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現場の「学び直し」よりも         幹部の「問い直し」の方が先だ。      今こそ、トップはリシンキングを!

 技術革新の速度が早く、企業に必要なスキルと、働く人のスキルの差が広がった。ギャップを減らすために「リスキリング(学び直し)」が進む。この種のギャップは、政府・企業・個人の取り組みで改善されていくだろう。
 だが、もう一つの深刻なスキルギャップがある。従業員にスキルの向上を求める当の企業幹部のスキルが、時代変化に取り残されている。経営層の重要なスキルとは、ビジョンを示すこと。現実には、企業の内部留保は積み上がっても新しい挑戦に乏しい。
 現場で働く人が「リスキリング」で能力の幅を広げると共に、経営層は「リシンキング(問い直し)」で自社が提供しうるものを再考すべきだ(図参照)。学び直しでは「HOW(技能)」の開拓と修得によって、新しい「WHAT(業務・事業)」を目指す。問い直しでは、なぜ企業が存在するかという「WHY(価値)」を改めて問うことで、創出すべき「WHAT」を導く。学び直しと問い直しの相互作用で「HOW」「WHAT」「WHY」の3要素を刷新することが急務である。
不動産会社のトップが「リシンキング」により、自社の価値を「オフィス需要への対応」から「入居者の健康な職場生活」に変えたとする。新事業の開発に医療関係との連携が視野に入る。旅行会社の価値を「旅の楽しさの充実」から「リアル空間だけでない経験の提供」に変更すれば、仮想現実による過去・未来・幻想の旅を企画できる。
 「リスキリング」で従業員の能力が向上しても、組織が旧態依然では転職してしまう。経営層の「リシンキング」によって価値を再創造してこそ、働く人の努力も報われる。「学ぶ力」と「問う力」は、一対のものだ。問うことで、学ぶべき方向が見える。学ぶことは、次の問いに出会うためでもある。
 「HOW」「WHAT」と異なり、「WHY」は生成AI(人工知能)に頼れない。「リスキリング」に傾注するだけでは、先進企業の後追いに終わる。「リシンキング」によって、自社の価値を問い直す覇気こそが求められる。(発想コンサルタント)
 
 

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