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"今"と"過去"をつなぐ世界史のまとめ

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2024年3月の記事一覧

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・帝国書院の比較編

この記事の要約この記事は長い(約40000字)のではじめに要約を書いておきます。 以前、山川出版社の新しい世界史教科書の用語がどのように変化したのか記事を書いたことがあった。しかし、必ずしも単純に「増えた」「減った」と言えないのではないかという事実がみえてきた。 そこで今回は帝国書院の世界史探究教科書の収録語と、山川の収録語を比較することで、山川が収録しなかった用語とは何かをあぶり出してみることとした。 これによって、世界史の教科書にも多様な編集方針があり、その背後には

【ニッポンの世界史】#31 学習参考書と世界史:なぜ世界史は「暗記地獄」化したのか?

 これまで私たちは、「ニッポンの世界史」は、アカデミズムや学習指導要領のような“公式”世界史と、それらと対抗関係にある“非公式” 世界史の綱引きによって形成されてきた経緯をみてきました。  “公式”の語りを、“非公式”の語りが突き崩すといっても、両者の間に厚い壁があったわけではありません。  ときに、ひとりの書き手が、両者を行ったり来たりすることもみられました。  歴史学者の土井正興(1924〜1993)がそれにあたります。 土井正興: スパルタクスの研究者から教科書執

【ニッポンの世界史】#30 文化圏の罠:世界史に「アフリカ」は入っているか?

周縁の不在  1970年代の社会科教育に関する雑誌をみてみると、「好きな国」を聞くアンケートをとってみたり、何も見ずに地図を書かせてみたりして、「生徒たちの関心がヨーロッパにばかり向いている」という嘆き節が、よく掲載されています。  この地図くらい描ければ十分とも思えるのですが、たとえば職業系の高校において同じようなことをやらせてみても、全然描けない。  世界史の授業中に顔をあげさせるだけでも難しい。  そういった嘆きも聞かれるようになります。  国外に眼を向ければ、世界