焼酎

水の水割りでも酔いトークができるサラリーマン処世術について

昨日はごく普通のサラリーマンが、一週間で一番ホッとするであろう金曜日。
ごく普通のサラリーマンたちは、金曜の夜には気心の知れた同僚や地元の友人たちと安酒を酌み交わすのが、最もポピュラーであり、王道である。

実際、懐具合と一週間の体と頭の疲れを考慮していくと、近所の安酒の立ち飲み屋で一杯という流れが「消去法でそれしか思いつかない」わけで、馴染みの(気がつけば馴染みになってしまった)串焼き1本80円、チュウハイ1杯280円の居酒屋に行き着く選択肢以外は、どうにもこうにも思い当たらないわけである。

そんなごく普通のただの凡人のサラリーマンにも、試練は訪れる。
月曜から身を粉にし金曜まで走り続けた、健気な平凡サラリーマンは、その対価としてささやかな安酒さえも奪われ、上司との接待飲みというイベントが突然発生する。このゲリライベントで試されるスキルはかなり高い。高いが、その高さを露呈するイベントではない。これは理屈ではなく、静かなる戦闘だ。相手を殺すための戦闘ではない。己のスキルの答え合わせ。心の水面下で攻防戦を繰り広げ、最終的に「生きて帰ること」。それが「社内接待飲み」の攻略法なのだ。まぁ、つまりは厄介な飲み会なわけである。

最初に言っておくが、会社の上司や社長と飲むという行為は、仕事観としては美しい行為だと思っている。単に飲みニケーションなどというつもりはない。上司であれ部下であれ、仕事のパートナーたちと軽く飲むことは有益だ。ただ、時としてテンション的にそれを回避したいという心情もある。そんな時、不意に予期せずそれに巻き込まれてしまった時に、いかに乗り越えていくか。それを書きとめていきたい。ただ、それだけの戯言だ。


■第1段階「不参加」
まず最初の関門。それはイベントを回避すること。新人ほど回避にこだわるが、残念ながら「回避術」の習得難易度はA級だ。新人ほど、つまらない自己主張を繰り返し、逆に上司からの評価を著しく下げた挙句に強制参加となるか、または同僚たちから距離を置かれて「めんどくさい奴」に陥る。不参加という究極の理想を達成する為には、それなりの技を会得しなければならない。

断り方のスマートさ。それは不意に声をかけられる瞬間、朝のエレベーターや帰り際などの気が緩む一瞬にかけられる「今日夜空いてるか?」の一言に対し、動揺することなく瞬時に「すいませぇ〜ん、先約があって。」と言えるかがポイントだ。わずかでも動揺があると相手に隙を与えることになり、すかさず「どんな予定だ?」と続けざまの左ストレートが来る。

予告なく来る、先制の右ストレートをスマートにかわすこと、これが最初に会得すべき技だ。つまり「今日夜空いてるか?(たまには俺と飲みいこうよ〜奢ってあげるし、何なら行きたいところ連れてってあげるからさ〜)」という予告ない先制に際し、「すいませぇ〜ん(わぁ〜お誘いいただいてありがとうございます〜すごい嬉しいです!でも残念〜)、(どうしても外せない随分前から決まっていた)先約があって(それさえなければ絶対行ったのに〜どうしても今日だけ、今夜だけ無理なんです〜)。」と伝えられるかどうかだ。

言葉は多く交わすことはない。むしろ少ない方がいい。あまりに多くの言葉を並べてしまうと逆にそこを突かれてしまう場合がある。ベテランの域になれば、予告ない先制を事前に察知する能力も身につけられる。アニメでいうところの空を意味深に見上げながら「(奴が)来るッ!!」なんて言っちゃう感じのアレである。

回避術は己の職場でのポジションや地位、キャラによって、発動回数に制限がある。つまりはそんなに何回も使えないよってこと。そんなわけだから、強引に回避行動を取るよりも、いっそ参加する方向でコンディションを整えた方が賢明だ。第2段階はそんな話。


■第2段階「参加」
そもそも参加したくない理由とはなんだろうか。上司や社長の昔の武勇伝や同じ話を何度もされること?「無礼講で〜」なんて言いながらも、ここでの受け答えは後々の評価に直結しそうだから、最新の注意を払って受け答えせねばならない内なるプレッシャー?

人それぞれ色々あるだろうが、ここで話を進めたいのは、上司が飲みたい理由である。上司は酒を飲ませたがる人種である。それはなぜか。それは酒を飲み交わすことで、普段は聞けない「ホントの気持ち」を探りたいから。そして、同時に「僕の(上司や社長)のホントの気持ち」も知ってもらいたいから。「今日は無礼講だ〜」という意味は、たいていは自分自身について言っている。上司や社長は職場では聞けない本音トークを聞き出したいし、そんな本音トークを通じて、部下にどんどん慕われる上長になりたいわけである。

だから、酒をあまり飲まされてしまうと、ついつい本音を言ってしまう。だから、平凡なサラリーマンは無い知恵を働かせて、なるべく本音っぽい嘘を語らねばならない。正確に言えば、上司や社長が望む「部下の本音」をトークの中で導き出し伝えなければならない。全ては出来レースなのである。新人ほど「じゃぁ〜言わせてもらえれば!」なんて禁断の手札を切り出してしまう輩もいるが、それはルール違反だ。これはゲームである。彼らが望む「部下の本音」とは何か。それを導く過程で、彼らの本音を明るみにしていく。僕らはそうやって、逆に上司や社長の器や「本音」を知ることによって、この人についていっても大丈夫か。今後、転職した方がいいか。などと判断材料にするのだ。

そう、これは静かなる戦いなのである。相手の手のひらで踊ってるように思わせながら、彼らの本音を聞き出す場。それが社内接待飲み会である。

さて、そうなると一つ、技を発動させなければならない。「酒を飲まない」「酒を飲んでいると思わせる」幻影スキルの発動だ。


■第3段階「水の水割り」
もともと全く飲めない人。これは今の時代は救いだ。今時、無理に飲ませる上司も珍しい。厄介なのは、お酒は強くないけれども一杯くらいなら付き合いで飲める人。一口でも飲めるというスタートラインは、気をつけなければ、結果案外飲まされたわ今日。。。なんて時がある。

そこで、普通は軽めのサワーや甘めのカクテルに逃げがちな方々に、ど真ん中の焼酎割りスキルを伝授する。

まず、一杯目のビールの後「二杯目何飲みますか」などと話が出る。そこで一言「みんな結構飲むなら、ボトルにした方が(安くなるし)いいかもしれませんねー」と社長に言ってみる。続けざま「私!お酒作りますよ〜」と畳み掛ける。

これだけである。8割方、9割方、これで勝てる。
そもそもコスト感覚に優れた話を社長や部長は好きだ。でもボトルを入れる話は自分から言うにははばかれる。部下の手前「なんだかケチくさい」と思われたくないからだ。しかし、部下から言われる分には最高に嬉しい。人数が多ければ多いほど、二つ返事でその流れになるだろう。そしてもう一つ、「私!お酒作りますよ〜」という決めゼリフ。これは上に立つ者としては最高に気持ちが良いと感じる40代50代は多い。それもそれ、そもそも「部下に慕われている」ことを味わいに飲み会を開いているようなものなのだから。これは究極の決め台詞なのだ。

そうなれば後は容易い。麦でも芋でも好きな焼酎を選んでもらい、必ず割るものの中に「水」を入れておけばOK

もうお判りですね。タイトル通りの話です。水の水割り。これならば無限に飲めます。上司のお酒を作るという、面倒くさい行為を引き受けることで、逆にフィールドの実権を全て掌握できるわけだ。

話にはいつも笑顔で、時より「なるほど〜」「知らなかった〜」「気になります〜もっと聞かせてください」を織り交ぜながら、グラスが空になる前に、新しい焼酎を継ぎ足す。ここで注意してほしいのが、それほど濃くしてはいけないこと。「うわっ、濃いなこれ〜」なんて言われてはいけない。酒飲みが嬉しい少し濃いめを連投し、美味しい水割りを作ることに努めます。美味しいお酒はついつい酒が進む。それが一番!酒飲みは勝手に頼まれなくても酒を飲む人種だ。楽しい酒を演出すること、これが大事だ。

安心してください。あなたは焼酎を入れてるふりをしながらも、人目を盗んで水を継ぎ足しながら、結局は水を飲んでいるわけですから。酔わされることは微塵もありません。ポイントは最初の一杯目は焼酎の水割りにしておくこと。そうすれば誰もが水割りを飲んでいると錯覚します。

そして最後の仕上げ。決め手は「部長(社長)〜お酒やっぱりお強いですねぇ〜、同じペースで飲んでたら今日は飲みすぎちゃいましたよ〜」の一言。

これを話す頃合いには、もう彼らはヘロヘロです。酒の勢いで2軒目にという誘いも発生しますが、「酔っ払ってもう限界」というアピールに切り替えて乗り切りましょう。もちろん、一切酔ってないわけですから、酔うフリをしなければなりませんが、志村けんのコントのような酔うフリはしなくても大丈夫。なぜならば、向こうが酔ってるわけですから、過度な演出は入りません。



さて、つまらない話をダラダラ書いておりますが、本当にどーでもいい話だなと、書いていて思いました。酒は美味しく飲むのが一番。昨日は久々に金曜なのに、まったく酔わずに帰ってきて、ふと信号待ちの交差点で「(金曜に酒のまないなんて珍しいなぁ)」なんて思ったのがキッカケで、なんとなく駄文を書いてみた次第です。


駄文をダラダラ書くのが、趣味なもので。


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