星屑の町とパリンコ学園
先日、のん(能年玲奈)主演の星屑の町を見ました。何も言うことありません。オリジナル曲「シャボン玉」の映像を見れば、見に行く価値がわかると思います。
星屑の町は、地方回りのムード歌謡コーラスグループ「ハローナイツ」と、地元のスナックで働く、歌手になることを夢見る女の子が出会って始まるコメディで、1994年から舞台で上演されています。
物語序盤の昭和臭は、1980後半-90年代初期に若者だった者にとって、当時の悪夢を思い起こさせるようなおじさん達の振る舞いがフラッシュバックします。ハローナイツのメンバーを演じるのは1950~60年生まれで、まさにあの当時の中年おじさんです。
あの頃「新人類」とか言われながら「カフェバー」とか「深夜のレストラン」とか「クラブ」に行ったのは、とにかく「あの」世代の鬱陶しさに耐えられなかったからだということを思い出しました。「あの世代の人たち」の一挙一投足が忠実に再現されています。名演です。
その鬱陶しさがある分、のんが登場してからの清涼感が倍加するわけで、巧みな演出だと思います。ちょっと長いけど。
のんは少し歌うだけで、画面を換気して自分の空間にしてしまい、おじさんたちのことなど、どうでも良い気分にさせてしまう圧倒的なヒロイン力を発揮します。役柄としても、物語終盤の走り抜け方は、従来の邦画のヒロインとは一味違います。爽快です。
細かい話ですが、このクルマはいすゞ117クーペ。1981年まで発売されていた角目四灯の最終型で、ジウジアーロデザインに合わせたプリムローズイエローです。最近のクルマとは色味が全く違います。フロントドアに三角窓があるので箱乗りには無理があります。
ところで、映画を見ながらなぜか既視感に襲われていたのですが、しばらくしてから思い出しました。パリン子学園No.1です。1982年から83年にかけて放映されていた、小泉今日子と松本伊代と堀ちえみと少年隊とコント赤信号と山田邦子が歌って踊る30分の歌謡バラエティ番組です。
パリンコ学園で学生服を着ていたコント赤信号の小宮孝泰とラサール石井(当時は石井章雄)は当時26歳。星屑の町で語られていた「若い頃」です。その二人が37年経って東北の田舎町で、ハローナイツの中心メンバーとして、ムード歌謡のコーラスをしているかと思うと、感じるところがあります。現実とごっちゃになってますが。
当時の映像を今さら見ると、なるほど歌謡ショーです。それ以外の何者でもありません。
ふとパリンコ学園No.1のWikipediaを見ていたら、星屑の町の原作・脚本の水谷龍二がパリンコ学園No.1の構成スタッフとして出ていました。こうやってつながっていたのですね。
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