TEPPEI RECOMMEND 2024 3/3~3/9

いまオススメのロックをテキストと共にお届けするTEPPEI RECOMMEND。今週は7曲紹介します。先週から引き続き、というか3月の間は同じプレイリストでいくので3曲目からの紹介という形になります。ああそう、曲にはYouTubeのリンクを貼っときます。Spotifyで聴けない人はそちらをチェックしてください。ではまいりましょう。

3曲目はThe Libertines(リバティーンズ)の『Oh Shit』。はい、大好きなリバティーンズの新曲。この曲は3月29日にリリースされる4thアルバムに収録される。この曲を初めて聴いたとき、ビリージョエルの『We Didn't Start the Fire』かと思った。そのくらい出だしがポップで、これまでのリバティーンズにはなかったタイプの曲。それで探してみた。こんな曲あったっけと思って。したらまあ近いのとしては、ポールウェラーの影響があらわれているカールの曲、しかもリバティーンズじゃなくてダーティープリティシングズの曲(セカンドのシングル『Tired Of England』とか)かもしれない(それでもかなり遠いのだけど)。円熟味を感じさせる曲。ファーストシングルである『RUN RUN RUN』の段階で感じていたけれど、ファースト以来10代20代の激情を表現し続けてきたバンドが方向を大きく変える、四枚目はそういうアルバムになりそう。ちょっとガッカリだけど楽しみでもある。興味があるといった方が正確か、リバティーンズがどんな枯れ方を見せてくれるのか。これからも追い続けますよ!

4曲目はAlfie Templemanの『Radiosoul』。Alfie Templemanはこちらの記事でも紹介した通り、アメリカはカールトン出身の21歳のシンガーソングライター。ファーストシングルである『Eye Wide Shut』に続いてこちらも素晴らしい。最初聴いたときめっちゃプリンスじゃん!と思ったのだけど、『Eye Wide Shut』を聞き返してみるとこれもプリンスだった。で、調べてたら楽曲製作中プリンスとトーキングヘッズを聴きまくってたらしい(そう言われると『Eye Wide Shut』はかなりトーキングヘッズ味もある)。そりゃそうなるわ。ただ当然だけど、プリンスとトーキングヘッズを聴いて誰でもその2つを合体させたような曲がかけるわけではないし、ましてやそこに自分の色を刷り込むなんてウルトラCができるわけではない。やはり恐るべしな21歳なのであった。

5曲目はKrooked Kingsの『Memory Loss』。Krooked Kingsはアメリカはソルトレイクシティの4人組インディーポップバンド。自分はこの曲で初めて知ったのだけど、Spotifyの再生回数(それがどれほどあてになるのか分かりませんが)を見るとすでにかなりの人気バンドみたい。去年出たアルバム『All Out of Good Time』がかなりのヒットを飛ばしている模様。特に『Lying Through Their Teeth』が人気のよう。聴いてみたらポップなストロークスって感じ(BPM的にも『Someday』に繋げそう)。そこで今回紹介の『Memory Loss』だけど、基本的には『Lying Through Their Teeth』と同じ調子。なんだけど、『Lying Through Their Teeth』と違って全体に憂いがある。ゆえにスミスの『This Charming Man』っぽさを感じる。いずれにしても好きなタイプ。これからも要チェックですね。

6曲目はThe Rhythm Methodの『Dean Martin』。The Rhythm Methodはジョーイ・ブラッドベリとローワン・マーティンからなるロンドンのポップデュオ。この曲は昨日リリースされたばかりの彼らのセカンドアルバム『Peachy』に収録されている。曲の出だしは暗い感じ。だから重苦しい曲なのかと思って聴いていると明るくなって、また暗くなって再度明るくなる。こういうソングライティングは素晴らしいと思う。ロックやポップの曲って3分程度のもので、一つの感情(怒りとか喜びとか)で塗りつぶされてしまいがちだから余計にそう思う。ジョーイ・ブラッドベリさんとローワン・マーティンさん、全然存じないのだけど凄い人たちなのでしょうね。

7曲目と8曲目はロンドンの4人組バンド、C TURTLEから『Melvin Said This』と『Shake It Down』。この2曲は昨日リリースされた彼らのセカンドアルバム『Expensive Thrills』に収録されている。ゆったりとした曲ばかりのこのアルバムで、この2曲だけがわかりやすいガレージロック(と言い切っていいのか迷うのだけど、全体としてはやっぱりそうかも)。『Melvin Said This』は初めて耳にしたときビックリした。マイブラの『you made me realise』が鳴り始めたものだからそりゃあ驚く(それから笑ってしまった)。だけどこの曲はそれだけで終わらない。驚きの冒頭に続いてヴァセリンズのような瑞々しいギターポップ(例えば『Son Of A Gun』とか)が鳴りだして、それからまたマイブラに戻る。マイブラとヴァセリンズのサンドイッチ状態。これは聴いたことがない(けど、やられてみるとなるほどと思う)。アイディアの勝利。楽しい。『Shake It Down』もコントラストが面白い曲。まず冒頭部分の“静”とサビの“動”に対比がある。さらにサビの部分の中でも男(ごめん調べたけど名前がわからん)が「Shake It Down」と叫べば、女が「Shake It Down」と柔らかく受けるという対比があって、退屈しない。そんな風に意図して理詰めで曲を作っているのか、直感でそうなったのか(でもアルバムの感じからしてアート意識が高そうなんだよな)、なんにしても興味深いバンド。追っていきたい。

今週の最後、9曲目はgirl in red(ガール・イン・レッド)の『DOING IT AGAIN BABY』。今年のフジロックへの出演も決まっているガール・イン・レッドこと(girl in redはプロジェクト名らしいのだけど、こういうとき『こと』と使っていいのかはよくわからん)、マリー・ウルヴェン・リングハイ。彼女は面白い。2018年に『i wanna be your girlfriend』でデヴューした当時は心地よいドリーミーなインディーギターポップだったのが、2021年のアルバム『if i could make it go quiet』から(正確にはそれに先立つシングルから)ぐぐっとメジャー感を出してきた(『Serotonin』はエレポップだしラップまでしてる。『You Stupid Bitch』は大文字のROCKですよ)。ただそれで完全にシフトチェンジしたのかというとそういうこともないらしく、2022年のシングル『October Passed Me By』や今年の2月にリリースしたシングル『Too Much』では初期のインディー感を残しつつもエレクトロサウンドを取り入れた、いわばインディーとメジャーを折衷したようなバランス感覚を提示している。で、今回の『DOING IT AGAIN BABY』はどうかというと、これは完全にメジャーなのであった。しかもカサビアンの新作と言われても騙されてしまいそうな怪しげな雰囲気漂うロック! 本当に器用というか、バランス感覚に優れた人ですね、マリー・ウルヴェン・リングハイさんは。これからも目が離せません。

ということで曲紹介が終わった。今回は7曲ということでかなり大変だったので雑感は少しだけ。

【今週の雑感】
すでにXやインスタで告知しまくってるので目にしている人が多いと思いますが、5月11日土曜日に渋谷の頭バーでBURN OUTというロックDJパーティーをやります。最新のインディーからクラシックまで幅広くながれるので、ロックが好きだという人は是非遊びに来てください。最近のインディーロックは結構聴いてたけど、それが昔の曲とどう繋がるのか知りたいとか、昔で止まっちゃってるけど最近のも知りたいなとか、そういう人、あなたのためのパーティーです。もちろん年がら年中DJパーティーに遊びに行きまくってるパーティージャンキーも大歓迎。前にnoteでも書いたのだけど、BURN OUTは客とのコミュニケーションを大切にしたいと考えていて、告知とかには書いてないけど、今回は実験的にリクエストを受け付けます(各机にリクエストカードとボールペンを設置します)。リクエストを受けながら自分の色を出す、しかも踊らせるというのはDJの難易度としてはかなり高く、どこまでちゃんとできるのか、正にやってみないとわからない実験ではありますが、上手く答えてくれたすげぇとか、なんだ今の、ジュークボックスみたくただ流してるだけじゃんとか、そういう部分も楽しんでもらえれば。
さて告知がすんだところで本題ですが、今週はなにがあったかな? ああそうか、昨日HighSchoolの来日公演に行きました(といっても下北沢THREEでの開催なので、池ノ上に家がある自分は5分くらい歩けば着いてしまうのだけど)。24時(オールナイト公演だった)ぴったりくらいに行ったら、えらい人が並んでてビビりました。あんまりライブ行かないし、さらに下北沢THREEにもBASEMENT BARにもちょこちょこ行く程度なのだけど、これまで見たことがないほどの人でしたね。まあそれもそのはず、期待のインディーアーティストの来日公演が下北沢THREEみたいに小さな箱で堪能できる、しかもチケット代がたったの3000円とか、行かない手はないわけだから。ライブは楽しかったです。下北沢THREEではハートランドの大瓶を900円で売ってるのだけど、それを片手にちょびちょび飲みながら最前列の真ん中で好きな曲を聴くんだからよくないわけがない。ただドラムがいなくて、ベースの人(名前がわからない)がタイミングよくリズムマシーンのボタンを押すスタイルだったには驚いたし、その動作がコミカルに思えてしまって正直残念な感じがした(ドラムは入れた方がいいと思います)。デヴューアルバムも出していないような外国のバンドを観るのは久々だったのだけど、客の熱狂とバンドの意気込み、気合(空回り感も含め)が醸し出す雰囲気、緊張しながらも互いに手を伸ばしあうような独特の感覚があって、2003年に新宿リキッドルームでリバティーンズを観たときのことがちょっと頭をよぎった。裸の上半身に黒の革ジャンを着たボーカルを見ててカールバラーを連想したり(いや、全然似てないんだけどね、カールの方が百万倍男前だし)。ハイポジションにさげたジャガーを弾くんだけど拙さがみられて、ああこの人はテクニックもないしアイディア一発でここまできたんだなって思ったら、正統なロックスターを前にしている気がして居住まいを正されるというか、来てよかったなあと改めて思いました。
昨日はHighSchoolと日本のバンドbedの対バンで、bedも、というかライブとしての完成度というか、演奏はbedの方が素晴らしかった。すでに長くなってるので細々とは書かないけど、四つ打ってる乗りやすい曲では客とバンドのテンションがカッチリと噛み合っていた。だけどハードコアパンクの曲(『130』)ではバンドが発している狂熱に客がついていけていない(ポカンと見てる)感じがあって、それは自分がDJで『130』(最高だと思うんだ)をかけたいと思いつつも気が引けてしまう問題ともリンクするので、う~んという感じ。
あとなんか書き忘れたような。おおThe BRIT Awards 2024がありましたね。グラミー賞はほぼスルーの自分ですが、ブリットアワードはチェックしています。といってもArtist Of The Yearとか主だった賞の方は最近ポップ勢ばかりがとるので(それでもBlurとYoung Fathersは頑張ってた)、ちゃんと見てるのはBrit Award for British Rock/Alternative Act。去年はThe 1975で、今年はBring Me The Horizonでした。他にノミネートしたバンド(Blur、The Rolling Stones、Young Fathers、Yussef Dayes)を見ると新世代メタルバンド(ジャンル的にはなんなのだろう?)の勢いを感じます。サマソニにも出演が決まってるし、関係者の方もガッツポーズしていることでしょう。
結局今週も長くなった。最後までお付き合いいただいた方ありがとうございました。

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