僕の自動車教習所日記①

芸人に憧れ、18歳から大阪に来た僕には、根拠のない自信以外何もなかった。
10年経った今も押し潰されそうになる自信をほんの少しの希望だけで保ち現実逃避する時がある。
周りの人はどんどん陽に当たり、自分は悔しさを眩しさで誤魔化して、僕だけが見える影が周りに追いつこうと伸びている。
怖い。
周りの言葉や視線よりも、この影が伸びずにいつか消えちゃうんじゃないかって。
だから影に追いつこうとするよりも影が消えないようにしている自分がいる。
こんな事して意味があるのか。陽が射さればいつも思う。

自動車学校に行く事にした理由だって特に意味はない。
また自分は何かを保つ為に行動をする。理由はいつも後付けで
行動してから理由を探すことが多い僕に辻褄があって綺麗にしたいだけなんだろうなと自分に思う。
緊張もワクワクも特になく、1日目の教習を受けに行った。ただ『何か』になればいいと思って。
周りは学生から僕より歳が上の人まで幅広い年齢層。
一日目は車に乗っていい人かを判断する適性テスト。結果は六角形のパラメーターで表れる。
バランスのある小さな六角形という日本人らしい結果だった。
次に学科授業を受けた、初めの授業という事もあり最初の授業は「朝起きたら、おはようと言います。」くらい当たり前の事を聞かされた。
おっさんが一生懸命になんで朝起きたらおはようと言わなきゃいけないのかと言う説明をしていた。
教官の授業内容を馬鹿にしているわけではない。それくらい自分には、知ってるわ!と一言言わなきゃいけないのかと思うくらい当たり前に聞こえただけだ。
自分ももうすぐおっさんになるしおっさんは馬鹿にしない。
気付くと授業は終わり、技能という授業を受ける事に。
技能のテストをする時には何人か帰り、男の僕一人と女性が四人残った。
別の教室に移動するとゲームセンターに置いているレーシングゲーム機のような物が並べられていた。
このまま女の子達と楽しくレースする訳でもなく黙々とエンジンの付け方からブレーキをして停止するまでをシュミレーションした。
何人かの女の子はブレーキをかけ過ぎてドリフトをかましたのかというほどのブレーキ音が教室に響いていた。
そんな子を守ってあげたいと思いながら僕は強くサイドブレーキを上げ、教室を去った。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?