周山街道をゆく chapter3-3 常照皇寺(3)
→chapter3-2 常照皇寺(2)
時計を気にしながら国の天然記念物 『九重桜』を撮った。有名過ぎる見事な樹齢650年と言われる老木だ。他にもあまりの美しさに後水尾天皇が思わず御車を返して眺めたという『御車返しの桜』、御所の紫宸殿の株分されたという『左近の桜』がある。毎年遅い春に大勢の観光客が見物にやって来る。
庭をひと通り撮り終えると急ぎ門を出た。
さらに石段で撮影をした。
時計を見ると次のバス時刻まで10分になっていた。急ぎ参道を下りた。2分足らずでバス停に着いた。行きとは反対側のバス停だが、そこには食事処があった。事前にネットで調べていたこの界隈唯一の店だ。腹が飛び切り空いていたが、滅多に来ないバスに乗り遅れたら大変だ。そう思うと我慢する他なかった。
バス停(待合所)には屋根があり、備え付けのベンチには座布団が敷かれていた。その座布団は地元有志会から提供されたものではないだろうか?NHK京都放送局の天気予報では美山地方が出るので認知しているが、冬は厳しく周山も美山とほぼ似たような天候だと思う。今は温暖化で雪が積もることは減っていると聞いているが、山間部であることには変わりなく、それなりに吹雪いたたり、雪は結構、積もると思う。
僕はバスが着るであろうその時までマスクを外すことにした。誰もいない、誰も来ないであろう、この場所で深い緑に彩られた美味しい空気を思い切り吸いたかったからだ。マスク生活が始まって1年半が過ぎた。空気飛沫感染注意と連日のメディア報道にすっかり染まり当たり前の風景となった。
そういえばコロナワクチンが出回る前(2020年)、市バスに乗車していた時に一人マスクをしていない高齢男性が僕の後ろの方でゴホンゴホンと咳をするので、すぐに席を立ち運転席の近くに避難し、下りる予定のない次のバス停で逃げるように下りた。家の帰るなり感染しているのではという恐怖からいつもの2倍の時間を掛けてうがい手洗いをした。この頃は毎日TVで感染者が何人・死者何人と具体的な数値を掲示して報道するものだから周りは皆バイキンマンのように見えていた。
深呼吸を数回繰り返した。生き返った心地だ。やはり空気が旨い。
やがてバスが来た。
chapter3-4 かやぶきの里(1)→
追伸 postscript
実は編集に当たり常照皇寺のことを調べた。現在AIで調べたいことの80%くらいは答えてくれるようになったが、かゆいところまで届くまでには至っていない。AIはデジタル化DigitizationされたDataの中から的確な答えを瞬時に見つけることができる。裏を返せばデジタル化されていないDataは何一つ答えられない。常照皇寺の事をもっと深掘りしたくて図書館(analog)に行ってみた(2024.8.19)。
その本文の冒頭(p9)に常照皇寺が出て来る(引用させていただく)
京都42選の寺社を瀬戸内寂聴さんのエッセイessayで綴っている。その中でも寂聴さんは常照皇寺がお気に入りのようだ。
物書き(小説家)の文textはやはり違うと思った。その卓越した描写力、読んでいて楽しくなる。KYOTO guide book おすすめの一冊。
常照皇寺は桜のseasonの数多ある京都guidebookの中で隅の方にちょこんと載る程度の存在にすぎない。それは京都市そのものが桜の名所といわれるほどに至るところに名所が存在する所以だろう。この寺の桜の満開は御室の遅咲きの桜と同じくらともいわれている。僕はこの寺の桜が咲き誇っている実物(画像以外)を観たことがない。桜の名所が多すぎてこれまで機会に恵まれなかったとも言える。訪れたのは1回目は夜、2回目は秋であった。