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「世界はジャズを求めてる」2021年8月第1週(8月4日)放送分スクリプト(出演 村井康司)#鎌倉FM

テーマ曲:What A World Needs Now Is Love/Stan Getz


*こんばんは、毎週木曜午後8時からお送りしている「世界はジャズを求めてる」、第一週は音楽評論家の村井康司がお届けします。
番組の感想、リクエストなどは、鎌倉FMホームページの送信フォームや、ツイッター、フェイスブックなどでどしどしお寄せください。ツイッターでは、ハッシュタグ「#世界はジャズを求めてる」を付けていただければ助かります。また、noteにもこの番組のページがありまして、番組の選曲リストや概要などをご紹介しています。Noteで、「世界はジャズを求めてる」で検索していただければ、私たちのページをご覧になることができます。そちらもよろしくお願いします!

*さて、今日は8月5日です。ちょうど120年前、1901年8月4日にニューオリンズで生まれ、50年前、1971年7月6日に70歳で亡くなった偉大なトランペッター、ルイ・アームストロングの曲を何曲かご紹介しつつ、彼の故郷ニューオリンズの音楽をかけてみたいと思っています。まずは1926年2月、ルイがコルネットとヴォーカルを聴かせる名演、「Heebie Jeebies」をお聴きください。

M1 Heebie Jeebies / Louis Armstrong



「Heebie Jeebies」でした。これ、ジャズの世界ではじめて本格的なスキャットが録音された曲だとされています。途中で歌詞カードを落っことした、という説もありますが、まあ最初から狙ってやってたんでしょうね。
ちなみにルイのニックネームは「サッチモ」。これの由来も諸説ありまして、がま口のような口、「サッチェルマウス」からとも、あんなに大きな口!「サッチ・ア・マウス」からとも言われています。まあとにかく大きな口が印象的だったのでしょう。
次は1928年に録音された「ウェストエンド・ブルース」です。この曲のイントロのトランペット・ソロはジャズ史に残る名演でして、このソロから「芸術としてのジャズ」が始まった、と断言する批評家もいるほどです。お聞きください。

M2 West End Blues / Louis Armstrong



「ウェストエンド・ブルース」でした。この曲のピアノはアール・ハインズ、次はハインズとサッチモのデュオを聴いてみましょうか。「ウェザーバード」です。

M3 Weather Bird / ルイ・アームストロング & アール・ハインズ



ルイ・アームストロングとアール・ハインズのデュオで、これも1928年録音の「ウェザーバード」でした。
こうして20年代のサッチモはすばらしい演奏と歌を聴かせてスターになったわけですが、彼は30年代以降、ラテンやシャンソンの曲も採りあげて、より広い範囲の音楽ファンも魅了する世界的大スターになっていきます。そのきっかけともいえる30年の録音、「ピーナッツベンダー」、「南京豆売り」をお聞きください。

M4 The Peanut Vendor/ Louis Armstrong


 
「ピーナッツベンダー」、「南京豆売り」でした。これはもともとキューバの曲で、「エル・マニセロ」というタイトルです。

さて、この後はサッチモ以降のニューオリンズの音楽をどんどんかけていきましょう。まずは40年代から活躍したピアニスト、プロフェッサー・ロングヘアです。「マルディグラ・イン・ニューオリンズ」をお聞きください。

M5 Mardi Gras in New Orleans/ Professor Longhair



プロフェッサー・ロングヘアの「マルディグラ・イン・ニューオリンズ」でした。マルディグラはニューオリンズのカーニバルのこと。この曲のリズムはカリブ海音楽の雰囲気がありますね。次はニューオリンズ出身の歌手、ファッツ・ドミノのヒット、「ブルーベリー・ヒル」です。

M6 Blueberry Hill/ Fats Domino



ファッツ・ドミノの56年のヒット「ブルーベリー・ヒル」でした。ファッツ・ドミノさんは2006年のハリケーン「カトリーナ」で行方不明になったんですが、無事でした。そして2017年に亡くなりました。
次は、ニューオリンズ郊外の「ケイジャン」という人たちの間で盛んな「ザディコ」という音楽です。これはアコーディオンを中心とした一種のブルースなんですけど、なんとも不思議な味わいの音楽です。ザディコを代表するアコーディオン奏者、クリフトン・シェニエの「ルイジアナ・ストンプ」です。

M7 Louisiana Stomp /Clifton Chenier



クリフトン・シェニエの「ルイジアナ・ストンプ」でした。ケイジャン料理といえばザリガニやナマズが有名ですが、なんかそんなテイストなんですよね、ザディコって。
次は、ニューオリンズで60~70年代に活躍したファンク・バンド、ミーターズの「シシー・ストラット」をお聞きください。

M8 Cissy Strut/ The Meters



ミーターズの「シシー・ストラット」でした。彼らはスタジオ・ミュージシャンとしてもさまざまなニューオリンズ音楽の録音に関わりました。ミーターズを多く起用したプロデューサーでピアニスト、作曲家がアラン・トゥーサンです。では、アラン・トゥーサンの「サザン・ナイト」を聴いてみましょう。

M9 Southern Nights/ Allen Toussaint



アラン・トゥーサンの「サザン・ナイト」でした。南部のまったりとした夜、という雰囲気ですねえ。アラン・トゥーサンの後輩にあたるのが、シンガーでピアニストのドクター・ジョンです。彼がニューオリンズの伝統的な音楽を採りあげたアルバム『ガンボ』から、「アイコ・アイコ」をどうぞ。

M10 Iko Iko / Dr. John



ドクター・ジョン「アイコ・アイコ」でした。『ガンボ』が出たのが70年代初めのことで、これは日本の大滝詠一や細野晴臣たちに大きな影響を与えたアルバム。たしかにこれって大滝詠一さんの感じがありますよね。
次です。ミーターズやトゥーサンたちとも深い関わりがあるネヴィル兄弟のバンド、ネヴィル・ブラザーズの「ヴードゥー」です。

M11 Voo Doo / Neville Brothers



ネヴィル・ブラザーズの「ヴードゥー」でした。ヴードゥーというのは、ハイチからニューオリンズに入ってきたアフリカ系の民間宗教です。今でもニューオリンズにはヴードゥーショップというのがあって、怪しげなグッズを売っているんですけど、さて御利益はあるんでしょうか。次はブラスバンドを1曲ご紹介しましょう。ニューオリンズは昔からブラスバンドが盛んで、お葬式のときには今でもブラスバンドが先導するのですが、この「ダーティダズン・ブラスバンド」は、ブラスバンド編成でファンクもやる、というバンド。彼らに影響されて、80年代以降たくさんのこうした新しいブラスバンドが活動しています。ではダーティダズン・ブラスバンドの「フィート・キャント・フェイル・ミー・ナウ」です。

M12 Feet Can't Fail Me Now/ Dirty Dozen Brass Band


ダーティダズン・ブラスバンドの「フィート・キャント・フェイル・ミー・ナウ」でした。

M13 Careless Love/ Kermit Ruffins


さて今後ろに流れているのは、現在のニューオリンズで人気のトランペッターで歌手、カーミット・ラフィンズの「ケアレス・ラヴ」です。
この曲をバックに、今日はレイ・セレスティンのミステリー「アックスマンのジャズ」をご紹介します。この小説は1918年から19年にかけてニューオリンズで起きた連続殺人事件を元にしたもので、犯人が新聞社に送ってきた手紙に、なんと「ジャズを聴いていない者は斧で殺す」と書いてあるんです! ジャズが好きな人たちは胸をなで下ろした、かどうかはわかりませんが、この小説で犯人を追うのは探偵見習いの女の子アイダと、彼女の友だちのコルネット奏者ルイス・アームストロングなんですね。というわけで、ジャズ・ファン、サッチモのファンなら必読の、とてもおもしろい小説です。レイ・セレスティン「アックスマンのジャズ」、早川書房から出ております。



さて、ニューオリンズの繁華街フレンチクォーターに「プリザヴェーション・ホール」というジャズクラブがあります。由緒正しい古いスタイルのニューオリンズ・ジャズを聴かせるクラブなんですけど、そこのハウス・バンドである「プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド」が、ここのところ意欲的なアルバムを何枚か出しています。
2013年のアルバム「ザッツ・イット!」から「ディア・ロード」をお聞きください。

M14 Dear Lord (Give Me The Strength)/ Preservation Hall Jazz Band



プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドの「ディア・ロード」でした。このバンドは20代から80代までのメンバーがいるんですが、この「ザッツ・イット!」は、初めて彼らがオリジナル曲だけを演奏したアルバムです。
ニューオリンズとカリブ海のつながりは非常に深いのですが、次におかけする曲はそれを象徴するようなタイトルです。ダグ・ベロテの「ケイジャン・イン・キューバ」です。

M15 Cajuns In Cuba / Doug Belote



ニューオリンズのドラマー、ダグ・ベロテの「ケイジャン・イン・キューバ」でした。今のニューオリンズ・ジャズもなかなか魅力的だということがおわかりいただけると思います。

さて、今日のお別れの曲です。ルイ・アームストロング、そしてニューオリンズといえばやはりこの曲、「聖者の行進」をどうぞ。

M16 When The Saints Go Marchin' In/  Louis Armstrong



「世界はジャズを求めてる」、 8月第一週のお相手は、音楽評論家の村井康司でした。ルイ・アームストロングさん、ハッピーバースデイ!
来週の進行役は、音楽書籍編集者の池上信次さんです。
では来週も木曜午後8時から、鎌倉FMでお会いしましょう!

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世界はジャズを求めてる」は鎌倉FMで毎週木曜午後8時から1時間(再放送は毎週日曜昼の12時から)、週替りのパーソナリティが、さまざまなジャズとその周辺の音楽をご紹介するプログラムです。

進行役は、第1週が村井康司、第2週が池上信次、第3週が柳樂光隆、第4週がeLPop(伊藤嘉章・岡本郁生)、そして第5週がある月はスペシャル・プログラムです。

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