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小山田圭吾のイジメ炎上騒動の渦中で、爆笑問題・太田が指摘していた「ネットリンチ」の問題点

2021年7月14日、ミュージシャンの小山田圭吾が、東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式で使用される音楽の作曲を担当したと発表された。だが、その翌日15日から、小山田が行ったという学生時代の「イジメ」が問題視されるようになる。

元となったのは、90年代に『ROCKIN'ON JAPAN』および『Quick Japan』に掲載されていたインタビュー記事であり、障がいをもつ生徒を含む同級生らにイジメ行為をしていたと自ら語っていた内容だった。

毎日新聞がこの問題を取り上げると、小山田への批判は激化していった。五輪組織委員会は「現在は高い倫理観を持っている」として問題の沈静化を図ったが批判の声は収まることはなく、19日には小山田自らが辞任を申し出ている。

小山田が辞任へと追い込まれるほどに批判の嵐が起こっている中、爆笑問題・太田光は19日放送のTBS系の番組『サンデージャポン』の中で擁護する発言を行っている。

「当時の雑誌がそれを掲載して、これを許容して校閲通っている。それは、サブカルチャーにそういう局面があったということなんですよ。その時代の価値観と今の時代の価値観がある。その時代の価値観を知りながら評価しないとなかなか難しいんですよ」

「つるしあげのような…彼が退場するまで続けるのかって話で、それはまた連鎖になってしまうんじゃないか、と思うんですよ」

太田光による反論

この発言によって、太田にも批判の矛先が向かうことになる。事務所にもクレームが殺到し、太田の擁護的な発言は「無理筋」であるという批判記事もネット上に掲載されていた。

そんな中、太田は21日放送のTBS系のラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』の中で、次のように反論している(*1)。

「あれを、あの時代、許容した局面があったんじゃないかと言ったのは、90年代のサブカルチャーの全てが、あれが当たり前だったって言ったってことじゃなくて、サブカルチャーの中の一部、まぁクイックジャパンとロッキンオンだよね。その一部に、あれを許容する局面があったんじゃないかっていうことを、まぁ俺は言いたかったのね

「そこを踏まえて考えないと、あの小山田圭吾の一連の出来事っていうのは、ちゃんとした判断が下せないんじゃないかと、俺は思ったの」

「これは俺の考えだから。で、まぁそんなことすら許せないって言う人も確かにいて。だけど、俺があの小山田圭吾のやったいじめの行為を、あの時代、当たり前だったって言ったように思っている人もいて。それはね、俺はそうじゃないつもりで言ったつもりなんだけど。あの記事を許容するってことを言ったつもりなんだけど

「クイックジャパンのあの記事が、あの当時でてね、で、さして問題にもならず、多少の問題になったという人もいるけど、問題にもならず、クイックジャパンが未だに雑誌として続いてるっていうこと。それはやっぱり、社会があれを許容した局面は、俺はあったんだっていうのは、申し訳ないけど、これは未だに俺は思ってるんですよ

「で、中には、多少あれが嫌だと思ったかもしれないけど、編集会議で出しちゃえ、と。問題起きるかもしれないけど出しちゃえ、と。それが発売され、店頭に並び。それを中には面白く読んだ読者もいたんじゃないかな、と」

「…だから、つまりその周りの状況を考えないと、今、小山田圭吾一人に攻撃が集中してるけど、実はあの小山田圭吾の存在の仕方を許した環境も含めて考えないと、ちゃんとした判断はできないんじゃないか、ということを俺は言いたい」

93~4年当時、SNSもなく、今ほどコンプラ意識も高くなかった時代である。2ちゃんねるでコピペが作成され、一部はてなブログで問題点を指摘しているものもあったが、ネット炎上のように問題が広がっていくことはなかった。

問題であると感じていた読者もいたであろうが、2021年7月のような様相を呈することはなく、雑誌が廃刊に追い込まれるようなことはなかった。そのことをもって、ある程度は記事が「許容されていた」と言うことはできるのではないか、と太田は指摘していたわけである。

さらに、太田は小山田を辞任に追い込んだ「ネットリンチ」をする人々について、次のように語っている(*2)。

ネットリンチが正当化される「危うい世界」

「恐らくだから今の俺に対する反応を見てるとね、今のこの時点で小山田圭吾っていうのは、この瞬間、少しでも擁護することを許されない人物になっているんです。少しでも擁護した人間は、同じように消えろという。退場するべきだ、と、このテレビという世界、あるいはこの世界から。それは同罪だからっていうふうな、今全体的な雰囲気がそうなってるんですよ」

「俺はそれを、また批判されるかもしれないけど、その世界を危うい世界だと俺は思っているんですよ。で、それはなんでかって言うと、『小山田を許せ』って言ってるわけじゃないんですよ、俺は

「俺が引っかかってるのは、人が人を裁いていいもんじゃないって俺は思ってるんですよ。裁くのは司法でしょ、そのはずじゃないといけないと思って。『あんな極悪人だぞ。お前、それでもそれを言うのか。お前は冷血だ』って言われるんだけど。まぁたしかにそういう意味では俺、冷酷なのかもしれないけど。でも、それを守らないと、この世界は無法地帯になってしまうと思うんですよ」

「それはいつ頃から始まったのかなということを考えると、ワイドショーがね、そういうことを始めたのは恐らく三浦事件のロス疑惑のあたりから、梨本さんあたりが警察より先んじて、どんどん事件を追っていく。で、実際に三浦という人物は、たしかに怪しい人物だったっていうのは、我々、ワイドショーを見てそう思うわけですよ」

「彼自身も、テレビ出るのが好きだったっていう状態があって、それが劇場型って言われて。あの辺りから始まってきて、俺はあの時から実は疑問だったんです。テレビが、人を裁くということ」

9月17日に、小山田本人による謝罪と経緯説明がCorneliusのホームページに掲載されているが、その内容によれば「障がいをあることを理由に陰惨な暴力行為を長年に渡って続けた事実はありません」「傍観者という自分の立場を含め冗談交じりに語ってしまった」としている。

いくつかのエピソードがパッチワークのように一つのエピソードとして組み合わされ、またインタビューで「盛って」喋ったことにより、小山田が長年、繰り返してイジメをしていたかのようなイメージが作り上げられてしまった。その結果、「あんな極悪人だぞ。お前、それでもそれを言うのか」と、わずかな擁護も許されないような人物とされてしまった。

そのネットリンチが正当化されるかのような流れに、太田は「俺はそれを、また批判されるかもしれないけど、その世界を危うい世界だと俺は思っている」「俺が引っかかってるのは、人が人を裁いていいもんじゃないって俺は思ってるんですよ。裁くのは司法でしょ」と指摘している。

続けて、太田は自身にも飛び火してきた、そのネットリンチの苛烈さについて、次のように語っている(*3)。

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