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世界遺産アカデミー 認定講師研修2022

「認定講師になること」とは

世界遺産検定のマイスターに合格すると、世界遺産アカデミーが行う認定講師研修に参加できる権利が与えられます。人数が多く、抽選になる事もありますが、運良く抽選に当たると研修を受け、晴れて公式認定講師となることができるのです。

認定講師とはいったいどんなことなのか。
世界遺産・世界遺産条約は、何かこう、キラキラしているような、あるいは歴史の重みを感じるような、そんなイメージがありませんか?もちろん、世界遺産の絶景や素晴らしい建築物に触れると、心が躍りますよね。

しかしこの世界遺産条約だったり、指定される世界遺産というのは、観光を目的とするものではありませんし、単に保護するだけの決まりごとというわけではありません。

じゃあいったい何なのか。

少なくとも、世界遺産登録を目指す地域は、そもそも世界遺産とはなんなのか、世界遺産条約とはどういうもので、どういう歴史があり、どういう手順を踏んで、どういう条件だったら世界遺産登録への道が開けるのかを知っていないといけませんよね。

「世界遺産?うちの町にある山はきれいだから世界遺産に登録だ!」

これではどんなに歴史的重み、自然界の驚異があったとしても、審査する方だって何が何だかわかりませんよね。もし人類にとって価値のあるものであれば、さらにはそれが世界の人々の心に響き、平和な社会構築に貢献するものであれば、きちんと系統立ててその遺産候補の価値を証明(説明)しなければなりませんよね。

近所の川がきれいだから……では世界遺産にならないのです。

世界遺産を通して、何がどう大切で、世界遺産として守っていくことがどういう意味として未来に繋がっていくのか、そういうことをわかりやすく説くのが「認定講師」という職種だと思っています。(昨日講習を受けたばかりで、まだ自分の中でも考えが熟していないので、世界遺産アカデミーから「違うよー!」とか言われたら困りますが笑)

認定講師研修を受けてきました

その認定講師研修。今回は抽選に通ることができたので早速参加をしてきました。

2022年3月5日土曜日。場所は新宿のミライナタワーの一室でした。
この日は、総勢24名のマイスターの皆さんが抽選に通って集結していました。まぁ、正直言って「濃かった」です。部屋の空気が濃密な感じ。

4〜5名ずつに分けられたテーブル×5つがあり、比較的ジェンダーや年齢層もミックスされていましたが、世界遺産アカデミーさんのほうで考えている趣旨があったのかもしれません。

休憩を10分ほど挟み計3時間の研修です。講師は世界遺産アカデミー講師の宮澤光さんでした。宮澤さんは、さまざまな著書やアカデミーのサイトに出ている写真、あるいは世界遺産検定に関するレッスンの映像の中では、博学なのはもちろんでしょうが、非常に堅そうでちょっと話しにくそうに見えるのですが、実物は比較的カジュアルなお話しもされる方で、印象がだいぶ違いました。

はじめの1時間半は、講師としての心構え、プレゼンの方法、講師としての雰囲気作り、話し方のテクニック、流れの作り方などの講義でした。今回参加している方々の中には、テレビメディアで活躍されている方、国家and地方公務員、大学生、一般社会人等かなり幅広いジャンルで、例えば学校の先生や、私のようにしゃべるのが仕事という人ばかりではなく、プレゼンそのものが「緊張する」、人前で話すのに抵抗がある(←本当はないかも。だから講師の研修にいらしてたんだと思いますが)というような人たちには特に参考になったのではないかと思います。

プレゼンについては、そういう本を読んでも実際にうまく回すことはできないからです。たとえちょっとうまくっても、イレギュラーが発生すると対処できなくなってしまう

後半の1時間半は、グループワークでした。各グループに与えられた特定のテーマのスライド(パワーポイントの画面)について一人ひとりがプレゼンを考え、グループ内で発表し、最後にAグループから順に代表を出して、模擬プレゼンを全員の前に立ち3分以内で発表するというもの。

自分は前に出て発表しなかったのですが、同じグループの方が非常に流暢な発表をされていました。あのようにはできないなぁ、上手だなぁと感心しました。自分の知識の整理不足、まとめ下手なのがモロに出て、理解はしているのにそれをうまく人に伝えられない。家庭教師や何かの先生をやったことがある人は経験があるかもしれませんが、1時間何かを教えるためには3時間の準備が必要なんですよね。今回も3分のために10分ほど頂きましたが、グループ内で話しているときに妙に緊張して話すことが飛んでしまい、うまく話せなかったんです。「あーこの方たちもマイスター合格した方たちなんだよなぁ」とふと考えてしまったらそのあとがボロボロ。集中していなかったんだとは思いますが、それ以前にやっぱり「まとめ下手」なのを反省しました。その分、今回はそれぞれの方の発表の「エッセンス」を吸収させて頂きました。

講師としてのNG行為

講師の宮澤さんが複数回繰り返されていたのが、依頼者から頼まれてもいないのに「自分の旅行記」「旅の自慢話」を中心に据えないこと。これは確かにそうで、「わかっている人が配慮をしないで説明をすると、わかっていない人には伝わらない」ことがあるのです。宮澤さんは「真正性」を例に挙げていらっしゃいましたが、例えば意識の高い聴講者ではなく、世界遺産にさほど興味があるわけでもない人の割合が多いところで、「モン・サン・ミッシェルくらいは知っているだろう」「イコモスくらいわかるだろう」という思い込みで話をすれば、たちまち興味が薄れて苦痛になり、ドン引きをされてしまいます。つまらない、と思われてしまいます。あるいは「面倒くさい」と思われてします。そこで自分の経験談を話すのもいいのですが、うまく話さないと「世界遺産に行った自慢」に聞こえてしまい、これも失敗する例だと思います。

私の場合、世界遺産であってもなくても、現地で通訳をした時に後日こんなクレームをもらったことがあります。

世界史の勉強に来たんじゃない
“専門用語を当たり前のように使われてもわからない”

確かにそうです。そこに来ている人たちは、例えば「ガウディに興味があるけど、サグラダファミリア教会しかわからない。あとのことは小難しくて本も読んだことがない。でもあの教会の変わった形だけは好き」という可能性も高いのです。

認定講師の話は、知識自慢のように捉えられてはいけない。
認定講師は、世界遺産検定メンバーの内輪の集まりで話すのではない。
認定講師は、単に遺産の説明だけをする人ではない。(→それはガイド)
認定講師は、「講師」なので、複雑な内容を話術やプレゼンで紐解き理解してもらう。

こういうことなのですね。認定講師の「認定」を取り、そもそも「講師」の役割をよく考えて、事に当たらなければならないのです。

研修を終えて

時間が3時間という制限、そしてコロナ禍ということもあって、「認定講師の同期」の皆さんと知り合うタイミングがなく、ちょっと残念でした。特に私のようにnote.comと仕事インスタ以外の、いわゆるメジャーなSNSやブログというものを一切やっていないと、つながりがないのですね。

今回の研修では、マイスターやリスタ・リピーターという恐ろしい経歴の人「しか」いない、ホントにホントに「濃厚な」空気の中に身をおけたこと自体がまずは良い経験になりました。一方で、リスタにも挑戦して、常に知識をアップデートしていかなければいけないことも改めて認識をしました。

さらに、ほかの「しゃべる職業」の方のプレゼンも垣間見られたことで、自分のトークの修正点を見つけられたように思います。

今後、世界遺産アカデミーから依頼があるかもしれません。あるいは自分の仕事のつながりで、講義の機会を得られるかもしれません。単なるマイスターから「伝えるプロのマイスター」へ変化を遂げられるときだと思います。

抽選で受講機会を頂いたわけですから、これを無駄にしないよう今後も精進をしていきたいと思います。