策を積極的に行うようになった。
 インターネット利用者が世界中で増加するのに従って,政府観光局あるいはそれに準ずる機関のウェブサイトは,多様な観光情報を流している。従来もパンフレットなどの広報資料を作っていたが,海外のメディアを購入してまで広告を出稿することは稀であった。
 インターネットを使えば,国境を容易に越えることができる。「インターネットは,グローバル化における究極のものである・・・一方,国家は国境線というものに依存している」(Talalay,2000:Series editor’s preface)と,両者は対比されることが多いが,旅行者に国境線を越えて来てもらうために,国境線に関わりのないメディアが重視されることになったのである。
 本稿は,政府観光局とそれに準ずる機関のウェブサイトを分析し,外国からの旅行者に対し,その国のありようが,どのような「政府公認の物語」として描かれているかを見ていくことを目的としている。

1.物語としての観光
 


物語理論という視点を持ち出すまでもなく,日常感覚として,旅は物語を生み出すものであると理解されている。JTBの旅の通信販売が「旅物語」と称されていることは,その良い例である(JTB,2009)。
物語とは,「時間軸にそった出来事の選択的構造化」(浅野,2001:62)と定義される。その際には,「価値ある終点を明確にする」(Gergen,1994=2004:253)ことが求められる。
旅行においては,旅行先に到着する,行きたい観光地を周遊する,安全に帰国するという過程の中で,「価値ある終点」を設定しやすい。
「旅行中に見聞したことを帰ってから語り聞かせる話」(日本大辞典刊行会,1975:1376)は「土産話」という。2008年に限っても,海外を訪問した人々の9億を超える旅の物語が,世界中で語られたはずだ。
「・・・いくつかの出来事が一定の基準にしたがって選びだされ(逆に,他の出来事は捨てられ),相互に関連づけられる」(浅野,2001:62)という物語の生成過程は,まさに「土産話」の成り立ちを示すものでもある。
 JTB発行の『旅』に掲載された読者旅行文のコラム(1964年〜1997年)を分析した滝波(2005:27)は,旅行者が読書旅行文という物語を構成する場合に活用するものとして,「人(他者)との出会い」「場所(他所)との遭遇」「問題(自己)との直面」という3つの要素をあげている。
 「人(他者)との出会い」については,地元の人や他の旅行者との深い交流,観光サービス関係者との会話や交流,一方向的に地元の人々の会話を記載した場合などがあげられる。後にあげたものほど,「出会い」としての重要度は低下する(滝波,2005:28)。
 ちなみに,海外旅行において,現地で話されている言語が理解できない場合は,地元の人々の態度や物腰についての印象に止まるだろう。ただし,「風景としての人々」との出会いであっても,その旅行者に深い思いを与えることは十分に考えられる。
 「場所(他所)との遭遇」については,「現実の直視(旅行先の社会・経済的状況を現実として受け取る)」,「幻想的記述(旅行先で書き手がつかの間の幻想に浸る)」,「周囲の描写(旅行先の風景を描写的に叙述する)」,「観察や理解(旅行先の文化や生活を観察・理解する)」,「対比的評価(旅行先を日常・都市・過去などと対比させる)」という5つの類型が見られるという(滝波,2005:28-29)。
 5つの類型は,旅に出かけた動機によって生じてくるし,旅行者の年齢・職業・観察力・感受性・知的能力・性格などによっても決定づけられる。とくに旅行者の観察力・感受性・知的能力によって旅の印象は大きく変わる。
 旅行会社のパンフレット,旅行ガイドブック,当該国の政府観光局などのウェブサイトがあらかじめ描く「物語」のありようによっても影響を受けるだろう。本稿が主題とする政府観光局あるいはそれに準ずるウェブサイトは,いまや,海外からの旅行者に対して,その国についての強力な「物語発信メディア」である。
 「問題(自己)との直面」の主題においては,「旅行中に起った困難や問題に対してツーリストがどう対応したか」(滝波,2005:29)ということが取り上げられる。
 具体的には,「問題の残存(書き手が問題に圧倒され続ける)」「問題の解消(問題が時間の経過で自然に解消される)」「問題の好転(問題が何かの出現で解決され,逆に好ましい結果が生じる)」「問題の昇華(問題が書き手にとって何かを達成するための試練となる)」といった4つの対応にまとめられる(滝波,2005:29)。
 30年余りの読者旅行文を分析した結果では,1970年代の半ば以降,旅先の人や他の旅行者との交流について記されなくなり,一方向的に旅先の人々の会話を記載する度合いが高まったという。
 場所に関しては,1970年代の半ば以降,「周囲の描写」が減って,「観察や理解」が増える。感覚的な驚きや感じ方よりも,知識を踏まえた分析的なものに変化していく。
 問題に対してどのように対したかという面については,1980年頃を境として読者旅行文の書き手が問題を抱え込んだままの状態である「問題の残存」が減って,問題がいつの間にか解決されていく「問題の解消」が増加する。問題を好機として自分を構築し直していく「問題の昇華」の事例も増えたという (滝波,2005:34-43)。
 「問題の昇華」が増えたということは,「書き手の旅行に対する関わり方から見れば,ツーリストがより操作的にツーリスト経験を構築するようになってきていることの表れ」(滝波,2005:43)である。
 旅行者は,素朴に人々や場所と関わり,心を動かされていた時代から,意図的に旅と関わり,自分のありかたを構築するようになったようだ。
 「ポストモダンの旅行者は・・・旅行というものが,様々な筋書きにもとづくゲームであり,ただ一つの本物の旅行経験などは存在しないことを分かっている」(Urry,2002:91)と評されるが,日本においても1980年代以降には,その傾向が見られるということになる。
 旅行者にとっての真正な現実が一つだけ存在すると考えるよりも,様々な物語のせめぎ合いを通り過ぎていくことが旅であると認識するようになったのである。
 ここで,海外旅行者が,外国に旅をして,そこで,様々な「人(他者)との出会い」「場所(他所)との遭遇」「問題(自己)との直面」をして帰国するまでの過程をまとめておこう。
 まず,確認すべきは「未来の旅行者」は,自国の日常生活の中でも多様な体験をしていることだ。物語理論の視点からすると,彼らは,日常生活の中における多様な「『知覚的体験』を『解釈学的体験』へと変容させる」という「解釈学的変形の操作」をしており,それこそが「『物語行為』を支える基盤にほかならない」(野家,2005:18)。
 日常的な物語の中にいる人が,ある日,外国旅行に出かけたいと思う。その動機は同一ではないが,日常を活性化するために,「新しい物語」に巡り逢いたいという欲望が底流に流れていることは共通しているだろう。
 すでに訪れたことのある既知の国を訪れることもあるだろうし,未知の国に出かけようと思うかも知れない。まだ行ったことのない国については,パンフレット・ガイドブック・雑誌・広告・友人の噂・自分が抱くその国のイメージなどに頼ることになる。
 インターネットが普及した結果,各種の旅行関係のウェブサイト,旅行経験者のブログ,各国の政府観光局または関連機関のウェブサイトを訪れる人も多い。OECD(経済協力開発機構)による世界の観光動向分析においても,「すべての事例分析から旅行・観光の価値連鎖はICT(Information Communication Technology)によって,非常に深く,根底的に影響を受けていることが明らかだ」(OECD,2008:40)と指摘されている。
 各国の政府観光局または関連機関のウェブサイトは,観光旅行で訪れたいと考える人々に対して,旅心を誘うような「方向性をもったドラマ」(Gergen,1994=2004:253)を描いている。印刷物とは異なり,情報量を増やそうとすれば,低コストで増やすことが容易であるだけに,複数のストーリーラインが用意されていることも多い。その国のイメージを形づくる「大きな物語」と呼んでおこう。
 メディアから与えられた「大きな物語」を心に抱いた海外旅行者は,現地に着くと,様々な人・場所・問題と接触する。
 旅に出るとき,「私たちは『出かけて』いって,関心と好奇心を抱いてまわりを眺める。周囲は私たちの見方に合わせて語りかけてくれる,あるいは少なくとも語りかけてくれるだろうと期待する」(Urry,1990=1995:2)と想定されている。
 現地で「語りかけてくれる」と期待される物語は,あらかじめ多様なメディアから与えられるか,旅行者自身が抱いているその国のイメージによって規定される。いずれにせよ,物語の収集・確認・修正のために旅に出るともいえる。
 人,場所によって喚起される物語に触れることで,問題との関係性が変化する。いままでとは異なった形で,自分をとらえ直し,アイデンティティを構築し直し,自己の物語の書き換えが行われる。
 それは旅先で起こるかも知れないし,帰国後に思い出として旅行における体験を思い返す中で,その照り返しとして,自己像の変更が起こるかも知れない。旅先のことを土産話として語る中で,物語が確認・修正・定着されることも多いだろう。
 出発前に影響を受けたメディア,子どもの頃から持っていたステレオタイプの像などは,旅に出ることで変わっていく。出発前にメディアから与えられたその国の観光イメージについての「大きな物語」は,実際に旅行を続ける中でそのまま維持されることは少ない。
 人との交流,場所との出会い,問題との関係性の変化など,「小さな物語」の積み重ねによって,渡航前にその国に抱いていた「大きな物語」は,修正される場合もあるだろうし,確認・強化される場合もありうる。
 旅行先を訪れるという「デスティネーション・プロダクト」は,無形であり,購入前はイメージしか頼れるものはない。同時に,現地に赴き実体験の中で,イメージのありようは変わっていく(Cooper and Hall,2008:224)。
 こうして海外旅行を経験した旅行者は,新しい記憶を心の中に定着させるのだが,物語の収集・確認・修正・定着の過程において,渡航前に主としてメディアから与えられる「大きな物語」の占める位置は大きい(図1参照)。
 

2.物語としての国家 

2-1 国家による物理的暴力行使の独占 

 国家は物語として語りうるのか。この問いには,ただちに「否」という答えが返ってくるかも知れない。「否」と答える人々は,言説として構成された存在としての国家を強調することは危ういというだろう。国家とは,人を拘束し,時には死に追いやる物理的な存在として理解すべきであると主張する。 確かに,「国家とはある一定の領域の内部で・・・正当な物理的暴力行使の独占(、、、、、、、、、、、、、)を(実効的に)要求する人間共同体である」(Weber,1971=1981:9 強調部分は原著)という古典的定義は依然として有効である。国家は,物理的な暴力行使という私たちの身に及ぶ強権を厳然と有している。 ただ,国民国家の形成によって,「国家の暴力が住民のもとへと『民主化』されてきた」(萱野,2005:197)ことも事実だ。「国民国家とは,住民全体の共同性によって国家の暴力が規範化されるような国家形態」であり,「国民共同体の内部では,たしかに国家の暴力は『穏やか』で『道徳的な』ものとなっていく」(萱野,2005:203)はずである。 加えてナイがいうように,国家の外部に対しても,軍事力や経済的制裁の脅しのようなハードパワーではなく,ソフトパワーの重要性が高まってきている。「国の文化,政治的な理想,政策の魅力によって生まれる」(Nye, 2004=2004:27)とされるソフトパワーは,「魅力によって望む結果を得る能力である」と定義される(Nye, 2004=2004:27)。 
 ハードパワーとソフトパワーの皮肉な関係として,第二次大戦中のドイツによるイギリスへの「ベデカー爆撃」がある。この空爆は,「戦時英語語彙集」によれば「歴史的建築的に意味のある街に対するドイツの報復爆撃のこと(ベデカー社によって刊行されていたドイツの観光ガイドシリーズから出たことば)」(Zandvoort,1957:29)である。
 ドイツは,空爆というハードパワーの行使効果を最大にするために「観光ガイド」に掲載されているイギリスの由緒ある街を標的とした。ドイツ側は,イギリス側のソフトパワーの根拠をよく知っていたのである。 ギデンスは国家もその中に包含される概念として,「政治的なことがら」を「意味による意思の疎通」「権力の作用(資源の使用)」「制裁という規範様式(身体的暴力の行使やその行使という脅しを含む)」という3つの要素で定義している(Giddens,1985=1999:29)。   「意味による意思の疎通the communication of meaning」においては,象徴や言説のありようが主題になる。「権力の作用(資源の使用)the operation of power」については,配分的資源と授権的資源という異なるタイプの資源の使用に対応して,政治的制度と経済的制度が関係してくる。「制裁という規範様式 (身体的暴力の行使やその行使という脅しを含む) normative modes of sanctioning」に関しては,法や制裁の様式が問題になる。

 2-2 国家による意味のコミュニケーション 

 こうして政治的なるものを腑分けしていくと,冒頭の問いに対する回答も自ずと明らかになってくる。国家は,物理的な現実であると同様に,つねに「意味のコミュニケーション」が行われている象徴と言説によって構成される存在でもある。物語としての国家という側面は軽視し得ない重みを持っている。 
 物語とは,登場するものたちが,どのような状況で,どのようなことが起きたのかを語る。そして,展開のありようによって意味を描く。物語というものは明示的な言説の底に流れている意味作用(signification)にこそ特徴がある (Watson and Hill,2003:188)。 
 もちろん,「国家の物語を構築するということは,つじつまの合わない要素や望ましくない要素を抑圧し否定する膨大な作業を含んでいる」(Hodgkin and Radstone, 2003:170) ことは確認しておくべきだろう。
「ある記憶が時代の中で正当性を獲得するということは,その反面で,それとはそぐわない数多くの記憶が抑圧され,忘却されていったことを物語っている」(山之内,2003:34)のである。
いいかえれば,「過去の意味についての争いは,現在の意味についての争いであり,過去をどのように未来に向かって持って行くのかという道筋についての争いでもある」(Hodgkin and Radstone,2003:1)といえる。 国家が過去を意味づけし物語っていく行為は,国内的には国民のアイデンティティに関わるので,どのような物語が妥当であるのかを巡って論争が起こりうる。
 政治やジャーナリズムの世界では,つねに「過去の意味についての争い」がある。教科書にどのような形で過去が描かれるかという問題は,国内政治の緊張をもたらすことも多い。ある国の過去についての「公式な物語」について,近隣の国が異議を唱えることもある。 

2-3 国家ブランディング 

 最近では,世界各国において,意図的に国家イメージを構築する「国家ブランディング」が盛んになってきた。ちなみに言説を中心に考えれば物語づくりであるが,視覚的な象徴も含めたマーケティング用語では,ブランディング(ブランドづくり)ということになる。 国家ブランディングには,①観光客を引きつける②国内への投資を刺激する③輸出に勢いをつける④海外の良い人材を引きつける(Dinnie,2008:17)という4つの目的がある。 
 こうした目的は互いに齟齬を来すこともありうる。スコットランドやアイルランドが有している「原野・人気のない田園・人がいい昔気質の住民」といった観光用イメージは,アメリカや日本がそこに半導体工場を作りたいという場合には,否定的に働く可能性もある(Anholt,2004:37)。 
 ちなみに国家の場合,「『ブランド』という言葉は人々の血圧を上げさせてしまうようだ」(Olins,2004:23)。国家についてブランドという言葉を使うこと,あるいはそうした表層的な概念を活用することは,国家を石鹸などと同様な次元で扱うことになるというのである (Olins,2004:24-25)。 
「国家は,永遠のものであり,きわめて重要であり,計り知れない感情的,精神的なものを内に含んでいる」(Olins,2004:25)のにも関わらず,マーケティング用語で扱うことに反発する人々も存在する。 
1997年に発足したイギリスのブレア政権は,「クール・ブリタニア」を標榜した。同年に出た『Britain TM 登録商標ブリテン−−私たちのアイデンティティの再構築』(Leonard,1997)と題されたレポートに基づく国家ブランディングの試みであった。同時期の論評では,「ゾッとするほどお寒いクール・ブリタニア」と批判的なものもある(Aldersey-Williams,1998:12)。革新性よりも,大衆への媚びが前面に出ている面を難じているのだが,「クール・ブリタニア」戦略によって,イギリスのイメージは「老大国」から「若いクリエイティブな国」へと変化した。 
「急速なグローバリゼーションの進展は,すべての国家・都市・地域が,世界中の消費者・観光客・投資家・学生・起業家・国際的なスポーツ・文化イベントに対して競合しあうことを意味する」(Anholt,2007:1)と指摘されるように,国家の意味づけを刷新して,視覚的に印象づけることを迫る主な要因は,グローバルな市場経済である。 
「グローバル化によって文化の平準化が進む一方,差異化がなければグローバル市場で商品化できない。従って,ナショナルなものへの文化の差異化も進行する」(栗原,2003:56)わけで,国家にとって対外的な「意味のコミュニケーション」の重要性は高まっている。 

2-4 対象別の国家ブランディング 

国家ブランドとそれを支えるストーリーラインは,その効果を最大限に発揮するためには,海外における消費者・観光客・観光業者・投資家・留学を考えている学生・起業家,そして各国政府,国際機関など,各種のステークホルダー(利害関係者)ごとに対応する必要がある。 
戦前の日本においても,ステークホルダー別の対応が行われていた。国際連盟脱退(1933年)の翌年に発足した国際文化振興会(KBS)の例を見てみよう。 
「同会設立の目的は,国際連盟から脱退したものの,学術や芸術,スポーツ,文化などを通して,日本が国際社会に貢献する意図があることを示し,国際的な地位を確保することにあった」(井上,2009:49)とされる。既に存在していた国際観光局(鉄道省外局として1930年設置)や国際観光協会(1931年に財団法人として発足)などの海外からの観光客誘致の組織とは,目的も事業内容も異なっていた。 
国際文化交流事業実施機関としての国際文化振興会は,対外文化工作に関する協議会を1937年から38年にかけて10回開催している。協議会では,「武士道・華道のような日本の伝統的文化」を訴求するのが効果的な地域と,「欧米並みの物質文明を達成している近代性」を訴求する方が向いている地域など,対象となる文化圏ごとに「文化工作」の内容を変えていくべきであるとの議論をしている(芝崎, 1999:133)。 
一方,国際観光局と国際観光協会は,「新聞・雑誌やラジオ番組への広告,著名人や友好団体の招待・接遇・映画制作などさまざまな宣伝を展開」(井上,2009:77)することを目指した。そこでも明治期から欧米に定着している「日本趣味」に迎合する方向性と,世界列強に伍していく「日本の先進性」のどちらを強調すべきかで議論が分かれた。これも地域や知識水準の異なる訴求対象のどの層を重視するかで結論は変わってくる。 
結局,「欧米の近代文化を日本の伝統と融合させた現在の日本を宣伝すること」(井上,2009:78)という形で妥協が図られた。 
国際観光局の諮問機関であった国際観光委員会の答申第1号では,「『宣伝』『ホテル』『観光地』『接遇事項』を国際観光政策を遂行していく上での重要なキーワード」(砂本,1998:193)と確認している。その上で,観光のための施設整備に関しては,「最も効率的に外貨獲得が見込めるアメリカ人と在アジア欧米人の趣向を反映したもの」(砂本,1998:193)に方向性を絞るという答申をしていた。 
このように外国からの旅行者といっても,どの文化圏に対して訴求するのかによって,伝えるべき内容は異なってくる。同一の国からであっても,「家族連れ」「カップル」「買い物が目的の旅行者」「冒険好き」「出張を兼ねた短期旅行者」「友人や親戚を訪問する人々」「歴史に関心のある学習志向の旅行者」「巡礼者」「障害をもった旅行者」「滞在型余暇を楽しみたい退職者」など, 多様な旅行者の目的・動機によって求められる観光情報も異なるのである(Swarbrooke and Horner,1999:252-253)。 
海外からの旅行者を増やすためには,個別の対象に向けてきめ細かく多様な対応をしていく必要がある。インターネットは,個別的な対応を可能にする。次章では,各国の政府観光局とそれに準ずる機関のウェブサイトが,どのような物語によって,国家ブランディングを行っているかを見ていこう。 

3.政府観光局の戦略  

3-1 ウェブサイトの2類型 

今回,事例分析として取り上げたのは,50か国の英語版のウェブサイトである。日本語版の場合は,情報が簡略化されており,内容的に乏しいものが少なくないので英語版を分析した。ウェブサイトによっては,アメリカ合衆国,イギリス,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド,その他の英語使用のユーザー向けに分かれている場合もある。必要に応じて,各国向けの英語版の展開を調査した。 
分析をした50か国の政府観光局ならびにそれに準ずる観光ウェブサイトは,物語性という観点から2類型に分けられた。 
まず,YOU型とでもいえるもので,ウェブサイトを訪れたユーザーに対して,「あなたの物語」を提供しようとするウェブサイトである。2人称で語られた物語であり,物語の受け手側,旅行者側に立って物語が展開する。 
もうひとつは,WE型と呼べるもので,1人称複数で語られた物語であり,その国のありようを「私たちの物語」として提示している。 
「ドラマを生み出すのは,事象そのものではなく,事象間の関係」(Gergen, 1994= 2004:26)である。だが,事象の列挙に止まり,事象間の関係が希薄な結果,低い物語性に止まるウェブサイトも散見される。とくにWE型においては,素材としての事象を並べただけで,報告書に近いものも見られた。物語性の少ない事象列挙型のウェブサイトも,旅行代理店などが情報を確認するのには十分である。しかし,海外のとくにその国を訪れたことがない旅行者に魅力を感じさせる度合いは低くなる。 
物語の完成度は,事象間の関係づけに加えて,物語の終点が「価値を担っている」(Gergen,1994=2004:26)という印象を与えるかどうかにかかっている。物語の終わりが価値を担うということは,物語の一つの形式である小説などであれば,当事者たちの勝利,恋の成就,宝ものの発見などが該当する。物語の終わりが明確な価値を担うように巧みに計算されたウェブサイトは,旅心を誘う力が強い。 
以下,YOU型とWE型の分類のもと,調査対象50か国のウェブサイトから,アクセス時点における興味深い事例を取り上げる。なお,調査対象の50か国のウェブサイトアドレスとアクセスした日付は文末に示した。 

3-2 YOU型のウェブサイト 

YOU型のウェブサイトは旅行者の側に立って,その国がもたらしうるデスティネーション・イメージを物語という形式で提示する。それに対して,WE型のウェブサイトは,その国のアイデンティティを物語で語る。 
あらゆるコンテンツにおいて,情報の受け手側(YOU型)の物語を構築することは,人称設定の時点で,すでに意識的な操作を伴う。政府観光局あるいはそれに準ずる機関のウェブサイトが, YOU型を採用するということは,コミュニケーションに関して,その国の担当部局ないしは担当者の水準が高いといえよう。 
反面からすれば,コマーシャルなどに見られる商業的な話法に近いということで,「こなれていて,洗練されている」ともいえるし,「公的なものにしては,あざとい」と感じる人がいるかも知れない。一般的には,アメリカ,イギリスなどの英語使用国民にとっては,こうしたレトリックの効いた話法は受容度が高いと想定されている。従って英語のウェブサイトとしては評価できるだろう。  

フランス 
2009年2月にフランス政府観光局のイギリス向けウェブサイトにアクセスしたときは,バレンタインがテーマになっていた。「バレンタインを世界で最もロマンチックなところで過ごしませんか。そして,永遠の思い出に!」というスローガンから始まる。  

「フランスへいらっしゃいませんか。そして,あなたの全感覚を刺激してください。そう,目を閉じて! あなたとパートナーが,この世と思えぬ,ロマンチックな場にいると想像してみましょう。空気を感じながら,歩きます。水にふわっと浮いてみます。さあ,忘れがたいひとときを魔法にかけてしまう『見知らぬ香り』を見つけて下さい」  

「甘いバレンタイン」というアイコンをクリックすると,ピンク色の画面に変わる。「ベッド」「夜の光」「バレンタインチョコ」「ビーチの二つのコップ」「キスする天使」「水辺の二人の夜景」「公園の二人の男女の彫刻」といった写真で構成される。 
「バレンタインと五感」というコーナーもある。そこでは,「フランスはあなたの五感を目覚めさせます」と謳われている。 
「見る。それは,ロマンチックな芸術。恋人達へのインスピレーション」 
「嗅ぐ。その気にさせる自然香料。二人がうまくいくロマンチック配合」 
「触る。バレンタインデイに温泉のマッサージに耽ろう」 
「味わう。二人のためのロマンチックなバレンタインディナー。ロマンチックなバーとカフェ」 
「聴く。バレンタインデイの魔法のようなセレナーデとメロディー」 
五感ごとにカップルの物語を描くのだが,「旅はあなたの情熱をきっと爆発させます」というコピー通りの甘い物語である。 
アメリカ向けのウェブサイトでも, バレンタインがテーマになっている。スローガンは,「ロマンチックなバレンタインデイのランデブーを計画しよう」。 
イギリス向けにおいては,「二人の愛の現場」が接写レンズで官能的に描かれているのに対して,アメリカ向けではロマンチックな雰囲気程度に抑えられている。 「自転車の二人」「海を見下ろす二つのイス」「西日の公園のベンチの二人」「ロマンチックなディナー」「ロマンチックなバレンタインの気球冒険」「フランスの街とロマンス」「パリのバトーによるロマンチッククルーズ」など,イギリス向けよりもアメリカ向けの方が,物見遊山の要素を含んだ活動的な物語を暗示する。 
列車に乗れば2時間15分で隣国から到着できるカップルと,遠く大西洋を越えてくるカップルでは,同じ「愛の物語」でも描き方が変わってくる。もっとも,旅行者をヒーロー・ヒロインに仕立てたYOU型のラブストーリーであることに違いはない。 
アメリカ向けでは,バレンタインよりも,「パリのアメリカ人」というテーマの方が強調される。1928年にジョージ・ガーシュインが作曲した交響詩の曲名であり,1951年にはジーン・ケリーのミュージカル映画「巴里のアメリカ人」でも知られている。
「パリのアメリカ人」のアイコンをクリックすると,ワーナーブラザーズの広告欄である。「巴里のアメリカ人」のDVDを紹介している。キャッチフレーズは「あなた自身がパリのアメリカ人になろう」。これもYOU型物語による訴求といえよう。 

イタリア 
北アメリカ向けでは,「人生のためのイタリア」,イギリス向けでは「イタリアに行くと,いつも文化の旅になる」というスローガンである。旅行者に人生のドラマを提供しようという姿勢ではフランスと共通する。 
イギリス向けでは,ダビンチ,ミケランジェロ,マサッチオ,ボッティチェリ,ピエロ・デラ・フラチェスカ,マンテーニャ,ドナテルロ,ラファエロ,マッシーナ,ブラマンテ,コレッジオ,ティントレット,ジョルジョーネ,ブルーノ,カンパネーラ,コペルニクス,ガリレオ,マキャベリ,アリオスト,パレストリーナ,モンテベルディといった名前がきら星の如く並び,「訪れるあなたは,世界を本当に変えた文明を思い描くことができるのです」と語る。 

「イタリアでは,自由時間を過ごす幾千もの方法があります。スポーツ,趣味,リラックス,教養を高める,コンサートに行く,遊ぶ,伝統的なお祭り,そしてスポーツを見る。あるいは,ただバールに座って,カプチーノか一杯のおいしいワインを飲む。大きな街,小さな街をそぞろ歩く。教会,宮殿,記念碑,城,遺跡,美術館,ギャラリー,広場,街路を観賞し,訪れる。イタリアではこうしたことすべてがうまくいきます。イタリアに,ただいるだけであっても,それは自由時間を過ごすもっともいい方法です」 
 
上のコピーは,イギリス向けのものだが,イタリアという国そのものが,劇場のような興奮を与えることを感じさせる。 

オーストラリア 
アメリカ・イギリス・ニュージーランド向けサイトの第一画面は,上方に大きな写真がある。大きな樹木の枝にすわる男女,遠くに山,木にはランタンが10個以上ぶら下がって揺れている。遠くに見える水辺にはテーブルと椅子があり,ワイングラスも見える。手書きの文字で「到着したときは,心には色々とあった。出発するときは世界に何のわだかまりもなかった」とある。 
先に触れたように旅行では,「問題(自己)との直面」ということが起きうる。ここでは,旅行前に抱えていた「問題の解消」「問題の好転」「問題の昇華」が語られている。これほど明確にYOU型物語として「癒し」をテーマにしているウェブサイトは見られない。ウェブサイトは,一貫して,旅行者の心について述べる。アボリジニーの少女の写真とともに下のコピーが添えられている。  

「何が一番大切かを見つけるために,時には自分を忘れることが求められます。オーストラリアのアボリジニーの人々は,そのことがよく分かっていたのです。大地と自分たちの昔からの生き方をつなぎ直すために,定期的に『漂泊の旅(walkabout)』にでかけます。『漂白の旅』は,多くの場合,バランスを取り直してリフレッシュするための休暇という形を取ります。休暇によって,日々の生活で触れることを忘れていた自分たちを再び見いだすのです。街,ブッシュ,海岸へ行くのか。ドライブ,飛行機,歩き,船旅,汽車のどの方法で旅をするのか。それは問いません。『漂泊の旅』は,人生を豊かにしてくれます。心の魔法といったものに栄養を与えてくれるのです」  

オーストラリアの原野には涸れ川がある。乾ききっているが,雨期になれば,また川となる。涸れ川のように「あなたはオーストラリアで,自分の流れをまたつなぐことができるでしょう。自分が乾ききったと思ったとき,オーストラリアのオペラの舞台のような風景,夕日,そして季節が,あなたの心の川は,あなたのすぐそばをいつも流れているということを思い起こさせてくれるはずです」とウェブサイトは訴える。オーストラリアでしか経験できない物語を雄弁に語るのである。  

「アボリジニーの人々にとって,・・オーストラリアは,大地,生き物,様々な要素,季節,ドリームタイムの物語,精霊,歌といったものの不思議なネットワークなのです・・・こうした古くからある創造の物語から,あなたご自身の物語を見いだしてください」 

 2008年2月にオーストラリアのラッド首相が,議会においてアボリジニーに公式に謝罪をしたことも反映しているのだろうか。オーストラリアの魅力を,アボリジニーの生き方を中心に描いているところが興味深い。 

カナダ 
イギリス向けのウェブサイトは,6つのテーマから構成されている。 都会からの脱出をテーマにしたコピーは「あなたのすぐ目の前に野生がある」と語りかける。タクシーでも行けるが「海の道でいこうよ」ということで,「カヌーの二人」の写真。遠くには摩天楼が見える。 
「あなたの内外を元気にするカナダ」は,風景がテーマである。ランチにロブスターとホタテ貝を食べた二人が,デザートに供されたのは,信じられないほど美しい景色だったという設定だ。湾内に停泊する「ヨット上の中年カップル」の写真の背景には色とりどりの家が並び,小さな冒険と癒しを訴求する。 
「私たちの物語を生きる。あなたの物語を作る」というテーマでは,カナダの多様な文化と伝統を物語仕立てにしている。
「古い世界に新しい料理を見つけた」というコピーと共に,「赤ワインで食事を楽しむ四人」の写真がある。背景は石畳と教会のヨーロッパ風の街並みである。クリックすると,アボリジニーの村,カウボーイ,ゲーリック語が残る島などについて語られる。「私たちは,固有の物語を生きている。それに触発されながら,あなたもご自身の物語を作ってください」という筋書きである。 
「ようこそ,贅沢の新しいフロンティアに」は,「フィヨルドを背景にヨガをする女性」の写真があって,「贅沢な旅。時には何もしないこと。それはほんとうに素晴らしいこと」といったコピーが続く。 
「野生への旅」は,「旅行者と北極熊」が交流している写真である。「北極熊に『こんにちは』」というコピーで,自然と野生の生活を間近に見られることを訴えている。「どの季節にも,物語がある」は,「天空に広がるオーロラ」の写真に,「世界一の光のショーの立ち見席へどうぞ」というコピーが添付される。 
以上,カナダの自然を背景に旅行者それぞれにあわせたストーリーラインが描けることを訴えている。 

イギリス 
アメリカ向けのウェブサイトでは, 都市観光を前面に押し出している。 スローガンは「文化,おいしいもの,夜遊びに貪欲な人へ」。例えば,「ゲイとレズビアン」というアイコンをクリックすると,ゲイとレズビアンのカップルの写真である。10日間に渡って開催されるマンチェスター・プライドの紹介などがある。ゲイ,レズビアン,バイセクュアル,トランスジェンダーの人々の生活を祝う19回目のお祭りが8月に開催されることを訴求している。 
ゲイとレズビアンの人々が好むショップ,有機野菜の店,ロンドンのゲイエリアであるソーホーのレストランなどを紹介。「食事と同じようにくつろげる雰囲気とくつろげるお客が集まるレストランです」と説明が続く。 
先に触れた「人(他者)との出会い」は,地元の人や他の旅行者との深い交流を軸に物語が展開される。イギリスのウェブサイトは,「ゲイとレズビアン」という細分化された市場についても,それに向けた物語の場を提供しようとしていることが印象的である。 
「ロンドンでしかできないこと」というコーナーには,アビーロードをビートルズ風にギターをもって歩く旅行者の四人が描かれている。「イギリス音楽へのバックステージパスを手に入れよう」「イギリス映画の紹介」「サッカーの本場・イギリス」「バッグパイプのコンテスト」など徹底して文化をテーマにした訴求でアメリカ人に迫る。 
一方,北欧向け英語のウェブサイト,ならびにカナダ向けのウェブサイトでは,ゴルフ,海浜のリゾート,田舎の蒸気機関車など,アメリカ向けとはやや異なるアプローチである。 
ニュージーランド向けは,「イギリス人の秘密の生活」というコラムが目を引く。イギリス文化に興味を持っているニュージーランド人に向けて,「庭好き」「文化に貪欲」「スポーツ好き」「プロの買い物好き」「歴史好き」など,イギリス人の奇妙とも思える熱狂ぶりを物語仕立てで展開している。 

エジプト 
マークは両手を開いた中に太陽。「太陽のギフト」というキャッチフレーズの後に,以下のコピーが続く。  

「ようこそ。あなたはドアを開けて太陽の光をあなたの人生に招き入れました。ピラミッドと古代文明に魅せられましたか?太陽がいっぱいの海岸や贅沢なダイビングを夢見ていますか?過去にひたひたと浸された国を見いだすために読み続けてください。紅海から地中海まで,太陽はあなたの旅のガイドであり,友達でもあります」  

写真は,海,褐色の大地と建物,ナイル河,砂漠とオアシスなど。一貫して物語の主人公は,太陽である。 

チェコ 
第一画面は,「チェコ共和国は五感の交響曲・・・有名な作曲家たちの国で,あなたの五感の交響曲を生み出してください」という文章で始まる。そして,カップルにチェコへの旅を薦める。  

「あなたは恋に落ちていますか。恋にぴったりの場所を探していますか。楽しくてロマンチックな経験をお好きですか。それなら,チェコ共和国です。伝説的な女性遍歴で知られるカサノヴァが最後に過ごしたところ,偉大なる詩人ゲーテが恋に落ちた場所,モーツァルトのオペラ『ドンジョバンニ』が初演された地でもあります」  

家族旅行についても親の気持ち,子供の気持ちを軸にYOU型物語を展開する。

「親というものは子供に忘れがたい思い出を与えたいと思います。何か教育に役立つところへ行こうとします。子供はそうした親の意図をわかっています。だからといって,一日中,大邸宅や美術館にいるはツライなので,何とか避けようとするのです。でも,チェコ共和国では,退屈な歴史がワクワクする物語に大変身!子供たちと大人たちは,共通の言葉で折り合えるのです」 

デンマーク 
 「あなたの中のデンマーク人を解放しよう! デンマークで,自由を感じよう」が,イギリス向けウェブサイトのスローガンである。赤ペンキをぶちまけたような赤い染みの中に,白抜き文字で描かれている。本国にいると,「堅物」でいることを強いられるイギリス人に「羽目を外せ」と訴えかける。 
 挑発的なコピーに添付される写真は,「丸裸の女性二人の後ろ姿」「じゃれ合う男女」。自由を満喫して楽しそうだ。 
 アメリカ向けは,「デンマークで楽しもう デンマークで休暇を過ごすと言うことは,おいしい食べ物,流行のカフェ,ワクワクするショッピングをしながら,歴史や文化を体験できると言うことなのです」と,イギリス向けと実際の内容は,さほど変わらない。 
 ただ,両者を対比すると,イギリス向けの「あなたの中のデンマーク人を解放しよう!」というスローガンが「価値ある終点を明確にする」(Gergen,1994=2004: 253) ことで物語の効果を高めている。 

アルゼンチン  
 YOU型物語として,アルゼンチンは他とは違った手法を取っている。 
 アルゼンチンを南北に走る国道40号線の5000kmをひたすら主観移動の動画で訴求するのである。ナレーションはない。音楽だけが流れる。時間的には短縮されているのだが,動画像を見続けていると,広大なアルゼンチンを縦断する冒険物語の主人公になったような感覚になる。主観移動の動画によって,ウェブサイトを見た人の心には様々な物語が紡ぎ出されるのである。 

3-3 WE型のウェブサイト 

 YOU型のウェブサイトに比べて,WE型のウェブサイトは物語性の高いものから,事実の列挙に止まる物語性の低いものまで幅が広い。WE型の場合は,その国のアイデンティティの表明を感じさせる「思い入れ」の強い物語も見られる。建国に関わる「大きな物語」が感情を込めて展開されることも多い。 
 「物語は,情報を保持するための自然で経済的な認知の道具に止まらず,何ものかとの個人的な関係,一体感を打ち立てるためにも最も適した形式なのである」(László,2008:167)といわれるが,その国の独自の歴史が色濃く反映した物語が見られるのである。 

クロアチア 
 中世の教会,海,馬上の人,魚,オリーブの木,中世の絵画などの写真と深紅の帯。そこに「かつてそうであったように,地中海人種です」というスローガンがある。 歌と踊りこそ, クロアチアのアイデンティティだという。クロアチアの人々は,詩人であり,歌手であり,ダンサーであり,聞き手である。誰かに,聞かせるということではなく,自分たちのために歌詞を書き,歌い,踊る。 
 民俗芸能と芸術的な創造が,人々の十字路を形づくる。そこで人々の違いと多様性は通い合うのである。「習慣は,伝統となり,伝統は,文化となり,文化は精神性になる」と結ばれる。 
 「あらゆる面において,民族音楽は,人生とその移ろいの友でありました。従って,時代と人々の経験を解釈し,考えを表すことは,民族音楽の歌手の役割であったのです」と説明される。「ばらばらのクロアチアをつなぐものとして歌がある」というクロアチアの歴史が伝わってくる。そして,次の一節が語られる。  
 
「クロアチアの人々の間には,次のような物語があります。神様は,地を人で満たした後に,ほっとくつろげる美しい一画を作りました。でも,自分だけで独り占めすることはやめて,人に優しくて音楽好きのクロアチアの人々と分かち合うことにしたのです」  

 そして,「クロアチアは大帝国の中心になったことはなく,大きな遺跡などもありません。でも,小さな国ですがいろいろな世界遺産があります」と結論づける。  WE型物語は,その国の成り立ちとアイデンティティについて,諄々と説いていくものが多い。クロアチアは典型的な例である。 

トルコ 
 ニューヨークのメトロポリタン美術館における「バビロニアを超えて:紀元前2000年前の芸術・貿易・外交」という展覧会を紹介している。112の展示品はトルコの美術館から貸し出されたもの。「トルコ南岸の難破船から見つかった」というあたりが,物語に不可欠な「謎と驚き」を構成する。 
 「私の寂しくて美しい国 その国を私は情熱的に愛している」という印象的な言葉もWE型物語に特徴的な情念が込められている。61回カンヌ映画祭で監督賞を受賞したトルコの監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランの受賞メッセージである。   ローマ法王ベネディクト16世は,パウロの生誕2000年を記念して「聖パウロの年(2008年6月28日から2009年6月29日)」を宣言した。それを受けて,トルコ政府も生誕2000年の準備をしていることを語る。数百万人のキリスト教徒が,パウロの生地であるタルススを訪れるだろうという。 
 キャッチフレーズは,「ローマに行く必要はない。トルコにいらっしゃい」。トルコ政府観光局の英語版ウェブサイトでは,キリスト教の歴史におけるトルコの重要性を強調し,国民の大半がイスラム教徒であるという事実をWE型物語として展開することは避けているのである。 

中国 
「竹林に扇子」があり,扇子の中の写真が変わる。歴史的建造物,現代,自然といったものを象徴する映像が続く。そしてメッセージが出る。 
 
 「中国は永遠にその古代文明,友愛に満ちた人々,世界で最も崇敬される万里の長城,兵馬俑,揚子江などの宝物と結びついています」  

 歴史のコーナーでは,兵馬俑を背景にして,5000年の歴史が語られる。経済活動が最初に起きた地域の一つでもあるとし, 紀元前221年・秦の始皇帝からの歴史を紹介する。 1911年のブルジョア民主革命で2000年間の封建的独裁制が終わり,その後,中華人民共和国が1949年10月1日に発足したことを物語る。  

 「今日,中国は,改革開放政策を履行し,社会主義市場経済を確立しています」 

 人口に関するコーナーでは,世界で最も人口の多い国であり,世界人口の22%を占めることが語られる。エスニックグループの紹介では,少数民族の,伝統的衣装の女性,子供,現代風の女性が現れる。だが,男性の写真は,一部の老人男性を除くとほとんど登場しない。  
 
「中国は多人種国家であり,56の人種から成り立っています。その長い発展の過程においては,すべての民族が,中国の偉大な文化を生み出すことに加わってきました。漢族以外には55民族がいますが,それを足しあげると,9650万人であり,全人口の8.04%です・・・中国憲法は,漢族以外の権利と特権を保障しています。例えば,一人っ子政策の免除,大学入学における優遇策,税金の減免,政府による助成などです」 

 宗教については「中国は道教,仏教,イスラム教,キリスト教などの多宗教国家です。信仰の自由は政府の政策であり,正常な宗教活動は憲法で守られています」と語られる。記述は,他のコーナーに比べて少なくて以上である。「道教・仏教・チベット仏教」については写真付きだが,イスラムとキリスト教についての画像はない。 
 言語に関しては,「現代の中国では,標準中国語が一般的に使われます。国連での5つの使用言語の一つです。55の人種集団の大半は自分たちの言葉を持っています。そして多くの方言が中国にはあります。書かれた言語として,漢字は6000年の歴史があります」と説明される。国土については,地図を背景にして語られる。  

「中国は世界第3の大きさの国・・・海岸線は18000キロメートル,巨大な海には5000の島,その中で最も大きいのは台湾と海南島・・」  

 各省が紹介され,最も標高の高いところは,チョモランマ8848メートルであり,最低は水面下154メートルのトルファンであることが説明される。 
 歴史は5000年。人種集団は56。漢字の歴史は6000年。国土の広さは世界3位。海岸線は18000キロメートル。島の数は5000。最高峰は8848メートル。つねに数字の大きさを軸に物語が進行する。 
 中国のウェブサイトは,情報量は多いが物語性は低い。ガーゲンは,「物語が方向性をもったドラマと見なされるための条件」として,「価値ある終点を明確にする」「終点にとっての関連事象を選択する」「事象を並べる」「同一性を安定させる」「因果の連鎖を作る」「区切りを示す」の6つをあげている(Gergen,1994 =2004:253-257)。 
 中国の場合は,その国の歴史の長さ,巨大さ,多様性,偉大さを語るという「価値ある終点」は明確である。 
 だが,「事象を並べる」ことに止まり,「同一性」「因果の連鎖」の提示は弱い。「すべての事象の評価性が変化しないようなドラマ(安定的語り)は,もはやドラマとは呼べない」(Gergen,1994=2004:262)という印象を受ける。 

インド 
 「2009年にインドを訪問する一つの理由」として,5つの物語を語っている。「仏陀の国」「トラの国」「冒険の国」「タージマハールの国」「祭りの国」である。物語の出だしは,以下のような文章で始まる。  
 
「インドのように多様で複雑な国では,地域ごとの過去,伝統,価値,そして,歴史に残るだけでも5000年の年月の中で育まれた,それでこそ真のインド人であるというような,数多くの顕著な生活習慣,食べ物などの豊かな栄光を映し出していることは驚くべきことではないのです。ヒマラヤ山脈の万年雪から南の半島まで,西の砂漠から東の湿地帯のデルタまで,あるいは,乾燥した熱気と冷涼さの中央高地から,そして冷涼な森の麓まで,インドのライフスタイルは地理を反映しています。インドの食べ物,衣生活,習慣は,その源の土地によって違うのです」 
 
 中国と同様に,歴史の長さ,巨大さ,多様性,偉大さを語る。だが,そこには叙述の緩急が見られる。ガーゲンの表現を借りるなら「語りの傾斜の変化」(Gergen,1994 =2004:262)である。 
 映像としては,砂漠,ヒマラヤ,ジャングル,山岳地帯などの風景写真によって,国土の多様性が示される。「インドはカレーだけではありません」とインド料理の説明もされる。インドでは,食べ物は,「甘味,酸味,塩味,スパイス味,辛味,渋味」という6つの味に分けられる。そして,「よくバランスの取れたインドの食事は6つの味を含んでいます」と結ばれる。 
 「冒険の国」というコーナーでは,インドで経験することができる物語が紹介される。キャッチフレーズは,「インドは冒険を求める人のための何かがある」。水のスポーツとしては,カヤック・ダイビング・水上スキーが可能だという。何よりも,「ヒマラヤのおかげで,もっとも手強くて,ドキドキするような川があります」と川遊びのスリルを語る。 
 野生生活としては,バードウォッチング・釣り・トレッキング・ロッククライミング・山登りができる。空のスポーツとしては,パラグライダー・パラセーリング・ハングライダー・スカイダイビング・熱気球がある。他には,ジープサファリ・ラクダサファリ・ゾウサファリ・馬サファリ・スキー・バイク・バンジージャンプ・モータースポーツ・洞窟探検が紹介される。各タイトルをクリックすると,それぞれに詳細な説明がついてくる。 
 「価値ある終点」にとっての関連事象を選択し,因果の連鎖を明示していくことで,インドの多様性と奥深さについて,具体的に説得力を持って語っている。 

ミャンマー 
 ミャンマー軍事政権と国際社会は,「政治犯の釈放」「武力弾圧への非難」「北朝鮮との軍事協力」などを巡って緊張関係にある。国際的な孤立の中で,観光のためのウェブサイトは,どのような物語を提供しうるのだろうか。 
 第一画面は,茶色の地に上部には「夜景にライトアップされるパゴダ」の写真がある。トップページが夜景である国は珍しい。ウェブサイトの言葉は,以下の文章で始まる。  
 
「ミャンマーは,アジアの偉大な文明であるインドと中国の交差路にあります・・・今日にいたるまで,ミャンマーは,最も神秘的で未知の旅行先です。わくわくするような美しさと魅力の地が,現代社会に入ってきました・・ミャンマーは,ひとつの素敵な国の中に,アジアの伝統的な輝きのすべてがあります。人の踏み入れないジャングル,雪を冠する山々,汚されていない海岸などが,2000年以上にわたる豊かで輝かしい遺産と溶け合ってそこにあるのです。壮大な記念物と古代都市は,135のエスニックグループが暮らすいきいきとした文化を証明しています・・・ミャンマーの旅行インフラは五つ星級・・・旅行者が犯罪の被害にあう率が最も低い国の一つです・・・ミャンマーには,アジアにおいて,最も暖かい歓迎が待っています」  

 物語とは,個別の事象を紡いで,一つの結論に導いていくものである。ここでは,「インドと中国の交差路」「神秘的で未知」「アジアの伝統的な輝き」「2000年以上にわたる豊かで輝かしい遺産」「旅行者が犯罪の被害にあう率が最も低い」「最も暖かい歓迎」というストーリーラインで構成されている。 
 ちなみにヤンゴンについては,「ミャンマーの国際的な都市,広い街路樹のあるとおり,静かな湖,優雅な世紀転換期の建物などがあり,植民地時代の魅力が残っています」と説明されている。だが,軍事政権が2006年に正式に移転した新首都・ネピドーについての記述はない。 

ベトナム 
 自国の歴史と文化について,これだけ綿々と物語るウェブサイトは数少ない。とくに抵抗運動と独立の過程について詳しい。WE型のウェブサイトは,自らのアイデンティティーを確かめるかのように「思いの丈」を語る場合が多い。ベトナムはその典型例である。 
 歴史のコーナーでは,先史時代,中国の一部だった時代,独立,各王朝,フランス植民地の時代と来て,その後,1945年からのフランスやアメリカとの闘いを語る。  

「ホーチンミン軍の一斉攻撃によって,サイゴン政府は,1975年4月30日に崩壊しました。1975年5月1日,ベトナムの北から南の労働者と市民は,初めて完全に自由なメーデーを祝うことができたのです。ベトナムは,その時点から再統一されました。ハノイを首都とするベトナム社会主義共和国が誕生したのです。再統一後は30年間に及ぶ戦争の惨禍を,国をあげて乗り越え,国の再建に乗り出しました。現在,ベトナムは経済発展の新段階に入り,1人あたり年収を上げ,経済を強固にするために頑張っています」 
 
 仏教,カソリック,プロテスタント,イスラム教,カオダイ教,ホアハオ教などの宗教について,あるいは,少数民族の言語,近代文学,民間の諺・民話など,文学の解説も詳しい。祭り,アート,服装,食べ物・花・果実なども,歴史と同様に丁寧に語られる。例えば,花についてだけでも,7つの花を写真とともに詳細に紹介している。歴史と文化に対する思い入れが色濃く表れた構成である。 

ブラジル 
 海中の写真に「ひとかき泳ぐたびに,ブラジルらしさを見つけよう」というコピー。ブラジルは,そこに住む人々の魅力を語る。  
 
「長い間,ブラジルの自然美,カーニバルが国際的に有名であり,旅行者を引きつけてきました。でも,別の魅力もあるのです。それは,ブラジルの人々。ブラジルの人々の生き方には,他の風景などよりも,もっと驚かされ,もっと魅せられることでしょう」  

 アイコンをクリックするとアンケートデータで,観光客が自然美などと共にブラジルの人々の暖かさに感動したことを書いている。旅先での物語は,まず,「人(他者)との出会い」で成立する。とくに地元の人や他の旅行者との深い交流は重要である。 
 「この国にいる間に感じる人々の幸福感」というコピーは,ハッピーエンドで終わる物語のようにウェブサイトを訪れた人々にも強い印象を残すだろう。 

スウェーデン 
 上部には,北半球北部の地球の画像があり,スウェーデン各地域が示され,各頁に誘導している。南スウェーデンのイースタッドという港町については,「イースタッドにおけるクルト・ヴァランダーの足跡」というタイトルのもと,ヘニング・マンケルの小説に登場するクルト・ヴァランダー刑事をテーマに物語が展開する。  

 「ヘニング・マンケルによって書かれたスウェーデン刑事クルト・ヴァランダーを主人公にした10冊の犯罪小説が,スウェーデン最南部の街の路地,街路,レストラン,小さな入り江にいきいきとよみがえります・・・イースタッドはポーランドやデンマークのボールハイムとの船が行き来する大きな波止場がある小さな街。旧市街の街路は,中世にまでさかのぼる雰囲気が漂っており,当時の面影を残す家屋や建物があります。ガイド付きのヴァランダーツアーでは,彼がよく食事をするセントラルホテル,花屋の角,ヴァランダーの住んでいる一画を見ることができます。また,小説の映画化の際に使われたイースタッド撮影所,ヴァランダー刑事が働いている警察,彼が大好きなハンバーガー屋やピザ店も訪れます。ただし,気をつけてくださいね。イースタッドの角ごとに殺人者が潜んでいるかも知れません。といっても,マンケルの本の中の話ですが」  

 歴史的な史実でもなく,伝説・伝承でもない。一人の推理作家の小説を軸にして,イースタッドという小さな街のイメージを構築する。グーグルの地図が上方に付いていることも臨場感を高めている。 
 「エンターテイメント産業やメディアは,人々が場所についての感じ方を形づくるのにとくに重要な役割をする」(Kotler and Gertner,2004:42)といわれるが,スウェーデンのイースタッドという港町はその実例である。 

フィンランド 
 第一画面では,女性を担いで走る男性のイラストとともに,各地の祭りの紹介をしている。「妻をかつぐコンテスト」「ケータイを投げるコンテスト」「サウナ我慢コンテスト」など,北の夏を過ごす多彩なイベントである。  
フィンランドでは,サンタクロースの故郷を,ラップランド東部のコルヴァトゥントゥリであるとしているが,「夏も忙しい」とその土地の様子を伝えている。  

「クリスマスが,サンタクロースや妖精たちにとって忙しい時期だということは誰もが知っています。でも,コルヴァントゥントゥリでは,夏にも色々とやることがあるのです。先週,サンタクロースの奥さんは,みんなを動員して,春の大掃除をしました。コルヴァントゥントゥリ(耳の山という意味です)では,みんなが大忙しでした。妖精たちは,ギフトの作業場をきれいにしました。そして,夏の衣装を戸棚から取り出したのです。サンタクロース夫人は,台所を端から端まで,ごしごしと磨きました。冬の間にネズミがかじった洋服を繕ったのです。サンタクロース本人は,自分の仕事場を掃除しました・・・サンタは,夏にやることとして砂金取りとハイキングを好んでいます。夏になると,春に生まれたトナカイの子供たちに目印をつける時期になります。昆虫たちは,サンタのトナカイ担当の妖精たちを手助けします。昆虫たちは,目印を付けるトナカイたちを集めて回るのです。サンタは,トナカイ担当の妖精たちに,トナカイの子供たちにどうやって目印を付けるのかを指示すると,荷物をリュックに詰めて,秘密にしている金の採取場所に向かいます。砂金取りと共に,サンタは手つかずのラップランドをハイキングするのが楽しみです・・・ラップランドの自然。草原の光景。高い松林。荒れ地のトウヒ。泡立ちながら流れていく川。そして湖。こうしたものが,サンタクロースが心から大切に思う自然を形づくっているのです」 
 
「事象が語りの中で因果関係で結びつけられると,物語がより物語らしくなる」(Gergen,1994=2004:256)とされる。サンタクロースの余暇とラップランドの自然が,「因果関係」として結びつけられることで,フィンランドの旅は旅行者にとってより魅力的に感じられる物語になるのである。 ]

ルーマニア 
青のバーにROMANIAの赤文字。Mの文字は山を表している。その山の向こうから黄色の太陽が顔を出し,手前には海がある。それがマークになっている。 今月の写真として,ドラキュラ伯爵のブラン城が青空の下にある。気候は北アメリカと似た気候であり,四季ははっきりとしていると説明される。ルーマニアからは,数百万人の人々がアメリカやカナダに移住した。彼らを旅行者として呼び込むために系譜調べのための旅を薦めている。  

「ルーマニアの歴史はその地理が示しているような牧歌的なものではありませんでした」  

歴史の項は,この言葉から始まる。「第二次大戦後は共産圏の国として知られています。それは主に独裁者チャウシェスクの暴政によるものです。1989年に打倒・・・1991年憲法で,ルーマニアは多党制,市場経済,言論・宗教・私的所有権の権利が許される共和国となりました」といまでは民主的な体制であることを強調する。 
トランシルバニア地方の紹介では,ドラキュラ伝説が登場する。観光のための物語は,いかなる素材であっても活用しうることを示している。 
 
「トランシルバニア地方は,地球上で最も磁場が強いということをいう人がいます。そこに住む人々は超感覚がすぐれているというのです。吸血鬼は聖ジョージの日,聖アンドリューの日には,辻辻に出現すると信じられていました。ちなみにドラキュラツアーはルーマニア中にあるんですよ」  

ルーマニアのウェブサイトでは,世界的に著名な旅行案内書のルーマニアに関する記述を引用している。ブルーガイドからは「ルーマニアになぜ,いくべきか。素直な答えは,南東ヨーロッパで最も美しい国の一つだからだ」という引用である。その他4つのガイドブックからの引用が続く。 
こうした第三者の批評を載せているのは,今回調査した50か国のウェブサイトでは,他にセルビアの例がある。
「すばらしく自然が美しい BBCワールド」「クール! オブザーバー紙」「音楽が満ちている ニューヨークタイムズ紙」など,それぞれ写真にコメントが付いており,映画評のようになっている。 

アイスランド 
イギリス向けのウェブサイトでは,「アイスランドへ行くのは難しいでしょうか。そんなことはありません。主な都市から頻繁に飛んでいます」という記述がある。「アイスランドという名前に騙されないでください。アイスランドは夏には太陽が出ていれば相当の暖かさですし,1月にも摂氏0度前後なのです」と他国とさほど違わない自然環境であることも強調する。 
「アイスランドの人々は,バイキングの時代の古い言語をいまもしゃべっていることを誇りにしています。しかし,過去に生きているのではないのです」と紹介した後に,「今日,旅行者たちは,9世紀にこの地を見いだしたバイキングと同じ理由で,アイスランドを訪れます。そう,自由への愛」と「自由」をテーマにしている。 「アイスランドあれこれ」のコーナーでは,「妖精」「小人」「幽霊」といった存在が生きていることを説明する。 
 
「現代技術が大好きなのに,同時にアイスランド人の8割は妖精の存在を信じています。いまでも,道路が迂回したり,ビル建築の計画が変更されたり,やめになったりします。というのも,妖精が住んでいると信じられている岩を壊すのを避けるためです」  

アイスランドはメルヘンが生きている国というイメージを提示している。雪と氷の国は,妖精の物語によって温もりを獲得するのである。
 
アルメニア 
アルメニア人とは何かということについて,詳しく語っている。自国のアイデンティティの核に当たる部分だからである。  

「アルメニア人たちは,『ハヤスタン』と呼ばれていた古くからの土地アルメニアに暮らし,自分たちを『ハイ』と名乗っていました。言い伝えでは,アルメニアの人々は旧約聖書のノアの息子ヤフェトの子孫であります。アララトの土地に元々暮らしていた人々であるアルメニア人は,強力なアルメニア王国の建国,アルメニアの国教としてキリスト教を取り入れたこと,アルメニアのアルファベットを生み出したこと,その結果として,文学,哲学,科学の発展をもたらしたことを自国のアイデンティティと考えています。アルメニア人の国家は,何世紀にも及ぶ外国からの侵略と占領に抵抗しながら,アルメニアの国家シンボルであり,ノアの箱船が到着したアララト山の周囲に広がるアジア側の高地に住んでいました」  

アララト山が望める土地は,アルメニアの人々にとって「意味の中心,ないしは意志と目的の焦点として理解することができる」(Relph,1976=1991:37)といった「実存空間における場所」なのである。 
その後のオスマン帝国の支配,「虐殺」などに触れた後に,ソビエト連邦の一員となり,また,その崩壊によって,独立に至った過程を語っている。 最後に,世界に1000万人といわれるアルメニア系の人々について触れ,その文化的,宗教的,歴史的絆の中心にアルメニアの土地があることが示される。 
アルメニアの例を見ると,まさしく「想像の共同体」(Andeson,1991=1997)としての国家像を思い起こされる。 

ニュージーランド 
イギリス向けとアメリカ向けのウェブサイトは,「地球で最も若い国にようこそ」というキャッチフレーズを採用している。 
「伝説によれば,この国は海の中から巨大な魚のように釣り上げられたと言われています」というコピーとともに水中から出現する氷山,山野などを動画像で見せる。 
ポリネシアからマオリがやってきたのも1000年ほど前であり,ニュージーランドは,地球上で最後に発見された,地球上で最も若い国であると結論づける。建国神話が核になって,ウェブサイトの物語が構築されている。 

コスタリカ 
「ナショナリティにとって重要なのは,人々が共通の公共文化を共有することである」(Miller,1995=2007:45)とされるが,コスタリカの語る物語は,他国のように歴史や伝統からではなく,「民主主義」と「環境問題」から発している。  

「コスタリカの主な収入源は観光です。コスタリカは民主的で平和な国。1949年以来,軍隊を持っていません。国土は狭くて,地球表面の0.03%を占めるに過ぎません。しかし,世界の現存する生物多様性の6%を保存しています。国土の25.58%は,保存と自然保護の地域で構成されています」 
 
ウェブサイトのロゴのスローガンも「人工的な含有物はありません」となっている。「冒険」「太陽と海岸」「文化」「エコツーリズム」「家族」「クルーズ」「ビジネス」「リラックス」「地方ツーリズム」「ハネムーン」といったアイコンが並ぶ。 ちなみに「家族」をクリックすると,「歴史を通して進められてきたコスタリカの民主主義と平和の原則は,家族のリクリエーションの活動や場所を生み出すことを自然に発展させてきました」というコピーがついている。
 
ドミニカ共和国 
「コロンブスによって発見されました」とその歴史を語るドミニカ共和国は,多様な項目の中でも,とくに芸術・文化・スポーツに重きを置いて物語が組み立てられている。  

「ドミニカ共和国の精神と魅力は,音楽,食べ物,国をあげての娯楽です。冬のプロバスケットボール,手作りのシガー,毎年の音楽フェスティバルで知られており,ドミニカ共和国の文化は,重くもなく,退屈でもありません。いつも芸術的で色彩に富んだ人生の表現なのです」  

観光スローガンは,「色々な色の共和国」となっている。歴史や伝統のような「大きな物語」よりも,旅行者が旅先の生活で見聞するであろう「小さな物語」を核に物語を構築しているところに特徴がある。 

エチオピア 
エチオピアのウェブサイトを見た旅行者は,第一画面に驚く。すべて紫色に塗り込められている。「太陽の輝く13ヶ月」というスローガンにも引きつけられる。 

 「エチオピアは古い。すべての想像を絶するほど古いのです・・・多くの人々がエチオピアを訪れます。そしていつの日か訪れることを望みます。なぜなら,古い歴史的な伝統が,そこには保たれているから・・・エチオピア正教会の儀式は旧約聖書の頃の正統的な世界への窓として開かれてもいるのです。他のどの国において,エチオピアのように,人々がドラマチックに変身し,古代の信仰の神聖な儀式の時代に立ち戻り,自由に参加することができるでしょうか」  

350万年前と言われる人類の祖先「ルーシー」に触れて古さを語っているコーナーもある。「現在知りうる最古の人類にさかのぼる誇るべき,長い歴史」を持つエチオピアは,「考古学的に面白い場所」であると訴求している。 

イスラエル 
イスラエルは,イギリス向けとアメリカ向けで語られるテーマが大きく異なる。イギリス向けでは,歴史についての記述が多い。「古代宗教(複数形)の哲学」「教会」「歴史感覚」といった項目もある。 
死海についても,その近くの歴史的な場所を紹介し,「死海を旅するなら崖に彫り込んだ修道院も訪れないといけません」という。「4世紀にキリスト教信者の間では,キリストと同様の禁欲生活が広がった」ために,こうした厳しい規律の修道院が生まれたことを紹介する。 イスラエルで3番目に大きい街であるハイファには「25万人が住んでいて,5つの異なった宗教を信じる人たちが,仲良く,平和に,互いに尊敬の念をもって暮らしているのです」と,ユダヤ教徒各派,キリスト教徒,イスラム,バハーイ教徒,ドルーズ派の共生の生活を語る。 エルサレムについては,「世界の3つの一神教にとっての聖地です。3000年にわたって,色々な人々,国家によって,その地を獲得するために闘われてきました。エルサレムは,イスラエルの首都であるとともに,世界の中心であるともいえます」と述べる。 
 
「あなたの宗教的な観点がどうあれ,この聖なる街を歩くたびに,世界史に多大な影響を及ぼした地であり,未来においても中心的な役割を果たすべく運命づけられた地であることを心に刻むことでしょう」  

だが,アメリカ向けのウェブサイトでは,リゾートとしての側面の方を強調する。第一画面の上部の写真は,海辺,城,平原,・・など,すべて誰かが,にこやかに笑っている画像である。キャッチフレーズは,「最初のシャローム(こんにちは)から,あなたはイスラエルが好きになる」。 
宗教については,ユダヤ教についての記述が多く,ユダヤ教の聖地が,アルファベット順に紹介される。アメリカ向けのウェブサイトでは,イギリス向けには掲載されていないホロコースト例年記念日についての叙述もある。 

3-4 日本国のウェブサイト

日本政府観光局(独立行政法人国際観光振興機構の通称)の第一画面の上部は,画像による各地の紹介である。 
2009年2月にアクセスした時は,「地獄谷温泉の猿」「上杉雪灯籠まつり」「日向水中綱引き」「京都ウィンタースペシャル」「兼六園」「岡山後楽園」と日向を除くと雪景色が占めていた。 8月にアクセスすると,「徳島阿波踊り」「宮崎堀切峠」「北海道庁赤レンガ」「岐阜小坂の滝」「島根宍道湖の夕日」「広島宮島水中花火大会」「愛媛しまなみ海道」「長崎九十九島」「鹿児島白谷雲水峡(屋久島)」「沖縄近隣離島」「秋田竿灯祭り」「岩手中尊寺」「栃木小田代ケ原」「福井県立恐竜博物館」「山口角島大橋」「三重鳥羽しろんご祭り」「香川栗林公園」「新潟妻有トリエンナーレ」「東京お台場花火」であった。いずれも,めまぐるしく写真が変わる。 この画面が象徴するように,日本のウェブサイトは,YOU型・WE型に分類されるような物語と呼ぶには,事実の列挙が中心であり,物語性は低いといわざるをえない。 先に見たように中国も,物語性は低かった。だが,歴史の長さ,巨大さ,多様性,偉大さを語るといった「価値ある終点」は明確である。  日本の場合,「世界遺産」「北海道の環境資産」「富士山見学」「日本の芸術文化」「日本の色と形」「伝統的な年中行事」「日本食」「写真ライブラリー」「ユーチューブ・ビジットジャパンチャンネル」など「事象」は充実している。だが,「物語が方向性をもったドラマ」となるための「価値ある終点」がどこにあるのかは見えてこない。 細部に入っていくと,「価値ある終点」になりうるテーマは存在する。例えば,「北海道の環境資産」の中には,「風力発電」「湿地」「バードウォッチング」「自然遺産」と並んで,「アイヌ文化を経験しよう」という項目がある。ただ,以下の記述にもあるとおり,「アイヌ文化」は,「エコロジカルな生き方」として再認識されているという指摘に止まっており,感情喚起力のある物語としては提示されない。  

「アイヌ文化を経験する アイヌ民族は,北日本の固有の民族です。・・・『アイヌ』とはアイヌ語で『人間』の意味です。アイヌの人々は,自然に対して深い畏敬の念を持っており,すべてのものに神が宿っていると信じています。存在するものは,その固有の世界からやってきており,その役目を果たすと自分の世界に帰って行くと信じています。こうした生命についての考え方,そしてライフスタイルの知恵は,いま,エコロジカルな生き方として再認識されています」  

アイヌは,あくまでも,丹頂鶴,シシャモ,ヒグマ,アイヌ犬などと並んで登場する「北海道の環境資産」の一項目という扱いなのである。 
「日本の色と形」というコーナーも,「日本の色と形は,精神と文化を運ぶメッセージなのです」という文章が付いているように,物語の核となりうる魅力のある素材である。だが,内容は,「桜」「桧」「書道」「舞子」「海」「苔」「漆」「抹茶」「染め物」「米」「日本の形」「富士山」「将棋」「文字」「城」「日本髪」「団扇」「自販機」「日本庭園」「箸」「超高層ビル」「日本の甘味」「和室」「着物」「満月」といった項目が図鑑のように列挙されることに止まっている。 
「日本の芸術と文化」というコーナーは,『家庭画報国際版』(世界文化社)のコンテンツに全面的に依存している。「祭り」「究極の禅」「温泉大好き 最高級旅館を訪ねる」「日本の聖なる中心部の森」「月」「夏の浴衣 パッフィースタイル」「秋葉原 東京の趣味天国」といった項目が並ぶ。ちなみに秋葉原は,「ショッピングガイド」のコーナーでも,銀座を抑えて最初に登場する。石丸電気,ヨドバシカメラ,ヤマギワリビナの紹介が載っている。 
全体として,日本のウェブサイトは,各国の旅行代理店の人が情報を確認するためのデータとしては活用できるが,一般の旅行者を魅了する筋書きのある物語として構成されてはいない。 ロシア政府観光局のイギリス向け第一画面は,「ビザを取ってください。到着時には取れません。旅行前に取得すること」という散文的な告知である。それに比較すれば,日本のウェブサイトは,旅を誘引する素材を前面に押し出している。だが,「価値ある終点」がどこに設定されているのかは不明である。 こうした状況は,日本の観光政策が戦前と同じ問題を抱えていることを示している。2003年設立の独立行政法人国際観光振興機構(通称 日本政府観光局)をさかのぼると,1930年設置の鉄道省国際観光局と1931年発足の財団法人国際観光協会になる。 
国際観光局と国際観光協会においても,「日本の何をどう紹介して宣伝すべきなのかが問題になった」が, 先に触れたように「日本趣味」と「日本の先進性」のどちらを強調すべきかで議論がわかれた(井上,2009:78)。結局,妥協的な方向性として,「欧米の近代文化を日本の伝統と融合させた現在の日本を宣伝すること」(井上,2009:78)に落ち着いている。 
国際観光局は,日本工房によって刊行された対外宣伝誌『NIPPON』に英文広告を載せているが,「桜と城」(1号)「松と富士山」(2号)「桜」(3号)「滝」(4号)「皇居前の洋服と和服の女性」(5号)といった写真に「東西が完全な調和の中で出会うところ−−−日本」というコピーをつけたものであった(金子,2002)。現代の日本政府観光局による「日本の色と形」と同様に「日本趣味」に寄りかかった企画である。 
日本政府観光局の日本語ウェブサイトでは,「日本政府観光局(JNTO)は2010年までに訪日外国人旅行者数を1000万人を実現します」と宣言している。ちなみに2008年の訪日外客数は,835万人である(日本政府観光局,2009)。 
2007年の世界各国・地域への外国人訪問客数では,フランス8190万人,スペイン5919万人,米国5600万人,中国5472万人,イタリア4365万人,英国3068万人,ドイツ2442万人であった(世界観光機関と各国政府観光局のデータを元に日本政府観光局作成。日本政府観光局,2009)。日本が訪日外国人旅行者数1000万人を達成したとしても,まだ自国人口の十分の一にも満たない。もし,その水準を超える旅行者を招きたいのであれば,日本をどのようにブランディングしたいのかを考える必要がある。現在のような観光素材の羅列だけでは限界がある。 
YOU型物語の洒脱な語り口をめざすにしろ,WE型物語として自国の歴史や伝統を饒舌に語っていくことにしろ,才能あるコミュニケーションの専門家に一任する体制をとらなければ,物語の構築はできない。そして,一任するためには,「日本とは何なのか」というアイデンティティについての合意形成の議論が欠かせないのである。  

引用文献/引用・参考ウェブサイト
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調査対象にした政府観光局ウェブサイトならびにそれに準ずるウェブサイト(国連のメンバー国リストの順)。後の日付はアクセスした日。
アルゼンチン http://www.turismo.gov.ar/eng/menu.htm 2009年2月15日
アルメニア http://www.armeniainfo.am/ 2009年7月11日
オーストラリア http://www.australia.com/index.aspx 2009年2月16日
ボスニア・ヘルツェゴビナ http://www.bhtourism.ba/eng/ 2009年7月11日
ブラジル http://www.braziltour.com/site/gb/home/index.php 2009年4月6日
カンボジア http://www.tourismcambodia.com/ 2009年6月30日
カナダ http://www.canada.travel/splash.en-gb.html 2009年6月28日
チリ http://www.visit-chile.org/index.php 2009年4月6日
中国 http://www.cnto.org/aboutchina.asp 2009年2月19日
コスタリカ http://www.microsites.visitcostarica.com/ 2009年7月12日
クロアチア http://www.croatia.hr/English/Home/Naslovna.aspx 2009年4月6日
キプロス http://www.visitcyprus.com/wps/portal 2009年7月12日
チェコ http://www.czechtourism.com/eng/uk/docs/holiday-tips/news/index.html 2009年7月11日
デンマーク イギリス向けhttp://www.visitdenmark.com/uk/en-gb/menu/turist/turistforside.htm 2009年7月11日アメリカ向けhttp://www.visitdenmark.com/usa/en-us/menu/turist/turistforside.htm 2009年7月11日
ドミニカ国 http://www.dominica.dm/site/index.cfm 2009年7月12日
ドミニカ共和国 http://www.godominicanrepublic.com/ 2009年7月12日
エジプト http://www.egypt.travel/index.php?country=GB&lang=EN 2009年6月30日
エチオピア http://www.tourismethiopia.org/ 2009年7月12日
フィンランド http://www.visitfinland.com/w5/index.nsf/(pages)/index 2009年6月30日
フランス イギリス向け http://uk.franceguide.com/ 2009年2月3日  アメリカ向け http://us.franceguide.com/ 2009年2月3日 
ドイツ イギリス向けhttp://www.germany-tourism.co.uk/ 2009年2月11日 アメリカ向け http://www.cometogermany.com/ 2009年2月11日
ガーナ http://www.touringghana.com/ 2009年7月12日
ハンガリー http://www.hungarytourism.hu/ 2009年7月12日
アイスランド イギリス向けhttp://www.visiticeland.com/displayer.asp?cat_id=481 2009年6月30日
インド http://www.incredibleindia.org/ 2009年2月27日
イスラエル イギリス向けhttp://www.goisrael.com/Tourism_Euk 2009年3月4日アメリカ向けhttp://www.goisrael.com/Tourism_Eng 2009年3月4日
イタリア イギリス向け http://www.enit.it/default.asp?Lang=UK 2009年2月10日 アメリカ向けhttp://www.italiantourism.com/ 2009年2月10日
日本 http://www.jnto.go.jp/eng/ 2009年2月22日
リヒテンシュタインhttp://www.tourismus.li/en/welcome.cfm 2009年7月12日
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ルーマニア http://www.romaniatourism.com/ 2009年6月30日
ロシア イギリス向けhttp://www.visitrussia.org.uk/ 2009年2月16日アメリカ向けhttp://www.russia-travel.com/ 2009年2月16日
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シンガポールhttp://app.stb.gov.sg/asp/index.asp? 2009年7月12日
南アフリカhttp://www.southafrica.net/sat/content/en/jp/home 2009年6月30日
スペインhttp://www.southafrica.net/sat/content/en/jp/home 2009年2月27日
スウェーデンhttp://www.visitsweden.com/sweden/ 2009年6月30日
スイスhttp://www.myswitzerland.com/en.cfm/home 2009年6月30日
タイhttp://www.tourismthailand.org/ 2009年6月30日
トルコhttp://www.tourismturkey.org/ 2009年3月1日
イギリス アメリカ向け http://www.visitbritain / 2009年7月10日北欧向け http://www.visitbritain.no/en/ 2009年7月10日カナダ向けhttp://www.visitbritain.ca/ 2009年7月10日 ニュージーランド向けhttp://www.visitbritain.co.nz/ 2009年7月10日
アメリカ合衆国 イギリス向けhttp://www.discoveramerica.com/uk/ 2009年7月12日
ベトナム http://www.vietnamtourism.com/e_pages/news/index.asp 2009年7月1日  

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