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自分に向き合える空間

何年ぶりかに最新の病院へ行き、病院空間のあり方をいろいろ考えさせられた。

かつて、高度な病院建築を感じるためアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスを何度か巡り、向き合い方、安全性、機能性、患者、従事者の動線、デザイン、周辺環境の調和等を研究していた。

どこもプラン、デザインは素晴らしく、圧倒さたが、そのままを採り入れることではなく、日本の事情を参酌しながら提案、具現化を進めていた。国内でもその地その地の生活習慣、環境に相応しいかどうかは別の問題であった。

その頃、なんとなく素晴らしいと思える病院は、地域性、人材、医療システム、環境の調和がとれ、機能とは別に”穏やかな空間”をどこかに感じられた。

それは、過度の緊張を解き、患者同士が意識し合わない距離を設定し、音や匂いを重ね合わさない、いわば自分に向き合える空間であった。

なぜ、今こうしているのか、ここに居るのか頭の中で確認する時間。待っている間も心細くないシステム。

基本的にはバタバタしておらず静寂の中に、うっすらと音楽や会話が聞こえ、待ち時間を自分ごとに変換できる空間で、目先の植物やアート、BGMでお茶を濁さない、人が落ち着く環境である。

今回訪ねた病院の総合診療室の前は、ふとサン・ピエトロ大聖堂の懺悔の部屋の前のように感じた。これまでの自分の生き方に向き合える”ありがたい空間”としてである。
病院は病を治す場であるが、人の生き方に寄り添う場と考えれば同じなのかもしれない。

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