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神学生による随筆〜主のための幕屋を造ろう

コンベンツアル会T神学生


新年度を迎えるにあたって、今一度心に留めておきたいことを、皆さんと共有したいと思い、一つの言葉を取り上げさせていただきます。

「私はすべての兄弟に乞い願います。あらゆる妨げを遠ざけ、あらゆる心配と心遣いをうち捨てて、できるだけ完全に、清い心と純粋な精神をもって、神である主に仕え、主を愛し、尊び、礼拝するように努めなさい。主ご自身がそれをすべてに越えて求めておられます」

 
これは、アシジの聖フランシスコが兄弟たちに訓戒として残した言葉です。これは奉献生活者にとって、霊的生活の唯一の目的を簡潔に示したものであり、常に目にし、耳にしている言葉でありながら、常に実行することを怠ってしまう言葉でもあります。フランシスコがこの言葉を兄弟たちにしたためたのは、いかに私たちの心が神のみを求める生活を選びながら、その本質に留まり続けることが出来ず、あっちこっちと注意散漫に彷徨い出て、神さまを一人ぽつんと心の隅に置き去りにしていることが多いかということを、よく知っていたからでしょう。

フランシスコは、兄弟たちにこうも言っています。


「そして、サタンの悪意と狡猾を大いに警戒しよう。サタンは、人が精神と心を神に向けないように、と望んでいます。サタンは、歩き回って報いや援助という口実のもとに人の心を奪い取り、主の言葉と戒めを記憶から消し去り、この世の仕事や心遣いによって人の心を盲目にして、そこに住もうとしているのです」


「サタンの悪意と狡猾」は、一人一人に対して、その最も見合った内容の誘惑を仕掛け、その心を神に向かわせないように奸計を巡らしているといいます。ですから、人によって、サタンの仕掛けてくる罠の見かけはまちまちでしょう。では、一体、私たちより遙かに賢い敵の悪巧みに陥らないためには、どうすれば良いのでしょうか。

フランシスコは、わたしたちに次のように教えています。


「心と魂のうちに、全能の神である主、父と子と聖霊のための〈幕屋と住まい〉を常につくろう。主は言われる。『起ころうとしているこれらすべての悪から逃れて、人の子の前に立つことができるように、いつも目を覚まして祈りなさい』・・・そして、わたしたちは主の言葉と生活、また主の教えと聖なる福音を守ろう」


フランシスコのいう、「父と子と聖霊のための〈幕屋〉」とは、一番大事な人の一挙手一投足に注意を向ける恋人のように、わたしたちの心がいつも神様の優しい息づかいに耳を潜めている状態であることをいうのでしょう。

「唯一の真の神であるわたしたちの創造主、贖い主、救い主の他は、何も望まず、何も求めないようにしよう。また、他のどんなものもわたしたちを満足させ、喜ばせることがないように」(フランシスコ)


この最もシンプルで、然し最も精神的な修練を必要とするこの訓戒を、もう一度、わたし自身の心と身体に刻み、新しい年度を一日一日、大事に過ごしていきたいと願っています。


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