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日本が変わるために、想像力と論理力を循環させよう

 この欄では、終始、想像力の大切さを訴えてきた。コンテンツ産業の活況を見ると、世の中には想像力が満ちているように思えるが、現実の生活では、想像力は軽視されている。想像力とは、目の前に無い物事を思い描く力。一方、論理力は、筋道をつけて、要素を矛盾なく組み立てる力である。論理力が弱ければ何事も前に進まない。だが、想像力が働かない社会では、独自のイノベーションが起こらない。論理力と想像力は補完的である(図参照)。思い浮かべたイメージを論理で詰める。次には細部を想像して具体案を論理づける。思考とは、論理力と想像力の循環だ。
論理力は教育現場で重視されてきた。最近では、プログラミング教育が必修となり、デジタル技術を使いこなす論理力を学んでいる。想像力の重要性も、教科によっては理解されているが、デザイン思考やアート思考など、ビジネスの場で導入が進むイメージ発想法を教える教育は数少ない。
日本では、3つの「主義」が想像力を抑圧している。科学技術・社会デザイン・商品開発では、「前例主義」が想像力を封じる。「前例がない」からと創造的なプランを退けてしまう。「延長主義」は、災害や安全保障などの危機を予測する際に見られる。過去から現在に至る流れの延長線上に、危機を想定し、延長線から外れる事態を想像しない。その結果、論理的には起きないはずの「想定外」が頻発する。人間心理については「外面主義」という問題がある。他者の「外面」だけを見て「内面」を想像しない。相手の好意に気づかないと恋愛も始まらないし、逆に嫌悪に鈍感だとストーカーと誤解される。ハラスメントも相手の感情や苦悩への想像力が乏しいから多発する。
「前例」を突破する想像力、「延長」から外れる想像力、「外面」だけに捉われない想像力によって論理力は活きる。アニメの花開く国なのだから、社会にも想像力が躍動していいはずだ。想像力によってビジョンを描く。論理力で現実化への道を拓く。日本を変えるのは、循環する思考である。(発想コンサルタント)

日経産業新聞2024.3.15 「関沢英彦の目」
 
 

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