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"今"と"過去"をつなぐ世界史のまとめ

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【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・帝国書院の比較編

この記事の要約この記事は長い(約40000字)のではじめに要約を書いておきます。 以前、山川出版社の新しい世界史教科書の用語がどのように変化したのか記事を書いたことがあった。しかし、必ずしも単純に「増えた」「減った」と言えないのではないかという事実がみえてきた。 そこで今回は帝国書院の世界史探究教科書の収録語と、山川の収録語を比較することで、山川が収録しなかった用語とは何かをあぶり出してみることとした。 これによって、世界史の教科書にも多様な編集方針があり、その背後には

【ニッポンの世界史】#26 テクノロジーと精神文化:マクニールの世界史は、何が新しかったのか?

世界は3つの文化圏でできている?  さて、ここで視点をいったん”公式”世界史の動向に戻しましょう。  1970年度の学習指導要領改訂では、前近代には三大文化圏(ヨーロッパ、イスラム、中国)に分けて学習していく文化圏学習が導入されたのでしたね。  しかしこの分け方に対しては当時から批判もありました。 ・ヨーロッパは多数派を占めた宗教の名前から「キリスト教文化圏」といわないのに、なぜイスラム文化圏と呼ぶのか? ・「イスラム文化圏」はアフリカ、中東だけでなく中央アジアやイン

【ニッポンの世界史】#25 越境する中国史:陳舜臣のユーラシア的想像力

 この評伝で紹介されているのは、1970年代の大衆歴史ブームを土壌として、日本を超える視点から、イスラムと中国を繋ぐ立場を果たした作家、陳舜臣(1924〜2008)です。  この陳舜臣という人が、「ニッポンの世界史」の再定義に、どのようなかかわりをもったか、今回はこれをみていくことにしましょう。 中国史の案内人  陳の魅力をひとことでいえば、まるで見てきたかのように中国の歴史を解き明かし、現代世界とのつながりを意識させるところにあります。    本籍は台湾にありましたが

【共通テスト2024解説】 アレクサンドロスをどう見るか?

1月13日に実施された2024年度の大学入試共通テストで、アレクサンドロス大王に関する問題が出題されました。 世界史Bの共通テストは次の追試験の問題で最後となります。 まだすべての日程が終わらず、そわそわしているところですが、次年度からはじまる世界史探究の共通テストの方針をうらなう上でも、気になる出題でしたので、そわそわの紛らわしにピックアップしてみます。 結論から言えば、おそらく、作問のベースにあるのは、森谷公俊氏の著作です。 以前からアレクサンドロス大王の扱い方はその評