『メル・リルルの花火』第3話をみました

【芝居のポイント】
 『物語の境目』を考える

【公演概要】
おぼんろ第18回本公演『メル・リルルの花火』
語り部:末原拓馬、さひがしジュンペイ、わかばやしめぐみ、高橋倫平、黒沢ともよ、田所あずさ
ムーブメントアクター:渡辺翔史、坂井絢香、山城秀彬、miotchery、堀田聖奈、権田菜々子
公演期間:2020年4月17日(金)~26日(日)
劇場はオンライン(公式YouTubeチャンネル):https://www.youtube.com/channel/UC5gxLbqTgaKOcfOI2k0CIJQ
公式ホームページ:https://www.obonro-web.com/16-1

2020/04/18/19:00開演観劇

 自宅からPCを通してオンライン上の劇場にアクセスすると、まずは語り部たちのおしゃべり(?)や独白が聞こえる。これがまず一層目の物語、現実と芝居の間に位置する、いわば芝居の開演前に客席やロビーで演者をみているような時間かと感じている。おぼんろの公演では演者が客入れをするのが印象深いのだが、私はそれを思い起こしている。今回は語り部本人という位置づけではあるがこれも芝居の中に組み込まれている会話なので直接会っているときのオフショット感はない変わりにがっつりパフォーマンスである点は大きな違いではあるのだが。ある意味語り部と言う存在が第1層目にいて、第2層目として芝居の本編があるという構造は、おぼんろが以前から用いてきた手法だと思っている。
 今回新しいと感じるのは、第2層目に物語が並行に並んで三つ進んでいく点だ。1本目の道は『メル・リルルの花火』ストーリー、としたら良いのだろうか。ヒトマカセやメブキ・チルがペズロウの塔を冒険(?)する物語が現在展開している。二つ目の道にあるのは、そのペズロウの塔をさまよう『ペズロウの幽霊たち』の物語。1本目と2本目の道はかなり近しくいくつも交差点があるようで、同じ人物が登場したりする。奇妙なのが3本目の道、制作過程のドキュメンタリーである。正直最初はかなり疑問に思った。「これはあくまでおまけの位置づけだろう」と。しかし、3話目をみているとき、これは単なるフィクションの種明し的な意味合いではないのでは、過去に起こっていたこととしてではなくこれも3本目の物語として存在しているのではないか、という想像が生まれたのだ。例えばこのドキュメンタリーに登場する人々はヒトマカセたちの通信マッキナの音声が聞こえたからその再現として芝居を作っているのだとしたら…。そんな風にみているうちに、拓馬さんの「はいはいはい」という声で第1層に戻ってきた。
 最後に使われた『物語の境目』という言葉が気になっている。物語と現実の境目、物語と物語の境目、過去と未来の境目…。あらゆるものを超えられる、それこそ物語の持つ本来の力かもしれない。

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