蛇足について03『括弧による蛇足』
発想には無駄が必要である。これらはセットである。
このふたつを兼ね備えているのが蛇足という行為だ。何かを追加することにより様々な風景を生み出し、さらに想像を広げていくことができる蛇足はアイディアを生み出すには最適なツールと言える。
何かを追加すると言えば、これまた高校生の頃の話になるのだが雑誌でバンドのインタビューを読んでいた時、発言の最後に
(一同笑い)
と付けられていることがあった。文字どおりその場にいた人たちが笑ったということなのだが、文字だけでその場の空気が伝わってきて凄い発明だなと思った記憶があり、意味もなく学級日誌や授業中に回す手紙などで多用した記憶がある。
やがて「(笑)」と簡略されたものが主流となり、様々な形に変化していった。
この括弧を使った補足説明も蛇足の一種と言えるのではないだろうか。試しに有名なフレーズであ「メロスは激怒した」に付けてみよう。太宰治『走れメロス』の書き出しである。
メロスは激怒した(笑)
情景が変わった。メロスが激怒したことにより笑いが起こったことになり、つまりこのメロスは怒りっぽく、それは周りの人も知っていて「またメロスが怒ってるよ」と笑いが起こるくらいにまでなっていると想像できる。
ではこちらはどうだろう。
メロスは激怒した(爆笑)
先ほどよりさらにメロスが笑われている度合いが上昇し、かなり周囲にいじられているようにも感じる。また、メロスが怒ることがもはやお馴染みの芸になってる感すらあり、メロスが怒るだけで「待ってました!」と皆喜んで笑う、そんな想像ができる。
やはり括弧による補足説明は蛇足だ。他のものも試してみよう。
つづく
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