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「#世界はジャズを求めてる」2021.8月4週(8/26)『映画"In The Heights"とラテンジャズ』eLPop伊藤嘉章・岡本郁生 #鎌倉FM

『世界はジャズを求めてる』第4週は「ラテンとジャズの危険な関係」。eLPopの伊藤嘉章(mofongo)と岡本郁生(el Caminante)がお送りします。ジャズ評論家の油井正一さん「ジャズはカリブ音楽の一種」と喝破されたように成り立ちから一つのラテンとジャズは、垣根を意識することなくお互いに溶け合ってきています。そんな関係のカッコいい曲をお届できればと。番組をお聴きになってラテンに興味がでた方、ラテンがお好きな方はラテン音楽Web マガジン「エル・ポップ(eLPop)」など覗いて頂けたら幸いです。(URL=http://elpop.jp)


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さて8月ですが、「Jazzy」というタイトルの曲から。

1. "Jazzy" Willie Colon from 「El Malo」(1967)

Eddie Guagua(b), Pablo Rosario(bongo), Mario Galagarza(congas), Dwight Brewster(p), Nick Marrero(timb), Joe Santiago(tb), Willie Colón(tb), Elliot Romero, Yayo El Indio(coro), Hector Lavoe(vo)

サルサを牽引したファニア・レーベルから17歳でデビューしたウイリー・コロン。そのデビュー盤の一曲目の曲。クラブ・シーンでも人気の定番曲。最新のかっこいいサルサ、ブガルーなどを揃えたデビュー盤のトップに「Jazzy」というタイトルのインストメンタル・ナンバーを持ってきたのはなぜか?これはニューヨークのラテン・コミュニティーでは「ジャズっぽい」のか?など、考えてみるのも色々面白い曲です。

Jazzy - WILLIE COLON

2. "The Club" from In The Heights (2021)

ルベン・ロドリゲス/Rubén Rodríguez(b), ネルソン・ゴンサレス/Nelson González(tres), ルイシート・キンテーロ/Luisito Quintero(perc), カミノ・モリーナ/Camino Molina-Gaetan(perc), ジョー・フィドラー/Joe Fiedler(tb), コンラッド・ハーヴェグ/Conrad Herweg(tb), ジョナサン・パウエル/Jonathan Powell(tp) などなど。またルベン・ブラデス/Rubén Blades や マーク・アンソニー/Marc Anthonyも参加

NYのラテンコミュニティが舞台の映画『イン・ザ・ハイツ』が7月末に日本全国で封切りになりヒットしています。元々ブロードウエーで大当たりしトニー賞4部門やグラミー賞を受賞した作品の映画化。映画もミュージカル映画で圧巻のダンスシーンとサウンド・トラックが好評。アカデミーの声も高い作品です。この映画を起点として「ジャズとラテンの関係」を聴いていきたいと思います。

映画のダンスシーンからNYのラテン・コミュニティの状況を反映したサルサ、ジャズなどの混在する曲をどうぞ。演奏はエディ・パルミエリのバックを務めるNYのラテン/ジャズの上記の腕っこきたち。

The Club - In The Heights Motion Picture Soundtrack


https://youtu.be/PuIIlEr_xGo

3. "Latin Flight" Tito Puente & Woody Harman from 「Herman's Heat & Puente's Beat」(1958)  

NYのラテンとジャズの交差と言えば50年代のマンボ。ジャズ・クラブの「バードランド」とラテン・ボールルーム(ダンスクラブ)の「パレイディアム」はワンブロックの距離で、休憩時間にミュージシャンはお互いのプレイを聴きに動いたり、また二つの分野の仕事を普通にこなしたりと、垣根なく音や感覚が交差していました。お聴き頂くのはジャズ側のウディ・ハーマンとその管のセクション+ラテン側ティト・プエンテとそのリズム・セクションが共演した曲。アル・コーン(ts)やアーニー・ロイヤル(tp)などがラテンのノリをばっちりこなし、ボビー・ロドリゲス(b)や若きレイ・バレット(perc)がジャズ感覚とのすり合わせをこなすという点も聴き所です。

Woody Herman(cl, as), Timbales – Tito Puente
Robert Rodriguez (b), Gilbert Lopez(perc), Ray Barretto(perc), Ray Rodriguez(perc)
Al Cohn(ts) , Danny Bank(sax) , Paul Quinichette(ys), Peter Mondello(sax), Sam Marowitz(sax) , Bill Elton(tb), Billy Byers(tb), Frank Rehak(tb)
Ernie Royal(tp), Hal Posey(tp), Marky Markowitz(tp) , Nick Travis(tp) , Steve Lipkins(tp)

Latin Flight


https://youtu.be/qHSq3YtwpX0

4. "New Beginning" Seis del Solar from 「Alternate Roots」(1995)  


『イン・ザ・ハイツ』のサウンドトラック3曲目の冒頭にはサルサのルベン・ブラデス(vo)が参加しています。この番組でも一度ビッグバンドを率いた彼のアルバムをご紹介しましたが、ジャズも愛する彼のバック・バンド”セイス・デル・ソラール”はまさにラテンとジャズの両方を軽々とこなす名手がそろっています。

Paoli Mejías(congas/chekele), Robbie Ameen(ds,guiro), John Benítez(b, vo), Oscar Hernandéz(p,vo), Bobby Franceschini(sax,vo), Ralph Irizarry(timb)

Seis Del Solar - New Beginning


https://youtu.be/J3JXxi-l2ws


5. "Caña Brava" Juan Colón y Manuel Tejada from 「Con el Alma de Tavito」 (1998)

『イン・ザ・ハイツ』はマンハッタンの北端にあるヒスパニックが7割を占める地区が舞台で、その大半がカリブ海のドミニカ共和国にルーツを持つ人たちです。
ドミニカ共和国の音楽と言えばメレンゲ。そのメレンゲの名曲「カーニャ・ブラバ」をジャズ感覚たっぷりに取り上げた作品です。

Juan Colon(vo, arr), Juan De La Cruz (tamboura), Rafael "Rafo" German(guira), Juan Francisco Ordonez(g)Pedro Tene Peralta (congas)Manuel Tejada (vo, arr)

Juan Colón y Manuel Tejada - Caña Brava (1998)


https://youtu.be/f0iGy_SP8D4

6. "Along Came Betty" Jerry Gonzalez & The Fort Apache Band from 「Rumba Buhaina」(2005)

NYのラテンコミュニティーと言えば、まずマンハッタンのイースト・ハーレム、ワシントン・ハイツ、ローワー・イーストサイド、そしてハーレム川を挟んだブロンクス区。
80年代はドラッグや貧困で荒廃したブロンクスですが、当時ポール・ニューマン主演で『アパッチ砦ブロンクス』という映画も作られました。その名前を逆手に取って自己のバンドにつけたのがジェリー・ゴンサレス(tp, congas)。

ニューヨークのラテン・ジャス/ジャズの名手揃いのこのユニットがアート・ブレイキーへのオマージュを録音したのがアルバム「ルンバ・ブアイナ」。フレディ・ハバード、ウエイン・ショーターなどの曲が並びますが、この曲はメッセンジャーズ1958年のベニー・ゴルソンの曲。ここではワワンコーのスタイルで演奏されています。

Steve Berrios(ds,perc), Joe Ford(as,ss), Andy González(b), Jerry González(Congas, tp, flh), Larry Willis(p)

Along Came Betty


https://youtu.be/q_YIxPNJqCI

7. "Hackensack" Steve Khan from 「Subtext en Azul」(2014)

ここからインザ・ハイツからはなれてまず一曲。ギタリストのスティーヴ・カーンと言えば、ジャズ、フュージョンのイメージが強いが、ラテンと強く交差する作品も多いです。その中から、ジャズ側はランディ・ブレッカー(flh)やデニス・チェンバーズ(ds)などラテン側はルベン・ロドリゲス(b)やボビー・アジェンデ(perc)、マーク・キニョーネス(perc)が参加したご存じセロニアス・モンクの作品、と書いて、そもそもXX側と書く必要のない事に気づきました。こういうメンバーでごく自然に様々な曲が取り上げられるのがニューヨークであり、今のラテン&ジャズと言う事だと思います。

Steve Khan(g, vo), Bobby Allende(congas, bongo), Randy Brecker(flh), Dennis Chambers(ds), Mariana Ingold(vo), Rob Mounsey(kyd,vo), Marc Quiñones(bongo, perc), Rubén Rodríguez(b)

Hackensack (放送とは別テイク)

https://youtu.be/E-TNmuyrTms


8. "The Route of Return to Guinea lies in the Rainbow" Gustavo Cortinez from Desafio Candente (2021)

新譜です。メキシコ出身でシカゴで活躍するドラマー、グルタボ・コルティニャスによるラテンアメリカの歴史を描いた作品。LP3枚組/CD2枚組の大作。
ウルグアイのジャーナリスト/作家/歴史家であるエドゥアルド・ガレアーノ(1940-2015)の著書「収奪された大地 ラテンアメリカ500年』(“The Open Veins of Latin America/Las Venas abiertos de America Latina”)(日本では新評論、藤原書店から訳書)にインスパイアされた作られた。奴隷制、植民地主義、帝国主義から新自由主義まで欧州、そして近年はアメリカが中南米から様々に収奪してきた歴史を11ケ国、21人のミュージシャンと共に壮大に描いている。エリントンの”Balck and Tan Fantasy”やチャーリー・ヘイデンのザ・リベレーション・ミュージック・オーケストラを思い起こさせたりもします。

その中から奴隷制を描いた8曲目「虹がギニアに帰る道」という意味の曲を。ベーシストはカメルーン出身のグロス・ンゴレ・ポコシが参加しています。


VIII.La Ruta de Regreso a Guinea está en el Arcoíris - GC & DC ft Gros Ngolle Pokossi & Artie Black


https://youtu.be/88tuB5r8E8k

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「世界はジャズを求めてる」は鎌倉FMで毎週木曜午後8時から1時間(再放送は毎週日曜昼の12時から)、週替りのパーソナリティが、さまざまなジャズとその周辺の音楽をご紹介するプログラムです。
進行役は、第1週が村井康司、第2週が池上信次、第3週が柳樂光隆、第4週がeLPop(伊藤嘉章・岡本郁生)、そして第5週がある月はスペシャル・プログラムです。
鎌倉FMの周波数は82.8MHz。
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