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コルベ神父『母への手紙』06 十字架の釘とベロニカの聖布(19歳)

聖コルベ神父が18歳から死の直前まで母マリア・ドンブロスカへ綴った手紙。
聖母の騎士社刊『母への手紙』より

1912年(大正元年)から1917年(大正6年)まで

18歳から23歳までのプロフィール
●18歳-ローマ・グレゴリアン大学へ留学
●20歳-父・ユリオ・コルベがロシア軍から殺害される。享年43歳
●21歳-グレゴリアン大学より哲学博士号を受ける
●23歳-同士六人で聖母の騎士信心会を創立

1913年5月12日十字架の釘とベロニカの聖布(19歳)

愛するお母さま

最後の手紙を出した直後に、お母さまからのお便りを受け取りました。それにはまだ、返事を書いていませんでしたね。

ローマからのニュースを詳しく書こうとすれば、分厚い本を書き上げることになるでしょう。本当にローマは、聖人たちの骨と血を入れた大きな聖遺物箱ですし、当時の全世界を支配した皇帝たちの壮大な記念碑です。

豊かな遺物をもつカタコンブや教会のかたわらに、昔の城壁の廃墟、皇帝たちの宮殿、大浴場など、いろんなものを見ることができるのです。

例えば、ぼくらの大神学校の前には、墓地が広がっています。緑に囲まれた皇帝たちの宮殿の跡が小高い丘を覆っていてずっと下の方には、壊れた円柱や、崩れた宮殿の跡だらけの一帯も望めます。遠くの方には、今にも崩壊しそうなコロッセオが見えます。あのコロッセオの土は殉教者たちの血を吸い込んでいるのです。そのため、ある教皇は数メートルも、地表を土で覆わせたそうです。このほかのことは、書物やローマのガイドブックに載っているので割愛しましょう。

ところで、(前に書いたかもしれませんが)ローマでは訃報が相次いでいます。例えば、教皇代理レスピギ枢機卿が亡くなりましたし、ピオ十世の姉妹の一人ローザ・サルトさん、聖ヨゼフ会の創立者、またグレゴリアン大学では有名な哲学教授デ・マリアが亡くなりました。

死は教皇様にも迫りましたが、神様の恵みで、今のところ、危険が去ったので、ぼくたちは聖ペトロ大聖堂で「テ・デウム」を感謝のために歌いました。

また、最後の便りをお出しして、しばらくたった頃、同じ聖ペトロ大聖堂で、聖週間の華麗な儀式に参列しました。枢機卿方が多数出席しておられました。

儀式の前に、十字架と、主イエスを十字架にはり付けた釘と、ベロニカの聖布で祝福が与えられると聞かされていましたが、本当に儀式の後で一枢機卿によって、大聖堂内のロビーから祝福が与えられました。遠かったので、十字架と釘の遺物は見えませんでしたが、同僚が眼鏡を貸してくれたので、聖ベロニカの布の上に奇跡的に残されたイエスのお顔の輪郭を見ることができました。祝福の終了を告げる鐘が鳴り渡っている間、ぼくは他の人々と同じように、頭を下げ続けていました。

今年は数々の迫害の後、教会に平和をもたらした、コンスタンチノ大帝の戦勝一六〇〇年目に当たります。ローマでは高位聖職者による荘厳な儀式が行われますし、これにはイタリア中の有名な聖歌隊が奉仕することになっています。

少し前、ポーランド人巡礼団がやってきました。約一週間の滞在でした。一部の人はまっすぐ祖国へ帰ったようですがマルタ島の聖体大会やナポリにまわった人もいるようです。ビルツェウスキ大司教も来られ、ガリチア出身の神学生たちは、お会いして、お話ししたそうです。またヴァレガ・ペルツアルの司教さま方もいらしたと聞きました。

最近では、パレスチナで研究していたオッマル師が大神学校にやってきました。多分、今年中に聖書の博士号を取得するための試験を受けるのでしょう。この博士号は、あらゆる学科の中で最も難しいとされていて、コンベンツアル会では、まだだれも取得していないのです。

一方、大神学校では、司祭叙階試験を受けた者がいます。助祭のテストを受けた者も一人、またぼくより年長のガリチア人たちが下級叙階の試験を受けました。

最近の出来事として、約二ヶ月前、ドイツ人大神学校の生徒が、わずか三日ほど病床についただけで亡くなりました。数ヶ月前に司祭に叙階されたばかりの上に、学業優秀で表彰された人でした。ところでお母さま、こんなことを知りたいですか。数日前、食堂で彼の生涯について朗読されたのですが、その中に、「もし、主がお望みなら、祭壇の栄光にあげられる日も遠くないであろう。」という一節があったのですよ。

それから昨日、コンスタンチノ大帝時代の信教の自由の記念に、ローマはすばらしいイルミネーションで飾られました。セラフィノ師は、ローマに二十年間いるけれど、こんなことは初めてだと言っておられました。

おしまいに、七月にテストがあることをお知らせすると共に、お祈りをお願いします。ぼくの義務を果たすために、ぼくにはたくさんのお恵みが必要なのです。

いつもお母さんを愛している
フラ・マキシミリアノ

コンベンツアル聖フランシスコ修道院関町修学院のページでも続きをご覧いただけます。

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