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31 農耕型・狩猟型・船長型で考える

「どこでアイデアをまとめますか」と聞かれたとき、かつては、「書斎にこもって考える」という人が多かったと思います。やがて、考える場所は、書斎からパソコンの置いてある場所に移りました。スマホになると、カフェや電車の中でもいいわけです。
 知的作業は、静的よりも、動的なイメージになりました。考えることが、分析し、批評するよりも、社会を設計し、創造する方向に重心を移したことも関係します。
 そんな時代、じっくりと考えを育てるというよりも、走り回りながら、現時点で考えを発信することが求められるようになりました。スマホや、ノートパソコンを持って動いていれば電車の中も街のカフェも、思考空間。軽いフットワークで考えることが求められます。
 書斎・図書館・オフィスのデスク前で、考えが熟していくという農耕型の思考から、移動しながら考える狩猟型の思考へと、私たちはすでに変化したようです。フットワークを効かせる。場所を動かしながら、考える。その良さは、考えがはずんで、鮮度が良くなります。反面、「長持ち」する思考というわけにはいきません。つねに短期決戦を求められるのです。
 ネットのコラムや書店の平積みの本では、すばやく立ち回る狩猟者のような人たちが活躍しています。ただ、一読、鋭いとは思っても、1か月もたてば、状況とずれてしまう。小さい波を追いかけるよりも、もう少し長い波で見ていく方が役立つのかも知れません。最近、歴史やリベラルアーツの本が注目されるのは、そのためでしょう。大地を踏みしめながら、「観天望気(空や生き物を観察しながら天気を予測すること )」をしている農耕型の思考のたくましさに改めて気づいたともいえます。
 そうそう、時代の動きが激しくなった中では、以上の思考法に加えて、大航海時代の船長のような思考も求められるでしょう。船長型思考も「観天望気」をする点では、農耕型と同じ。まわりの環境を視野に収めている。もちろん、狩猟型思考も、今日は「獲物」が現れるかどうか、周囲に目を配りますが、いったん目の前に「獲物」が来ると、それを追いかけることだけに集中して、まわりを見るゆとりがありません。それが狩猟型の強さであり、弱さでしょうか。
 ついでですが、農耕型・狩猟型・船長型の思考は、考えている当人の顔つきも変えます。著名な人や周囲の人を思い浮かべて下さい。何となく、3タイプの顔がありますよね。


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