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ぼくらの「アメリカ論」

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ぼくらのどこかに、いつも「アメリカ」がある。 高知、神戸、東吉野。文学者、建築家、歴史家。居住地も職業も違う3人が、互いの言葉に刺激されながら自分にとっての「アメリカ」を語る、こ…
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2024年2月の記事一覧

11 食糧から見る、アメリカの現在地 青木真兵

前回の白岩さんの論考を受け、〈征服者/強者〉〈非征服者/弱者〉の関係を考えようとして気づいたのは、私たちが二項対立の枠組みのなかに固定化されがちだということだ。 支配と被支配、帝国と植民地、勝者と敗者……。これらの図式は、確かにある特定の場面には適応できるのだが、そもそも完全なる強者、完全なる敗者というものが存在するのかと考えると、疑わしくなってくる。 なにも言葉遊びをしようとか、概念を捏ねくりまわそうというのではない。例えば時間軸を伸ばすことで、「あのときの負け」が今の自分

10 What Are You Standing On? 白岩英樹

ゼミ生の卒論を読んでいる。どれも本当におもしろい。しかし、指導教員の立場上、おもしろい、おもしろいと連呼しながら読むだけでは済まず、添削と称して朱字で加筆を促したり、修正案を提示したりせねばならない。全員の文字数を合わせれば優に書籍化できるくらいのボリュームがあるから、膨大な時間と労力を要する。それでも、誰が何のために読んでいるのかわからない書類を作ることに比べれば、大学教員としての冥利を感じる学務である。 わたしがおもしろいと感じる卒論は、総じて以下の2種類である。 (