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IDENA

IDENAは匿名の個人にブロックチェイン上での登録証を発行するための仕組みとその開発と運営のコミュニティ、及びそのユーティリティコインです。検索で日本語での解説がありませんでしたので簡単に紹介します。 生身の人間かどうか判断するための簡単な二択問題を基本にして、公開分散処理基盤の根幹である参加者間の公平性の問題に取り組んでおり、また経済的効果も含めた平等な匿名個人のコミュニティの発展を検証するためのブロックチェインを用いた研究財団あるいはNGOの側面もあります。まだ数億円規模ですが、新市場が確実に形成されつつあります。社会科学的にはAI対人間集団のブロックチェインゲームになるかもしれません。

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(Original PItch) 

想定される活用例

ベーシックインカム、サーバー無用のメッセンジャー、フリースピーチのためのメディア、専用EC、個人認証を要するWEB3 Dapps等が提案されています。また、無記名投票やオラクル (ブロックチェイン外の情報を正誤判定してから提供)の機能としての応用も期待されます。さらに、独自のECマーケットを検討されています。

フェイクニュースや、成り済ましによる詐欺から組織内システムへの不法侵入など、発信元の個人、法人、ブランドなどが本物かどうか、判断できれば対策もし易くなります。その多くは機械仕掛け、いわゆるボットによる自動的かつ大量の偽情報でしょう。現在のプラットフォームでは満足な解決がされない問題に人力で根本から対抗し得る上位モデルの仕組みでもあります。

チューリングテスト

さて、相手が生身の人間なのかそれとも機械なのか確かめる手段は基本理論の創始者にちなんで、チューリングテストと呼ばれていて、GoogleなどでおなじみのCapchaが有名です。邪魔な線が入ったり、歪んだ文字を読み取ったり、込み入った写真の中の自転車や信号機を見つけたり、と人間の方が正確にできる判断を用いて違いを見つけるものです。

IDENAは、これらを発展させた「人」の判断手法を基本としています。管理主体となる形態、サーバーを持たない分散型の自律サービスとして、不特定多数の匿名の参加者が公平に協力してデータの作成や運用を、「アメとムチ」、報酬と罰則を組み合わせた手順で行います。

基本の仕組みは、Flip (Filter for live intelligent people) といいます。ストーリー、ある物語に沿った4コマの絵と物語の意味をなさないように並べかえた4コマを左右に並べ、正しい方を選びます。物語は、わかりやすく、また言語・文化や環境の異なる人に対して同じように理解されるように指示されています。二つの単語で表されるテーマに沿っていること、絵が込み入っていないこと、文字を使ったり順番が簡単に推測できる内容(1-2-3-4など)は禁止、などで、またこれら基準に合うかどうかは他の参加者に評価されます。

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これを何 "Flip"か行い、正答率が高ければ生身の人と判定されるよう、あるいは人間らしさの指標が高くなるようになっています。また、この流れと並行して別に、AIでの高い認識率を求めるための懸賞金付きのプログラムも設定されています。

このチューリングテストを実行する局面のみならず、そのテスト自身、すなわち物語4コマFLIPの作成過程において、より品質の高い4コマ物語を作れるかどうかでも人か機械仕掛けの偽物かを区別でき、逆チューリングテスト、(Reverse Turing Test)になっています。

検証サイクルと手続き

一人で複数の登録ができないようにするために、全世界で何週間かおきの決まった短時間で、一斉に問題を解くイベント(熱狂的参加者にとってはセレモニー)を定期的に開きます。日本からは、土曜日の22時30分開始で、最初の2分以内にで6flipsの問題に回答し、続く30分では個々のFlipが要件を満たすかどうかの判定をします。最近ではおおよそ3千人程が参加しています。一個人のノードとして正しく検証され継続すると、新たな参加者を招待することができるようになります。参加するための最小限の用件として、要件を満たしたな3つのFlipを作成し、作成能力が認められると知り合いがいなくても、コミュニティからの誰かからの招待を受けることができます。もちろんこれらは全て匿名で行うことが可能です。

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次回の一斉回答までの期間がEPOCで、その期間中は認定された生身の人として、4コマ問題のFlipの作成と評価、運用コインの発掘、また追加要件を満たすと新規参加者の認証を行うことができるようになります。前回は52番目のEPOCH、52世代でした。

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招待を受けて、最初の検証を完了すると有効(Verified Identification)になり、次の検証までのタスクが条件を満たせば新人(Newbie)、これを何度か繰り返すとヒューマン(Human)になります。脱落条件もあり、最後はゾンビーになります。

ノードの構成

ノードのプログラムは、ホームページからダウンロードして、すぐに実行できるP2Pクライアントですが、まだ操作手順に従って試せばわかる(Self explanatory) ようにはなっておらず、またヘルプや簡易ガイドは散逸しているので、解説を一通り読んである程度理解したつもりでも、片手間にそのまま進むと結構時間がかかりました。何段階かステージがありますが、そこで実際どういう手順になるのかは、参加者の規模に応じて変わる場面もあり、わかりやすい説明が見つけにくいか、あるいは意図的に隠されているようです。コミュニティサポートがTelegram/Discord/Redditにあり、特に、既に参加している知り合いがいない場合には、telegramのflipschoolにて例題を解いて提出すると、最初の参加資格が誰かから送られて来ます。

個人の証明、PoP (Proof Of Personhood)で証明すべきものは、人にしかできない作業ですから、機械が行う計算量に依存するPoW(Proof Of Work)や、保有資産価値に依存するPoS (Proof Of Stake)とは異なり、特別なハードや投資は必要としません。P2Pで非接続、非稼働がペナルティになる項目もありますので、バックエンドのみVPSで運用するケースの解説があります。

市場経済性の概観

総体的な視点で見ると、IDENAは現在評価額数億円規模で使用実績のあるFlipデータと作業者を資産とする研究と協力者のコミュニティと言えるでしょう。ざっくり見たところ、コアチームや早期参加者などに半分を確保、残り半分が一般参加者向けのようです。

個別の視点からは、ノードのバックエンドをVPSで運用する場合、Digital Oceanで$5/月の最小構成で十分とのことです。マイニング、Flip作成、新規参加者の勧誘などで報酬が設定されており、継続できなかったり、品質が低い場合には罰則で減額されます。また、凍結期間もありますのでどの程度期待できるか見通しにくいのですが、新規メンバー勧誘の報酬は1500単位とありましたので、ある程度期待でき、発展途上国では既にベーシックインカムと言い得る範疇にあるかもしれません。報酬の10%は年金のように取り扱われるようです。 

昨年、財産権の放棄を謳ったベストセラーの"Radical Markets" のGlenn Wyleが作ったRadicalXChange Foundationのメンバー等による論文("Who Watches the Watchmen? A Review of Subjective Approaches for Sybil-resistance in Proof of Personhood Protocols")にも取り上げられ比較紹介されています。

2025での展望

一億人の認証が目標で全人口の3.5%に当たります。この割合を占めると、政府等が協調せざるを得ないものとなり、極端に言うと解体できないものとなります。2020年を3000人とすると年率6倍弱のペースで達成可能です。3ヶ月おきの検証セッションを、人権、自由、平等のグローバルイベントにすること。 ベーシックインカムをIDENAのコインで、と言うのもあながち夢物語では無いかもしれません。


   

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