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選は創作なり

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毎回一冊の句集をとりあげ、そこから句を選びます。古い句集から新しい句集まで、関心のおもむくままにとりあげていきます。ほんとうは自身の選句力をきたえるためのアウトプットですが、ぜひ…
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記事一覧

【選は創作なり】照井翠句集『龍宮』

今年もまた三月十一日がやってきました。東北大震災から九年が経ち、あらためて照井翠さんの句…

【選は創作なり】橋本鶏二句集『年輪』『松囃子』『山旅波旅』『鷹の胸』

平成二年発行の『橋本鶏二全句集』には十冊の句集が収められています。今週は『年輪』『松囃子…

【選は創作なり】加藤郁乎編『芥川竜之介俳句集』

昨年末NHKBSのドラマ『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』をみました。主演は松田龍平。無…

【選は創作なり】草間時彦句集『盆点前』『瀧の音』

新年早々、食あたりで寝込みました。下痢と嘔吐、そのあとは高熱。こんな寝正月、生まれて初め…

【選は創作なり】後藤比奈夫句集『白寿』『あんこーる』『喝采』

後藤比奈夫さんの句集『白寿』(2016年)『あんこーる』(2017年)『喝采』(2019年)から選を…

【選は創作なり】上田五千石句集『遊山』

冬至を過ぎると、すっかり年の瀬です。流れゆく大根の葉のはやささながら時が過ぎていきます。…

【選は創作なり】飯田龍太句集『麓の人』『忘音』『春の道』

四十代最後の一年となりました。この十年を振り返ってみると、人並みにいろいろとありました。人によっては、自身の人生を句材にするようなことはしない、という方もいるでしょう。しかし、そういう人であっても、時間と無縁に生きられる人はいない以上、その人の時間がなんらかのかたちで俳句に刻まれているように思うのです。 飯田龍太は大正九年(一九二〇年)生まれ。四十二歳のとき父蛇笏、四十五歳のとき母菊乃が相次いで亡くなります。龍太は二十代のとき、戦争と病気で三人の兄を亡くしています。三十代は

【選は創作なり】石田波郷『惜命』

十一月二十一日は波郷忌。深大寺に吟行しにいくたび、お墓に挨拶にいきます(ついで申し訳ない…

【選は創作なり】高橋睦郎句集『十年』

十年といっても、さまざまな十年があるものです。十年という単位に意味があるわけではないです…

【選は創作なり】大峯あきら自選句集『星雲』

愁いの秋も深まってきました。そんなときは星空でも眺めて、ぼーっとしたいところです。しかし…

【選は創作なり】 野見山朱鳥句集『朱』

野見山朱鳥は、1917年生まれ(兜太さんの2歳上)で、1970年の2月26日に亡くなっています(享年…

【選は創作なり】矢島渚男句集『野菊のうた』

矢島渚男句集『野菊のうた』は、句集『翼の上に』『延年』『百済野』のからの句抄です。波郷と…

【選は創作なり】長谷川素逝句集『砲車』

長谷川素逝は、昭十二年、砲兵将校として召集され、支那事変いわゆる日中戦争を戦地で戦います…

【選は創作なり】金子兜太遺句集『百年』後編

金子兜太さんの御宅にうかがったことがあります。今から六年前、兜太さんが九十四歳のときです。雑誌の取材にかこつけて、さまざまな問いを投げまくりました。今思えば、無謀というか、無遠慮というか。この若造め、と思われていたかもしれません。体調もあまりよくない感じでしたが、それでも一つ一つ真摯に答えてくれました。とくに柳田國男と時枝誠記について話が聞けたのは、生涯の宝物です。兜太さんが1970年に書いた論文「構築的音群」についてたずねたところ、「書いた自分でもわかんねえーんだよ」といっ