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三宅民夫化するNHKラジオと私

夜半、床に就いてから目覚めるまで、泥酔していない限りはNHKラジオを垂れ流している。早朝5時までは「ラジオ深夜便」、5時からは「NHKマイあさラジオ」という帯番組で、いずれもパーソナリティは日替わりだった。だったのである。しかし、ちょうど3年前から潮目が変わった。「マイあさ〜」の方が「三宅民夫のマイあさ!」なる新番組にリニューアルし、出演者が固定されたのだ。

三宅民夫といえば、鶴瓶が田舎に出張っていくテレビ番組のナレーションで有名なおじさんで、NHKにしてはかなりバラエティ色が強いアナウンサーだ(現在はフリー)。そのしゃべりも、淡々とニュース原稿を読み上げるというよりは、独特のタメ、抑揚、唐突なハイトーンの駆使など、三宅節が前面に立ち現れる。NHK的にはでかい話だったのか、東京のターミナル駅には大々的に広告が打たれたらしい。

が、これがどうも落ち着かない。それまで名も知らぬアナウンサー陣が、いい意味で無個性に番組を進行していたところに、突如としてタレントが割って入った感があったからだ。もうちょっと寝ようかな、どうしようかなというところに三宅民夫が現れ、すべてを持っていく。ニュース読みもどこか芝居がかっていて、肝心の中身が入ってこない。

起き抜けの時間には「匿名性」の高いアナウンサーがちょうどよかったと思う。それこそお茶漬けのようだったのだけど、年度替わりを機に毎朝ラーメンが出てくるようになってしまったのだ。胸焼けが続く。そして、強制的に覚醒をうながされ、社会参加せよと無言の圧力をかけられる――これはさすがに言い過ぎか。ともあれ、個人的にはそれくらいの出来事だったのである。

ちょうど同時期、昼の帯番組も「武内陶子のごごラジ!」へと変わり、編成側の分かりやすい冠番組信仰に面食らった記憶がある。こっちは聞く機会がないので置いておくとして、1年前からは三宅氏がお休みの土日の「マイあさ!」に畠山智之が出演するようになった。

顔を見れば分かる人も多いと思う。「ニュース7」や「ニュース9」に出演していた大物アナウンサーだ(フリートークでフリーにやりすぎるきらいがあり、若干危なっかしい)。三宅氏とは出自が違うとはいえ、この重厚長大路線はなんなのだろう。

ひとつ確かなのは、三宅氏に罪はないということだ。その神通力に期待した側の責任をこそ問いたい。いち聴取者としては朝からラーメンはしんどいのである。少なくとも、NHKにそういうのは期待していない。さらっと聞き流せた、水のような感情でいられた日々を返してほしい。僕が午前8時をもって毎日放送に選局を変えるのは、浜村淳の動向が気になるというのもあるけれど、それまでに浜村淳という個性を受け入れられるだけのコンディションを整えている、そういう背景もあるのである。

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