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対面講義でも、デジタル教科書を活用した反転学習:明神実枝先生(福岡大学)

明神先生(福岡大学)は、コロナ明けで対面授業が復活した後も、デジタル教科書を用いた反転学習を続けています。学生が予習をして、その内容を講義で共有し、復習して学びを振り返る一連のプロセスを実現するために、明神先生は、①学びたいこと、②アンケート、③クイズ、④理解度チェックという順番で進めており、反転学習の「仕組み化」を実現しています。このエッセイを読めば、皆さんも明神先生流の反転学習ができるようになるはずです。


対面講義でも、デジタル教科書を活用


 デジタル教科書を使っている先生方のお話を最初に伺ったとき、正直に言いまして、定年までもうちょっとあるなあ...デジタル教科書を使わずに逃げ切るのはムリかなあ...スマホが私たちの生活を変えたように、デジタル教科書が私たちの学びを変えるかもしれないなあ...と思いました。とは言え、その時はデジタル教科書を採用する勇気がありませんでした。
 ところが、コロナ禍の必要に迫られまして、結局、2020年からデジタル教科書・教材配信システムEDX UniTextを採用しています。先人の先生方のお話を思い出しつつ、セミナー等でメソッドを教えていただきつつ、何とか活用し始めました。
 さて、状況が変わり、大学の講義がオンラインから対面へと切り替わりました。対面講義でもデジタル教科書は有効なんだろうかと迷いながらも、再び先人の先生方のお話を思い出しつつ、新たな機能も活用しつつ、反転学習の充実を図ろうとしています。

予習のしやすさ


 以前は、受講者に予習してもらうことをあまり考えられていませんでしたが、デジタル教科書の採用をきっかけに反転学習に切り替え、現在では、受講者に予習をしてもらい、講義では演習・議論などの復習を行っています。   
 反転学習のメリットは理解度アップですが、そもそも受講者が予習しないと成り立たないので、予習の重要性を理解してもらい、予習の時間を確保してもらわなければなりません。教員も、演習・議論などを導く講義運営スキルを身につけなければなりません。これらの壁を、デジタル教科書の導入をよいきっかけにして乗り越えようとしています。
 そもそも、デジタル教科書はスマホで開くことができるので、いつでもどこでも予習でき、予習時間を確保しやすくなります。また、紙媒体に比べて、持ち運びが面倒、重い、忘れる、なくすといったことがなく、スマホ利用に慣れた若者にはスムーズに受け入れられます。
 そうした便利さに加えて、学習面でのメリットもあります。下線やマーカーは何度でもつけたり消したりできるので躊躇しないでよい、メモを書き込める、枠で重要箇所などを囲める、教員の書き込みを共有して参照できる、といったメリットがあります。これらがあることで、予習や復習にスムーズに取り組むことができます。これらのメリットを講義の初回で伝えることで、予習の壁が下がることがあり、講義メモはメモ機能を使って書き込むなどの自分ルールをつくる学生も出てきます。

「電子テキストを使う理由」の説明

反転学習の流れ


 反転学習は、受講者が講義を聴くだけではなく、自らテキストを読み、考え、理解を深める学習スタイルなので、それらがしやすくなるような予習、講義・復習を意識してみました。そうして準備したのは、①学びたいこと、②アンケート、③クイズ、④理解度チェックです。

 ① 学びたいことは、各回で学ぶ内容の概要、該当章から理解したいことです。これを毎回の講義の最初に確認するようにしました。

各章の冒頭に書き込む「学びたいこと」(例)

 次は②アンケートです。各回のテーマに興味を持つためのきっかけづくりです。『1から』シリーズのテキストでは、各章の第1節に読者の興味を喚起する内容が書かれているので、それを参考に興味喚起となるような質問を作成して、問いかけるようにしました。

テーマに興味を持つためのアンケート(例)(『1から』シリーズのテキスト各章第1節の内容を参考に作成)

 テーマに興味を持ったところで、③クイズです。内容理解のために、各章の章末にある「考えてみよう」をを参考につくりました。
 1つ目と2つ目は事例ストーリーを理解するクイズです。特に事例ストーリーの山場を捉え、注目したい転機や変化、その背景に注意が注がれるようにしました。
 3つ目は「あなただったら~」というクイズです。事例におけるマーケターの意思決定を振り返りながら自分だったらどうするかを考え、それを通して、他の可能性にも目を向けながら、概念や理論が意味するところを深く理解しようとしました。
 4つ目は、類似または関連する事例を挙げるクイズです。内容を理解していなければ事例を挙げることができませんので、それ自体が理解を確認する機会になります。

内容理解のためのクイズ(例)(1からシリーズのテキスト各章の章末にある「考えてみよう」を参考に作成)

 クイズを出題する際は、最初にクイズの背景を5分ほど説明します。その後、受講者はテキストを読んで考え、グループで意見交換を行います。5~7分ほどです。その後、全体でグループ発表を行います。他のチームが自分のチームとは異なる考えを発表するので、改めて考えさせられます。最後に、総括を5分ほどします。クイズ1つに20~30分ほどかかりますので、4つ目のクイズは宿題となることが多いですが、翌回にフィードバックを行うことで復習になります。
 最後に、④理解度チェックです。講義の後、理解度を確認する選択問題への解答を、クイズの解答と一緒に提出してもらうようにしています。
 デジタル教科書にクイズなどを予め共有しておくと、クイズの答えを予め考えてくる学生が出てきます。そうした学生が講義中に発表してくれたら最高です。ある学生の発言から他の学生の理解が促され、互いに学び合うことができます。そうやって、学びが習慣になると、日々が豊かになりそうです。

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