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色々な詩っぽいのの集まり

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#詩

目を開けてくれ
目を開けて
まばたきをしてくれ

お前はまだ生きているのだと
そう錯覚させてくれ

夏休み

学校に行く用事もない
家にいたら追い出される
遊ぶ友達もいない

田んぼを歩き
川面を見つめ
木々に混じる

親が出かけたら
家に置いてある本を漁る

楽しかったのかはわからないが
人間に邪魔をされなかったのは気楽だった

慣れないことをする
初めてのことをする

このやり方で良かったんだろうか
違うやり方があったんじゃないか
間違っていないか
迷惑をかけていないか
自分が愚かに見えるんじゃないか
そういう不安で憂鬱になる

その憂鬱さこそ
自分を成長させる
私にはそういう信仰がある

理解

全ての理解の根底には
体験だけがある
体験的に納得したことだけが
理解のパーツに用いられる
体験的に納得したことを繋げて
理解をする
そうして得た理解を繋げて
別の理解をする

全ての理解の出発点には
体験だけがある

多くの理解をするために
多くの体験をしたい

ピエロ

私を笑え
私を笑え
さあほらどうした
いいから笑え
なぜお前は笑わない
そうかお前私を馬鹿にしているな
俺は笑われているんじゃない
笑わせているんだ
いいから笑え
さあほら早く

何かを得たとき
どこかから奪っている

何かを与えられたとき
どこかから奪われている

誰も不幸には見えないとき
不幸な人は巧妙に隠されている

周りの皆がいつも笑顔のとき
遠くの人々が険しい顔で働いている

そのバランスは技術で壊せる
だから私は技術を前進させたい

平行線

男は男こそが人間だという
女は女こそが人間だという
男は女のことがわからない
女は男のことがわからない
父は母の苦労がわからない
母は父の苦労がわからない
父は母の生きがいがわからない
母は父の生きがいがわからない

男女は交わらない
しばしば近付いて並行する

あなたはすべての人に愛される
あなたの未来は希望に包まれている
あなたの名誉は語り継がれる

あなたはすべての人に疎まれる
あなたの未来は絶望で満たされている
あなたの不名誉は刻まれる

ぜんぶうそ

あちらこちらに空蝉のこして
穢して歩くこの現し身
日差しに焼かれて声張り上げて
止まり木探すこの夏の世

予定

立てる目指す修正する
立てる目指す修正する
たまに休む
立てる目指す修正する
立てる目指す修正する
小さなものから大きなものまで
毎日いくつもぐるぐる回す

意気地

心に一本立てた柱
折れず曲がらずぶれもせず
それを目指して補強して
明けても暮れても補強して
堅くしたはずの柱は
堅すぎたゆえに全てを受けとめ
音を立ててくずおれた

粉々になった柱の残骸
横に並べて床とする
もはや高くはなれないが
それでもまだまだ役に立つ

靴の声が聞こえる
少し焦っているようだ
車の声が聞こえる
いらいらしているようだ
硬貨の声が聞こえる
落ち着かないようだ
自転車の声が聞こえる
不安そうだ

人間の声が聞こえる
全てを混ぜ込んだ
人間の声が聞こえる

自分のためにしてやれることはあるか
友のためにしてやれることはあるか
他人のためにしてやれることはあるか
詳しくないことを口にしていないか

それをいつも考える

人生の意味は何だろう
幸せになるにはどうすればいいだろう

そんな意味の無いことは考えない

大変

五郎太の家で子供が生まれたか
そらあ大変だ
与平んちの息子が熱出したか
そらあ大変だ
ヨネのところの爺さんが死んだか
そらあ大変だ
タエが死んだって?
そらあ
よくない

おいらより後に生まれたやつが
おいらより先に死ぬってのは
そらあおめえ
本当によくない