蛇足について04『他の括弧による蛇足』

まずはお馴染みの括弧から。(嘘)と(本当)だ。

①メロスは激怒した(嘘)
②メロスは激怒した(本当)
 
(嘘)は前文を嘘に変えてしまう。つまり①は嘘となり、メロスは激怒していない、激怒したフリをしている状態となる。
なぜそうする必要があるのか、敵を欺こうとしたのかはたまた単なる悪戯なのか。背景とその後を考えるとまた別のメロス像が生まれるのだ。
一方②は本当である。何度も「メロスは激怒した!」と嘘をついて村人を騙しているか本当にメロスが激怒した時には信じてもらえない、そんなオオカミ少年のような話が想像できる。
括弧の蛇足によって別の風景が広がるのがわかるだろう。
さらに試してみよう。
 
メロスは激怒した(当社比)
 
激怒したと言っても人によっては激怒とは捉えられない場合がある。もちろんその逆もあり、これは明らかに激怒だと考える人もいる。意見は人それぞれであるが、この(当社比)が付いたということは、メロスの激怒具合を常日頃から観察しデータを取っていた企業の従来の激怒具合と比べてより激怒しているという発表である。ここまで考えて「なんだその企業?」と疑問に思ったなら、そこからさらに想像を広げるチャンスである。
 
メロスは激怒した(画像あり)
 
いくらメロスが激怒したと言われてもイメージされるものには個人差が生まれる。画像がないと信じない人もいる。そこで画像が添えられたわけだが、そこにはどんなメロスが写っていたのだろうか。散乱した部屋で暴れている姿か、それもとメロスの怒りによって荒廃した都市か。
 
メロスは激怒した(写真はイメージ)
 
こちらも画像があるパターンである。ただしイメージ写真であるので、外国のサラリーマンが怒っているようなフリー素材写真か、人物は写っていなくひび割れたガラス窓の画像ではないだろうか。
 
メロスは激怒した(閲覧注意)
メロスは激怒した(音量注意)
 
前者は激怒具合がかなり暴力的であるための注意であり、後者はメロスの怒鳴り声が大音量であると思われる。どちらも動画であり、再生する際には気をつけたい。
 
メロスは激怒した(10年ぶり2回目)
 
久々の激怒である。
 
メロスは激怒した(縦読み)
 
どこか不自然で違和感のある文章だと思ったら縦読みだった。メロスが激怒したことを誰かに知らせるための暗号、謎解きイベント、メロスと交際している女性の匂わせなど、様々な可能性を秘めている。
 
メロスは激怒した(マセキ芸能社)
メロスは激怒した(日本テレビ系)
 
こちらは「メロスは激怒した」という書き出しを丸ごと小説以外のものにしてしまう蛇足である。前者はマセキ芸能社に所属するお笑い芸人のコンビ名となり、後者は番組名になる。
 
メロスは激怒した(※繰り返し)
メロスは激怒した(小林製薬)
 
こちらも蛇足によって丸ごと別物になるパターンだ。前者は歌詞である。後者は薬の名前となる。

つづく

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