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小学生の頃、住んでいた街

幼い頃から、ずっと同じところに住んでいる友人が言っていた。「ご近所さんの顔ぶれが、昔と変わらない。一緒に小学校に通った仲間が、みんないい年になって、『お早うございます』なんて挨拶をしている。何だか不思議な感じ」と。

庭の若木が大樹に育っていく。引っ越しをしない人は、移りゆく時間をご近所と共に過ごしている。親が転勤族で、引っ越しの多かった身には、うらやましくもある。

でもね、子供心に「今度の家は、どんなところだろう」と想像するのは楽しかった。転居はしたが、電車で同じ学校に通ったから寂しくなかった。だから、気楽だったのだろう。

久しぶりに小学校を訪れると、校庭が小さくなったように思える。私たちの体が大きくなったから? あるいは、私たちの生きる世界が広がったから? 走り回っていた広い校庭が、小さな庭に見えてくる。

住めば都89-2

いざというときに助け合えるコミュニティ。その大切さが見直されている。コミュニティと言われると、縁遠い感じがする。でも、「小学校の時の学区をイメージして」と言われると、親近感も湧いてくる。とくに都会では、小学校の通学区域は、住んでいる人々の心が通い合う「ちょうどいい大きさ」に当たるのだろう。

住めば都も遷都する。あなたの住まいの近くに、幼稚園や小学校はあるだろうか。にぎやかな子どもたちの声がする街は、時には騒がしいけれど、活気があって気持ちが明るくなる。過去から現在、未来へと続いていくものを感じられる。

関沢英彦(文・イラスト)
発想コンサルタント。東京経済大学名誉教授。コピーライターをへて、生活系シンクタンクの立ち上げから所長へ。著書に『女と夜と死の広告学』(晃洋書房)『いまどきネットだけじゃ、隣と同じ!「調べる力」』(明日香出版社)『偶然ベタの若者たち』(亜紀書房)他。論文に「記号としての心臓 なぜ、血液のポンプが、愛の象徴になったのか」「映画に描かれた『料理』と『食事』の4類型」「月の絵本 無生物とのコミュニケーションを描いたナラティブ」(いずれも『コミュニケーション科学』)他。




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