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長寿時代の生涯モデル             -----生き方柔軟、何度も挑戦

20世紀末に「3万日の大冒険」という生涯モデルを提唱した。当時、平均寿命は男性77・72歳、女性84・60歳。それから20年余、75歳以上の後期高齢者は2005万人、その10人に1人は就業中である。100歳以上の人も9万人を超えた。長寿化を踏まえるなら、「3万5千日の大冒険」と改訂した方が良さそうだ(図参照)。
 旧生涯モデル(3万日)では、第1ステージを「学習期 7千5百日(0〜20歳)」、第2ステージを「労働期 1万5千日(20〜61歳)」、第3ステージを「隠退期 7千5百日〜(61歳〜)」とした。新生涯モデル(3万5千日)では、第1ステージの「学習期」を最長27歳迄の約1万日と想定した。大学院、留学など、「学習期」の充実が求められるからだ。高校生の起業など「学習期」「労働期」を並行させる人も増える。
「学習期」の後は、長寿化を踏まえて「労働期A」「労働期B」と2つのステージに分けた。それぞれ約1万日で、55歳頃に第2の職に転ずる。「労働期A」で退職し「隠退期」を長く楽しむ人もいる。「労働期B」を機に移住をして地域に貢献をすることも増える。仮想空間内のアバター(分身)が、副業で活躍する場合も多いだろう。「労働期A」で非正規雇用者だった人が、「学び直し」により「労働期B」では正規雇用者として1万日を働ける施策も必要だ。
新生涯モデルでは、「誰と生きていくか」が重要になる。2040年には、全国の一般世帯の4割近くが単独世帯(国立社会保障・人口問題研究所)。既に東京都内では、「一人暮らし」が多数派だ。血縁のない他人と共同生活をする人が多くなり、ロボットと暮らす人もいる。新生涯モデルでは、地方や海外への移住、仮想空間の滞在など、「居場所」も多様になる。
「3万5千日の大冒険」という長寿時代の生涯モデルでは、生き方は柔軟になり、何度も挑戦を続ける姿が見えてくる。人口は減っても、個人が複数の役割をこなす社会像である。生涯モデルを想定すると、近未来に求められる価値創造を、現実感を伴って議論できる。(発想コンサルタント)

2023.11.24 日経産業新聞「関沢英彦の目」より

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