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【観劇記】シェア・ザ・ワールド2020

普段はあまり観に行かない舞台

 2020年2月23日、シェア・ザ・ワールド2020という舞台を紀伊國屋ホールで観てきた。普段、舞台を観ることはあまりないのだが、決して興味が無いわけではない。むしろ興味はあるのだが、劇団や舞台俳優に明るくないため、どの舞台を観に行って良いのかわからない。
 そんな中、今回はいつもお笑いライブの情報を届けてくれるよしもとIDがこの舞台の無料招待抽選のお知らせを届けてくれた。出演者のほとんどは存じ上げなかったものの、脚本・演出が家城さん(マンボウやしろさん)だったことが背中を押し、チケット抽選申し込んだところ、運よく当選したため観劇してきたのであった。

※この先大したことは書いてありませんが、ネタバレを含むので嫌な人はここでそっと閉じてください












シェアハウスが舞台

 シェアハウスに住む男女が物語を進めていく。この設定を聞くと、テラスハウスを連想するが、テイラースイフトの「あの曲」が流される演出だったので、実際に意識されているようだった。本家と同じく、様々な夢を追いかけている人たちが暮らしている。序盤は割とのんびり話が進んでいき、アドリブも散りばめられながら、「自分たちにとって最も身近なこのシェアハウスが平和であることが最も大事」と共通の思いを確かめていた。

変化し始める「平和」

 そんな中、「平和」への綻びが少しずつ見え始める。住人のそれぞれにはお金の貸し借りや仕事の紹介によって、対等とは言えない関係性があることが分かってくる。また、廊下やリビングなど共有スペースの使い方について意見が分かれるなど、対立構造が作られ始める。
 そして、その対立は加速する。住人の一人がYouTubeに載せる動画の企画としてリビングでロケット花火をしてしまったことから、共有スペースであるリビングの使い方、特にリビングでの飲み会の可否について対立する。その決着をポーカーで決めることになるわけだが、住人達は「同盟」を作ることで勝負を優位にしようとたくらむ。ただしこの同盟も公平な関係性ではなかったり、裏切りが起こったりする。徐々に彼らの主張も「自分にとっての平和を維持するために、支配することが必要」となってくる。

虚構ではなかった舞台

 新たな住人「ダック」の登場とポーカーでのイカサマにより勝利を手にした一部の住人たちは、シェアハウス内における支配を強めていく。「ルールは話し合って決定する」としていた面影は一切なく、重視されるのは「お金」へと移っていった。
 しかし、そうした時間も長くは続かない。調子に乗って有り金を突っ込んだギャンブルで大敗し、豪遊することはできなくなり、パワーバランスが崩れたシェアハウスは新たな争いへ…
 このシェアハウスで描かれていたのは、虚構ではなかった。独特な名前(愛称)だと思った登場人物たちが繰り広げていたのは、ここ100年余りの現実世界だった。それぞれの国が、手を繋いだり争ったりして自分の利権を守ろうとする姿を描いたものだった。終盤では、それぞれが演じていた国の伝統的な衣装をまとって登場し、それぞれの言語でセリフを述べる。元々は争いなんて望んでいなかったのに、争いが生まれてしまったこのシェアハウスは、この地球を描いていた。

2回観たい、ということ

 多くの人が2回観たくなると言っていた意味はここにあった。第一次世界大戦あたり以降の世界の情勢が分かっているほうが、住民たちが発する言葉のひとつひとつにより背景を感じることができるのだろう。
 そんなシリアスなストーリーをシリアスにしすぎない、ちょっとした笑いが散りばめられていたのもさすがだった。特にザ・ギースの高佐さんが纏う空気は独特で、存在感を放っていた。
 なお、この舞台を演じるにあたり、出演者の皆さんはこの舞台が描く時代背景を勉強して臨んだそうで、このような勉強の形跡も飾られていた。

 舞台観劇自体がかなり久しぶりだったが、生身の人間がその場で演じる迫力を改めて感じたし、笑える場面も多くありそういう意味でも楽しめる舞台だった。もっと舞台も観に行きたいと思っているので、誰かぜひオススメを教えてくれるか、誘ってほしいと思っている。(本当に誰かお願いします)

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