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50の手習い(EWI奮闘記)~Ⅸ.1年やってみて(完結)

 さて、EWIを手にしたあたりのところから始めて、初めての人前での演奏までを長々と書き綴ってきましたが、このあたりでいったん一区切りにしようかなぁという思いでいます。EWIを始めておよそ1年になり、人前での演奏も経験し、次の目標を探しているところであるわけなんですが、別に燃え尽き症候群になっているわけではありません。まだまだEWIを上達したいという思いは衰えませんし、毎日寝る前の練習は欠かしていません。あれ?私ってこんなに笛を吹くのが好きだったの?っていう感じで、もっと早く始めていればよかったという思いもありますが、手にした時がそのタイミングだったと思うことにしています。

 次の目標はまだはっきりしていませんが、やっぱり人前で演奏できる機会があるならやってみたいという思いはあります。10月に人前でやってみて、自分の腕前が上がったなぁという実感は確かにあります。そのあとも何曲かレパートリーを増やしているんですが、新たにやろうとする曲を最初から最後まで完奏できるようになるまでの所要時間がはるかに短くなってきました。表現はまだまだ拙いですが、ベンドなりなんなり、さらなるレベルアップをしたいところです。

 今悩んでいるのは運指方法です。悩んだ末に今のところはEWI運指にしているんですが、曲によってはE♭やB♭の楽器でやった方がいい曲も増えてきました。アルトサックスならE♭、ソプラノサックスならB♭にするわけですけれど(テナーやバリトンの音色は使ってないです)、別に変調させなくてもそれぞれの楽器の音は出ます。ただプロの方いわく、やはりそれぞれの楽器にチューニングさせた方が音がいいそうで、私もそれに倣うことにしました。幸い譜面を作っているMusescoreは移調が楽にできますので、譜面上の不都合は特に感じません。まぁ、♭や#が少ない方がやりやすいことは確かなんですが、E♭やB♭用のスコアにすることで逆にやりやすくなる場合もあるわけでして、それは曲との相談ですね。

 ところで、 ここまでEWIをやってきて、EWI以外にもそろえたものがいくつかありますので、私のようにある程度年齢がいってからEWIを始めようとする方々の参考になればと思い、ここでご紹介させていただきます。

1.オーディオインターフェース
 これはDTMや配信には不可欠のデバイスです。本当にピンからキリまであって、高いものだと二桁万円するものもありますが、通常売れているのは1万円前後のもののようです。ただ私はちょっと欲張りなこともあって、ミキサー機能もあったほうがいいかなぁなんて思ったこともあって、「ド定番」ともいえるYAMAHAのAG06を使っています。今はマイナーチェンジ版で「AG06 MK2」というものが出ているはずです。

 これにした理由は、ライブの時にミキサーとしても使えるんじゃないか、という下心があったからです。それは実際人前で演奏したときにミキサーとして使用しましたから実証済みです。ただやはりオーディオインターフェースですので、本来の使用の仕方とはちょっと違います。

 アウトプットが標準プラグなのと、コンポジット入力もできるところはポイントが高いです。その代わり、ミキサーにあるようなエフェクトはかけられません。無いこともないのですが(1chと2chにコンプやアンプシミュレーターがあります)、ちょっと感覚が違います。

 とはいえ、初心者の私にはちょっと欲張りな機械でしたね。ここまで高機能なのは宝の持ち腐れでした。ですが、「LOOPBACK」は、PCからの音をもらって入力したもの(私の場合は EWI)と混ぜてヘッドフォンで聴けるというのは重宝しています。Cubaseで録音するところまではいかなくとも、音を流しながらそれにEWIを合わせて練習するというやり方でよく使います。

YAMAHA AG06(現在はこのアップデート版のMK2が販売されています)


2.ワイヤレスシステム
 EWI5000からワイヤレスシステムが内臓されているわけなんですが、送信側はいいとして受信側はどうしても電源を必要とします。ファンタム電源で動くわけでも充電式というわけでもありません。PCにつなげばオーディオインターフェースの役割もしてくれるわけなんですが、直接アンプにつなぐような使い方の時は確実にコンセントを必要とします。
 動画サイトを見ていたら、「EWI5000の先端に何かつけているなぁ」という人がいて、思い切って直接質問してみたら、BOSSのワイヤレスシステムを使用しているとのこと。これはいいやと思って私も買ってみることにしました。

BOSS WL-20L(末尾にLが無いものもありますが、Lがある方を薦められました)

ギターやベースにも使えますし、おまけに充電式。結構応用がきくなぁと思って買ったわけなんですが、一つ難点があります。「かなり音が変わる」ということです。レイテンシー(音の遅延)は問題ないのですが、音のキャラが結構変わります。私はそんなに耳が良い方ではないんですけど、それでもどうも音が硬質になる感じがします。ちなみに、EWIはステレオ出力ですから、送信側はいいとして、受信側、つまりアンプやミキサーにつなぐ側はステレオだとどうしても音が痩せます。その辺をどうクリアするべきなのか、いまだに答えが出ていません。変換コネクターをつかって左右に分岐させる必要があるかなぁと思っています。人前でやった時はこれで押し切ったというか私が妥協したというかそんな感じでしたが、結局のところせっかく買ったのに家で練習するときはEWIとオーディオインターフェースを有線でつないでしまっています(つまり使っていない、ということ)。あと、EWIの息を抜く穴からの唾液で濡れちゃうこともちょっとね(苦笑)

3.アンプ
 EWIをはじめとするデジタル楽器の良さは、ヘッドフォンで完結できるというところにあります。ただたまにはヘッドフォンでないもので聴きたいなぁということってありませんか? 家族がいない時とかに音量はそれほど上げなくてもヘッドフォンやイヤフォン以外で聴く、つまり耳に何も当てたり入れたりしない状態で聴くということです。そのためにはアンプが必要なわけなんですが、これがちょっと問題です。

 我が家にはBLUETOOTHのスピーカーがあって、それにはAUX端子があるわけなんですが、それにつなぐとどうも音が細いというか、ものすごくボリュームを上げてもか細い音が出る程度なんです。思ったような反応ではない、と言った方がいいもしれません。結果的に強く吹き込むことになり、息苦しさ、抵抗感が増します。これはEWIのヘッドフォン端子から直接つないでもオーディオインターフェースを介してつないでもたいして変わりません。私は技術屋さんじゃないもんで、その原因がわかりません(わかる方がいらしたらぜひ教えていただきたい)。

 じゃぁどうするかっていうと、キーボードアンプがいいことはわかっています。ギターアンプやベースアンプだと、それぞれキャラが出てしまい、音が出せないわけじゃありませんけど、あまりお勧めではありません(実際楽器屋さんで試してみましたが、ほんとそう思います)。でもキーボードアンプって、家庭で買うような値段や大きさではないことが多く、そうなるとオーディオインターフェースにモニタースピーカーをつけるしかありません。ただこのモニタースピーカーっていうのも結構なお値段がします。さぁてどうしたもんかと思っていた時に目に留まったのがこれ。

RolandのMOBILE CUBE

これは出力はそれほどでもないのに結構音が出ると評判で、ギターやマイクをつないでストリートライブをする人が結構いるということでしたし、楽器の種類でチャンネルを変えるようにするつまみもあるということでしたので、一気にこれに興味がわきました。実際ウィンドシンセで使っていると言う人のレビューも見かけました。某オークションサイトで見ると割と人気があるようで、私も何度か競り負けましたが、何度かトライするうちに希望通りの安い値段でゲット。ちょっと冒険でしたが、つないでみたらリニアに音が出て、思った通りの使い心地でした。これはウィンドシンセをやる人にはかなりお勧めかもしれないですね。2キロ程度ですからそれほど重くもないし、乾電池でも駆動します。AUX端子の音量調整できないのがちょっと難点ですが、デバイス側で音量調節すればいいだけのことなので、それほど問題ではありません。Rolandさん、廃盤にしないでくださいね。

4.ミキサー
 私のようにオーディオインターフェースでミキサーの機能もあるのであればそれで問題ないわけなんですが、YAMAHA AG06がちょっと重いのとやや高価(3万円超)なので、それ単体をミキサーとして使うのはちょっと贅沢な気もします。壊したら大変というのもあるわけなんですが、それならミキサーを買えばいいかなぁということになりました。

 当初は安価でいいものがウリのベリンガーも考えたんですが、やはり某オークションサイトを見ていたら、中古であっても結構良いものがあるじゃないですか。それにミキサーならヤマハっていう先入観もあって、試しに入札してみたらあっさり落札できてしまったのがこれ。

YAMAHA MG06X

AG06と比べて何が違うのって、オーディオインターフェースにはならないってこと(当たり前!)と、アウトプットでXLR端子があるということ、コンポジット入力がMG06Xにはないこと、などがざっと見てわかりますが、カラオケをPCを特に使わずとも用意できてしまうと言う人ならこちらの方がいいかもしれないです。AG06より軽いですし。

 難点は特にないのですが、敢えて挙げれば、こちらにはエフェクトがあることですね。リバーブをかけちゃうと、妙に上手くなった気になれます。やばいです、T-SQUAREの「Twilight in Upper West」を吹いていたら、自分の演奏でジーンときてしまいました。これはイカン!

 とあるプロの方が「カラオケボックスでサックスの練習をすると、反響のせいかうまくなったような気になってしまう」とおっしゃってましたけど、なんだかわかるような気がします。なので私はこれを使うときは、リバーブはかけないようにして使っています。ただこれにカラオケの入ったスマホをつけようと思ったら、コンポジット入力は無いので、変換コード(ミニプラグから標準プラグの赤と白に分かれているもの、など)が必要になることを覚えておきましょう。

5.その他
 それ以外となるとあとは細々としたものになります。先ほども言いましたが、私は普段の練習ではEWIを有線でつないでいるわけですが、そのケーブルというかシールドというかは、2メートルのものを用意しました(標準プラグでステレオOUTになり、赤と白の標準プラグで左右に分岐できるもの)。オーディオ用で十分なんですが、それでも2~3千円くらいはかかります。

 ケーブルの類はいろいろ持っておいた方がいいです。例えば、ミニプラグのステレオケーブルで長いやつ、標準プラグとミニプラグの変換プラグ、スマホをオーディオインターフェースにつなぐためのコンポジットになったケーブル、マイクロUSBのケーブルのちょっと長めのやつ、などでしょうか。ギターやベースとは違うので、シールドに何千円もかける必要はないと思うのですが、それでもあまり安価だと音に影響は出るかもしれないです。

 譜面台だとかEWIのスタンドだとかは、こういうのを始める場合のイロハのイだとして、あとはDAWソフトとしてCubaseを用意しました。最初はバンドル版のAIを使っていましたが、音色数がちょっと心もとないなぁと思うようになってきたので、最近Cubase 12のElementを買いました。一年間バンドル版のCubase 11 AIで少しずつ操作を覚えつつあるので、AIでも相当いろんなことはできますが、ステップアップしてもいいかなぁと思って一つ上に上げました。その結果、付属する音源の数は比較にならないほど増えました。DAWを使ってMIDI編集などをしないのであればこの辺りは不要ですね。

 ストラップに関しては、最初は付属のものを使っていましたが、これは結局外れやすく、ハードオフをぶらついていた時に格安のBirdストラップを見つけたのでそれにしました。革のものなので洗えないために、汗のシミがついてしまうのが難点です。冬は襟のついた服を着ているのでいいのですが、夏場はTシャツなどを着るとどうしても素肌に革の部分が当たるので、どうしても汗が染みこみます。そのため、革の部分にクッキングペーパーを巻くという情けない姿で夏場は練習してました。最近ではウィンドシンセ専用ストラップも出たみたいですが、それはもう少ししたら考えてみようかと思っています。


 さて、ここまで長きにわたり「50の手習い(EWI奮闘記)」を書いて参りましたが、ここでいったん終わりとさせていただきます。どれだけの方がご覧になられたかはまったく(!)わからないんですが、「苦労してやがんなぁ~」とか「頑張ってんじゃん」とか、何かしらを思っていただけたのなら幸いです。

 次の目標はまだ決まっていないんですが、そもそもジャズが好きなんで、そろそろジャズをやろうかとは思っています。そしていずれは「〇〇を吹いてみた」という動画を動画サイトに上げたいなぁ、なんて思ったりもしています。最近そんなサイトばっかり見ているわけなんですが、中には「このくらいなら私にもちょっとやれるかも……」というものもあったりして、ようやくそう思えるレベルになってきているのかもしれません。まぁまだまだ拙い表現なんですが、挑戦を続けるなら目標がないといけませんからね。もっとも誰かと競い合うものではないので、あくまでもライブの代わりに……という感じです。いずれそうなったらその時にまたこの「50の手習い(EWI奮闘記)」を再開したいと思います(その時は「還暦の手習い」になっていたりして……)。

 「巣ごもり需要」なんて言われるようになってずいぶんと経ちますが、一時期ウィンドシンセやそれに関わるような製品が本当に品薄になっていて、新たに始めた人がたくさんいるんじゃないかと思うわけなんですが、ここまでやってみて私が思ったことは、「あまり背伸びせずにやれることを一つずつ」ということでしょうか。その方が楽しめますし、逆にいろいろ覚えられていいかもしれないです。確かにCubaseで作曲している人たちなんかを見ると本当にすごくて、「これでアマチュアなの?」と言いたくなってしまうことが多いですし、「〇〇を吹いてみた」という動画を見ても本当に上手で、そういうのと自分を比較してしまうと気持ちが少し萎えてしまうこともあります。でも少しずついろんなことを覚えたり、少ないながらも人前での演奏機会なんかを活用していったりすると、自分のレベルアップを実感できて楽しくなります。日中に家族が出かけてしまって家に一人残っている際は、プロの演奏家になった気分で練習するのもなかなか楽しいものです。まぁこれはヘッドフォンで聴きながらやってますんで、端から見れば怪しいオッさんが身悶えしているような姿でしかありませんけど……。

 もしここまで読んでいただけた方がいらっしゃるのであれば、心より感謝申し上げます(もちろん、この記事だけ読んでいただけたという方にも感謝申し上げます)。

(了)


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