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プロ声優を最速で目指すための10の方法【声優への近道】

みなさん、はじめまして。もしくはお久しぶりです。

ブログ「声優への近道」を運営している声優のchikamichiちかみちと申します。

僕のプロフィールをサクッと紹介させていただきますと、

声優/演技講師/「声優への近道」管理人。専門学校で演技の勉強を始め、声優になる。活動歴は10年を超えたあたり。「声優への近道」では声優志望者に向けて、プロ声優になるためのノウハウを発信中。

詳しく知りたい場合は、ブログのプロフィールページをよろしければご覧ください。

そんな僕が今回「声優を最速で目指すための10の方法」について執筆させていただきました。

先に中身を紹介すると、

 1.モノマネ演技をやめる
 2.時間や回数を指標にしない
 3.自分が下手だと自覚する
 4.演技力を磨くことに注力する
 5.距離感をまずは考える
 6.大手事務所を選ぶ
 7.「24×365」を常に意識する
 8.声優になるを一番にする
 9.飽きるくらい1つの作品を観まくる
10.ブログ声優への近道をみる

といった10個の内容です。

自分で言うのもなんですが、かなり濃密な内容になりました。「声優を目指す人なら読んで絶対に損しない」と自信をもってオススメできます。

この記事を執筆するにいたった経緯

この記事を執筆するキッカケとなったのは「初心者向けの演技指南書はよく見かけるけど、その先まで深堀りしているものを見かけないな」と日頃から感じていたことでした。

自分自身が声優志望者だった頃も、そういったものを求めていた記憶があります。

でも見かけるのは「初歩的なもの」か「初心者には全体像が掴みづらい難解なもの」だけで、その橋渡し的なものには出会えませんでした。

なので「超初心者が脱初心者、そしてプロになるまでをひとまとめにした内容」を自分で執筆しようと考えたのです!

そのためには、ある程度のボリュームの記事が必要だと予想できたので「はじめから30,000文字を想定しておこう。それなら書きたいことが書ききれるし(まあ流石に3万字も書かないだろうけど)」と思っていたのですが……。

30,000文字じゃ全然足りませんでした(笑)

びっくりするくらい早々に30,000文字を使い切り、後半は「いったい書き終えるにはあと何文字必要なのか?」とビクビクしながら書いていました。

その結果、文字数は膨れ上がり、かなり濃密な内容(90,000字超)の「声優を最速で目指すための10の方法」ができあがったのです。

異様な文字数になった深いわけ(言い訳)

そもそも「30,000字で書こう!」の時点でnoteの文字数相場とズレていたらしく(noteはもう少しコンパクトな文字数の記事が好まれるみたいです)、3万字ですら相場の2~3倍というハイカロリー記事だったのです。

全て書き終えてから「あれ?note記事ってもっとコンパクトな文字数が標準なのでは?」と気づき、震えました。

しかし、声優志望者や演技初心者に伝えるべきことを書き連ねたら、簡単に1万字、2万字は超えてしまいます。だから結果オーライ!!

「書きたかったことが3万字では収まらなかった」ことや「noteの文字数相場を知らなかった」おかげで、偶然の産物?として内容の充実した記事が完成したのですから。

初めからこれだけ書くと分かっていたら、きっと挫折していたでしょう(笑)

といったことが、この記事が異様な文字数になった経緯です。

当初に予定していたよりも分厚くなりましたが、その分自信をもってオススメできる内容になったので、声優志望者はぜひご覧になってみてください。

※この記事の読者層は「声優になりたい演技未経験者」「専門学校や養成所で演技を学んでいる人(演技初心者)」を想定しています。

chikamichiちかみちの記事を読むメリット

まずはじめに「自称濃密なのは分かったけど、chikamichiの記事をわざわざ読むメリットは?」という誰もが真っ先に考えることについて答えます。

正直、声優や演技に関する書籍なんてたくさんありますし、差別化できるポイントがハッキリしていないと「ぜひ読みたい!」とはならないですよね。

なので、この記事を読むメリットをしっかりとお伝えしたいと思います。

メリットは大きく分けて2つあります。

【メリット1】超初心者からプロレベルまでの流れを網羅

ひとつ目のメリットは、冒頭で説明した「超初心者が脱初心者、そしてプロになるまでの流れを掴めるような内容」であるということです。

この記事ほど、こと細かに説明しているものを僕自身は読んだことがないので、唯一無二の深掘り内容だと自信があります(文字数からも根掘り葉掘り掘り下げていることがご理解いただけると思います)。

声優の勉強を進める中でつまづきやすいポイントをできる限りまとめたので、なにかしらで「成長が停滞している」「壁にぶつかっている」と感じている人が読めば、きっと対処法が見つかる内容になっています。

【メリット2】声優志望者に伝わりやすい内容(声優志望者目線)

ふたつ目は「僕自身が声優志望者と意思疎通しやすい」ということです。

世の中には数多くの声優講師、演技講師が存在しますが、そのなかで僕が差別化を図れる点は次の2つです(意思疎通しやすい理由)。

1.「声優になりたくてなった声優」
2.「アニメ好きから声優になった演技講師」

ただこれだけでは「どこが差別化ポイントなの?」「読むメリットになってなくない?」と疑問に感じるかもしれません。

しかし、この1と2がめちゃくちゃ重要なのです。

というのも現在、専門学校や養成所で指導している講師のほとんどがベテランかつ演劇畑出身だからです。これは有名な養成所や専門学校であればあるほど当てはまります。

まあ教えてもらうなら、若い講師よりもベテラン講師のほうが安心感もあって良いに決まってますよね。

ただ僕自身が養成所や専門学校でベテラン講師から学んでいた時に困ったことがありました。

それは「講師と自分の視点が違い過ぎる」ということ。

経験豊かな講師と演技始めたての僕では、月とスッポン。比べるのもおこがましいと思うかもしれませんがそうではありません。

ここでの視点が違うとは、声優としての実力差や経験の差によって生まれるものではなく、声優になるまでの歴史や環境が違うことによって生まれるギャップを意味しています。

そして、このギャップを抱えるとなぜ困るのかというと「視点が違う=講師と声優志望者が同じものを見ても、見え方が違う」わけです。

つまり、講師視点の指導に対して理解できない場面が度々出てくるのです。

講師と声優志望者の当たり前は違う

講師視点でのレッスンが展開されることで「今の説明どういうこと?」「講師の言ってる感覚が掴めない」といった状況が頻発します。

ただ講師は別にイジワルしているつもりはありません。講師の中で当たり前と思っていることをサラッと流している、省略しているだけです。

しかし、その当たり前を声優志望者は当たり前とは思っていないので、理解が追いつかず混乱してしまうんですね。

こんな状態でレッスンを受けても、効率的に成長することは不可能でしょう。

なので、声優志望者はいち早くこのギャップを解消する必要があります。

ただ困ったことに、このギャップの解消は簡単ではありません。僕自身もこのギャップをなくすために随分と時間がかかりました。

実際、養成所や専門学校に通う生徒のほとんどはこのギャップ解消のために多大な時間を要しています。それほどにこのギャップは厄介なのです。

しかし、ここで初歩的な疑問を感じませんか?

「講師との間にそもそもギャップがなければ、ギャップ解消に労力を割く必要がないのでは」と。

そんな裏技を可能にするのが、1と2の条件を満たした講師なのです。

1.声優になりたくてなった声優
2.アニメ好きから声優になった演技講師

なぜなら、現在の声優志望者と境遇が「同じ」「似ている」からです。

この記事を読んでいるあなたも、

  • 将来の夢は声優(俳優ではない)

  • アニメやゲームの影響で興味をもった

  • 声優に憧れて、声優になりたいと思った

これらに少なからず当てはまっているのではないでしょうか?

要するに「同じ動機で声優を志した人間から指導を受けたほうが、お互いに話が通じやすくてストレスがないのでオススメ!」というわけです。

逆に第一線で活躍している講師の方々は能力が高くとも、声優志望者と同じ目線になることがむずかしいといえます。

というのも、先に述べたように講師の方たちは、演劇畑出身のベテランが多いからです。

つまり、俳優の経験が当然ながらあり、役者としての第一歩もアフレコなどではなく、実際に板の上に立つ舞台(または映像)からといった方ばかり。

そこで培った経験をもとに、声優として成熟したのが、現在の講師たちなのです。

この時点で既に、あなたの思い描く「声優になるための道のり」とかけ離れていませんか?

そもそも「声優になるために舞台の経験を積む」「身体全体を使った芝居を学ぶ」という選択肢を考えたことすらなかった人のほうが多いのではないでしょうか。

それこそ「俳優」と「声優」は別ものだと。

しかし、養成所や専門学校では「舞台演技」のレッスンを取り入れていることがほとんどです。

つまり、声優を育成する現場では「声優が舞台演技を学ぶことは当たり前」なのです。

でも大半の声優志望者はそれを当たり前だとは思っていません。

この時点で「舞台演技を学ぶべき」と「舞台演技を学ぶ必要ある?」といった両者の考えにギャップが生まれてしまっています。

そして問題なのは、当たり前すぎてなのか「声優志望者が舞台演技を習うべき理由」をすっ飛ばしたまま、舞台演技の指導を始める講師がとても多いことです。

これではギャップは解消されずに、両者の溝が深まるばかりです。

なので「舞台演技のレッスンは受けてるけど、そういえばなぜ必要なのかと考えたことないな」といった養成所生や専門学生も多いと思います。

その結果「舞台役者には興味がないから、舞台演技はやらなくていい」といった独自解釈に行き着き、舞台演技のレッスンをサボる人も現れる始末です(個人的にはレッスンを自分の判断で取捨選択するのはオススメしません)。

※まだ養成所や専門学校に通っていない人からすると「サボる人がいるの?」と驚くかもしれませんが、養成所あるあるといえるほどに「○○のレッスンはムダ」とか「アフレコ以外は興味なし」とサボったり、グチりながら渋々受けている人は多くいます(汗)

舞台演技は「感情表現の鍛錬」に最適

そもそも声優が舞台演技を学ぶのは「舞台役者にもなれるように」ではなく、舞台演技が「感情表現の鍛錬」に向いているからです。

というのも、演技の入り口が「声の演技」からだと高確率で感情表現が苦手になりやすいのです。

※このことを講師から詳しく説明されないまま、舞台演技のレッスンが始まることが多いので、サボりたくなってしまうのも少しは理解できます。

実際、声優志望者の8~9割は感情表現が苦手といった印象を受けます。

その大きな理由はテクニックの部分ばかりに力を注いで、感情表現をおろそかにしてしまうからです。

※ここでのテクニックとは「色々な声色を使い分ける」「カッコイイ・カワイイ声に仕上げる」などを指します。声優志望者はこれらに力を注ぎがちで、肝心の演技力がなかなか身につきません。

ちなみに養成所や専門学校での演技指導の軸が「アフレコ」ではなく、「舞台演劇」である理由はとても単純です。

先に述べた「感情表現の鍛錬」に向いているというのも理由のひとつですが、一番の理由は演劇畑出身の講師が指導しているからです。

舞台演劇から役者のノウハウを学んだ人間がどのように役者を育てるかといえば、同じように「演劇仕込みの方法」を選択するのは自然なことだといえるでしょう(舞台は演技の基本とも言われますし)。

まとめると、

◆養成所や専門学校の講師は「演劇経験者」がほとんど
◆レッスンでの演技指導は「舞台演劇」を基にしたものが多い

といったことが、どこの養成所や専門学校でも当てはまります。

この指導のやり方自体に僕は異論ありません。現在は「声優を目指すなら、舞台演劇を学ぶことは必修」と考える側です。

しかし、現在の声優志望者のほとんどは、

  • 「なぜ声優が舞台演技のレッスンをするの?」

  • 「舞台じゃなくてアフレコがしたいんだけど…」

と疑問に感じてしまうと思います。もちろん当時の僕もそうでした。

声優志望者にとって舞台演劇は遠い存在

アニメの影響で声優という職業に興味をもった人間の人生に「舞台」や「演劇」なんてものは存在しませんでした。

舞台を観た経験も数えるほどでしたし、声優を目指すから舞台を参考にしようなんて発想もありません。

そんな人間がいざ演技の勉強を始めた際に、「声優を目指すなら、舞台演劇が基礎だから頑張ろう」と言われても、簡単には理解できませんよね。

こういった理由から「別に舞台や映像のお芝居がしたいわけじゃないのに」と納得できず、舞台演技のレッスンに本気で取り組まない声優志望者が多く現れてしまうのです。

ただ僕の場合は、当時ドがつくほどのマジメ生徒だったので、講師の指導を何でも疑うことなく即採用していました。なので「舞台演劇が大事なんだ!」と意欲的に勉強するまでに時間はかかりませんでした。

※余談ですが、僕のケースはあまり褒められたものではありません。「マジメな生徒で良いじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、悪くいえば「講師の指導をただ鵜呑みにしているだけ」なので、自分で考えることを放棄しているともいえるのです。鵜呑みをマジメと美化してはいけません。

しかし、そんな(良くいえば)マジメで講師を信頼していた僕がレッスンを意欲的に受けていても、講師と自分との間で「共通の言語」を共有できていないと感じることが多々あったのです。

その原因が、声優になるまでの歴史や環境が違うことによるギャップです。

講師と声優志望者の歩んできた歴史は別もの

講師の方々も、昨今の声優志望者はアニメやゲームに影響を受けて、声優を目指した人が多いと十分に理解しています。

なのでそれを理解したうえで、声優志望者に伝わりやすいレッスンを進める講師も多くいらっしゃいます。

しかし、声優志望者を取り巻く昨今の環境が「声優志望者にどのような影響を与えているのか?」を本当の意味では把握しきれていないと感じます。

なぜなら僕自身が数多くの演技講師と出会ってきた中で、この違和感を一貫して抱き続けてきたからです。そして、このことが両者の意思疎通を阻害している大きな原因だとも確信しています。

ではなぜこのような状況が生まれてしまうのかというと、講師と昨今の声優志望者の人生には次のような違いがあるからです。

講師の人生
演劇に憧れて演劇の勉強を始め、後に声優にもなる

声優志望者の人生
声優に憧れて、声優の勉強のために演劇の勉強を始める

この2つは絶対に別ものです。

たとえば観劇に対する意識でも、演劇にもともと興味のある人なら「勉強のために舞台を観に行け」と言われなくても、舞台を観に行きますよね?

舞台や芝居が好きで役者を目指した人からすれば、観劇は特別なことではなく当たり前のことだからです。つまり、

①舞台を観て感動した

②自分もやりたい

③役者を目指す

という流れであって、

①役者を目指す

②舞台を義務的に観始める

の順番では絶対にないはずです。

役者を目指す人の人生に、観劇は趣味や娯楽として既に寄り添っているのです。そこに「仕方なく」とか「義務的」「嫌々」なんて感情はありません。

声優志望者に当てはめるなら「アニメを観なさい」と言われなくても、自分から率先してアニメを何本も観ている状況と同じです。

このような講師と声優志望者の「役者としてのスタート位置(歴史や環境)」が違うことによる差は、レッスンの中で度々顔をのぞかせます。

その最たる例が「演技の組み立て方」です。

声優志望者の9割、演技の組み立てめちゃくちゃ説

舞台演技をよく理解していない、それどころか「声優の演技はアニメ(吹替)っぽく演じれば良い」と思っている人の演技はぶっちゃけひどいです。

そして残念なことに、アニメや声優文化に感化された声優志望者の9割以上がこれに当てはまっています。

つまり、声優志望者の大半はアニメっぽく演じるクセがついていて演技がうまくありません。

※声優志望者には「過激なぶっちゃけ話」に聞こえたかもしれません。しかし、脱アニメっぽい演技は脱初心者のカギなのでとても重要です。後ほど『声優を最速で目指すための10の方法』内で詳しく紹介します。

こうなってしまう原因は「役者としてのスタート位置(歴史や環境)」が関係しています。

「アニメを観て、声優を目指す」という歴史を辿った人が、なにを演技の参考にするかといえば、アニメ作品に決まっているからです。

そして令和の時代に、アニメや声優文化の影響を全く受けずに声優を目指し始めた人など、もはや絶滅種レベルです。

つまり、声優志望者は大なり小なりアニメの影響を受けていて、同じような歴史を辿ることになります。

だから、アニメっぽい演技をする声優志望者が量産されてしまうんですね。

そのため講師はアニメっぽい演技をしてしまう人に対して、丁寧に演技のやり方を指導します。

しかし、そもそもアニメしか観ていない人間に、舞台の演技法をそのまま指導しても効果はほぼありません。

なぜならアニメを手本にしている人間に、観たこともない舞台をものさしにした話をしても理解できないからです。

これは「相手に分かりやすいように例え話をしてみたけど、例えたものを相手が知らなかった」みたいな状況に似ています。

例:○○という料理を説明する場合

講師「○○って料理は、パッタイみたいな味だよ」

志望者「いや、パッタイって料理がまず分からないんですが…」

講師「なんでパッタイ(タイ風やきそば)も知らないの??」

講師の当たり前と思っている知識を声優志望者は知らない

この指導方法だと、声優志望者は「○○という料理」も「パッタイ」もよく分からないまま終わってしまう

これがパッタイです(笑)

最悪の状況で終わってしまいましたが、別に講師も声優志望者も特別に悪い点はなかったはずです。

  • 講師は善意で分かりやすい「例え」を提示した

  • 声優志望者が「パッタイ」を知らないこと自体は別に悪くない

ですが、お互いの認識のズレが原因で講師が伝えたいことをきちんと伝えられず、声優志望者は理解することができませんでした。

これを声優のレッスンに戻して、考えてみます。

講師が演技のやり方について、舞台演劇をもとにしたアプローチで指導しても、声優志望者にはその感覚がなかなか理解できません。

しかし、講師からすれば「初めのレッスンで舞台演技のノウハウをいちから教えたのに、なぜ理解できないんだ?」と感じます。

その結果「いくら言っても理解できないのは本人の努力不足だ。復習を怠っている」といった判断をされてしまうのですがそうではありません。

パッタイの例と同じで講師と声優志望者では「(置かれた環境による)知識の前提」が違うので、部分的な説明だけをされても理解が追い付かないのです。

講師がいちから教えたつもりでも、声優志望者には講師の考えるいちからでは全容が掴みにくく、理解するのがむずかしいのです。

ゼロから、いやもっとマイナスからの指導を始めないことには、声優志望者にはストレートに伝えることができません。

※パッタイの例でいえば、志望者のタイ料理への造詣が深くなかった。このことを講師側が十分に考慮した指導に切り替える必要がありました。

何度もいいますが、講師と声優志望者では「役者を目指したスタート地点」が違います。その点を考慮しなければ、お互いに理解できません。

では今度は講師側の気持ちを理解するために「野球」でたとえてみます。

講師にとって声優志望者は未知の生物

日本で野球といえば、ルールなどの理解度に差はあっても、誰でも絵は浮かびますよね。「実際にプレイしたことがない」「観戦した経験がない」といった人でも次のようなことは理解できているでしょう。

・ボールを投げてバットで打つスポーツ
・9人の守備が捕球、送球する
・打った選手は塁を半時計に回っていく

なので仮に「野球とソフトボールの違いって分かる?」と問えば、「知ってるよ」や「野球詳しくないから分からない」といった答えが返ってくるはずです。

間違っても「野球とソフトってなに?」「野球ってスポーツがあるの?」なんて人はいませんよね。

つまり、「誰もが野球を知っていて当たり前」という前提のもとでこの質問はされています。

これと同じように演技講師は「声優(役者)を目指しているなら、この程度のことは理解できていて当然だ」と信じて疑わずに舞台演技を軸とした演技指導をおこなっています。

しかし先ほどの野球とソフトの質問を、野球の認知度が低い地域の人宇宙人にすれば「野球ってなに?」といった回答が得られるように、前提を飛び越えた相手に対しては「当たり前」は通用しません。

つまり、声優志望者は(現在の)声優を育成する現場において宇宙人レベルなのです。共通の言語を共有できていないので、必死にレッスンに取り組んでも講師の言っていることが十全には理解できません。

例えるなら、次のような状況と同じです。

講師「いま2ストライク3ボールの大事な場面だよ」
志望者「なにそれ?とりあえず大事な場面なんですね!」

講師「9回裏、ここで逆転しなきゃヤバいぞ!」
志望者「9回裏?自分はあと何回打席に立てるんですか?」

会話が成立していそうでしてませんよね。肝心な部分を声優志望者側が把握できていないからです。

しかも会話が成立していると錯覚する絶妙なラインなので、講師も声優志望者も互いに疑問を感じる部分があったとしても、「まあなんとなくは理解できているし」と問題を処理せずに先に進んでしまいがちです。

ベテラン講師と声優志望者には世代ギャップがある

パッタイや野球の例のようなすれ違いが、養成所や専門学校ではよく起きています。

このままでは講師が伝えたい真意をくみ取ることなんて不可能ですよね。

これを改善するには、

①指導側が知識ゼロの相手に対しての指導に切り替えるか、
②声優志望者が講師の話を理解できるレベルまで知識を蓄える

しかありません。

しかし、ベテラン講師の方々は「なぜ声優志望者との間で共通の言語を共有できないのか?」という問題に対して、明確な回答をそもそも持っていないように感じます。

そのため丁寧にゼロから教えるにしても、知識ゼロのゼロがどこを指すのかがよく分からず、結果的に認識のズレが生まれてしまうのです。

つまり、知識ゼロの相手に合わせたレッスンができている講師は現状ほとんどいません。

この原因は講師に「アニメや声優文化に憧れ、声優を目指す」といった経験がないからです。

現在の声優志望者と同じ体験をしてきていないので、ベテラン講師は声優志望者の知識、経験のムラが理解できません。

【声優志望者の知識、経験のムラ】
・アニメ作品、吹替映画を観た経験は豊富
・舞台などを観た経験は少ない
・演技の手本はアニメや吹替から
・声優と俳優が別ものだと思いがち

その結果、ベテラン講師は昨今の声優志望者が陥りやすい状況を本当の意味で理解することがむずかしいのです。

要するにジェネレーションギャップみたいなものが発生しています。

現在の声優志望者は「アニメ」や「活躍している声優」を手本に声優を目指す「声優→声優世代」です。

しかし、ベテラン講師の多くは「役者→声優世代」

この差が大きなギャップを生み出すと僕は考えています。

才能がないのではなく、話がかみ合っていないだけ

僕が出会ってきた演技講師たちは素晴らしい演技力の持ち主で、なおかつ分かりやすく演技論を教えてくださる方ばかりでした。

しかし「講師と声優志望者の間でなぜストレートに話が伝わらないのか?」という根本的な問題に切り込んでいる講師には、残念ながら出会ったことがありません。

生徒としてレッスンを受ける立場だった頃、講師が「話が通じる相手(演技に理解がある生徒)」に向けて話しているような感覚が常にありました(実際はそんなつもりはないのでしょうが)。

このような指導では「つまずいた人はどんどん置いていかれてしまって当然ではないか」と当時の僕はモヤモヤしていたのを覚えています。

演技が上達しない生徒は、講師側からすれば「察しが悪い」「努力が足りない」という判断になるのでしょうが、本当は共通の言語がなく、かみ合っていないだけなんだと、10年以上活動を続けてきた今、確信しています。

というのも、僕自身も声優の勉強を始めたころに「講師の言っていることが分からない」と悩んだことが数えきれないほどあったからです。

しかし、今思い返すと「なぜ、あの程度のことでつまづいていたんだ?」と感じるような些細なことばかりです。そう思えるのは、現在の僕が講師たちと同じ言語を操れるようになったからです。

共通の言語を得ることができれば、演技を学ぶうえで感じる様々な疑問の答えが見つけやすくなります(大半の疑問は講師の言っている感覚が理解できないことが原因なので)。

現在、養成所や専門学校で壁にぶつかっている声優志望者もかみ合っていない状態を改善することで、その壁を乗り越えられると思います。

なので、僕が考える最速で声優を目指すために必須な条件は共通の言語を有した講師から質の高い指導を受けること。

これが声優になる近道です。

そのためには、

・アニメ好きから声優に興味をもった
・専門学校でゼロから勉強をスタートした
・演劇などの知識も当然皆無だった
・声優として10年以上のキャリアがある

こういった経歴を辿ってきた僕のような「講師」と「声優志望者」、両方の立場が分かる人物からの指導が最適です。

声優志望者が抱きがちな「声優」や「声の演技」に対するイメージ。

そのイメージのせいでレッスン中につまずいてしまうポイント。

声優志望者がぶつかりやすい、それらの疑問を全て理解できます。

なぜなら僕自身もつまずいて、困って、もがいた経験があるからです。

現在ではありがたいことに舞台演劇に参加させていただく機会もあり、専門学校や養成所で「舞台演劇の重要性」を口すっぱく言われた意味が十分に分かります。

というか、口すっぱく言ってる側になってしまいました(笑)

今では、自分の演技に「演劇の演技論」が色濃く反映されていると、自信をもって言えます。

先に述べた共通の言語を共有する方法のうち、①指導側が知識ゼロの相手に対しての指導に切り替える。

僕はこれが可能な演技講師です。

演技経験ゼロのただのアニメ好きが10年活動を続けられる声優になってるわけですからね。

こういった理由から、この記事は「声優・演技関連の知識ゼロの人でも理解できる内容」に仕上がっています。

講師の話を全て理解できなくてもいい

両者のギャップをなくすもう一つの方法、②声優志望者が講師の話を理解できるレベルまで知識を蓄える。

あなたにはこの記事を「読み」「実践」し、この状態を目指してもらいます、とは言いません。

もちろん最終的にはそのレベルまで到達してほしいのですが、短期間(数か月~数年単位)でベテラン講師と同じ感覚を全て手に入れるというのは現実的ではありません。

ベテラン講師たちが演技を始めるまでの十何年の歴史、役者になってからの何十年の経験をこの記事を数時間読んだだけで得られるとは考えられないからです(書いた本人もびっくりのボリュームだとしても)。

これは実際にトライ&エラーを繰り返すことで学習できる部分が大きく、記事を読んだだけで理解できるのであれば、世のなかは役者や声優であふれかえっています。

なので「この記事を読んだら、ベテラン講師の言っていることが全て分かる!」みたいな幻想は取り払ってください。

この記事はそんな魔法の書物ではありません。

イメージは翻訳機みたいなものです。講師がよく使いがちな表現(でも声優志望者には分かりづらい)を分かりやすいニュアンスに変換して、お伝えしていると考えてもらえれば良いかなと思います。

つまり、この記事は知識ゼロの人が知識ゼロのままでも理解できる指導に特化したものであって、知識ゼロの人を講師の話が理解できるレベルまで押し上げるといった内容ではありません(後述しますが、講師と同じ土俵に上がらずとも声優にはなれるので)。

※読むと「英語が理解できて、英文の中身が分かるようになる」ではなく「英文が日本語訳されているので、それを読んで内容を理解する」みたいなイメージです。英文の内容は別に英語が読めずとも、理解する方法はありますからね。そのお手伝いをこの記事がさせていただきます。

では、実際にこの記事を読むことでどんな知識が得られるかというと、冒頭で説明したように「声優を最速で目指す方法」をお教えします。

しかし、そもそも声優になるとはどういうことでしょうか?

プロ声優の定義は「事務所所属」

声優は免許や資格が必要ない職業です。というか免許や資格自体が存在しないので、実は誰でも声優を名乗ることができます。

たとえば僕が声優、役者、タレント、アーティスト、作詞家、作曲家、ダンサー、占い師、漫画家、ギタリストという肩書でも嘘にはなりません(ギター弾けませんけど)。

だからといって「今この時点であなたは声優です!おめでとう!」みたいなオチで終わらせようとは思っていないので安心してください。

大半の人が思い描くプロの声優といえば「○○事務所に所属の△△さん」のようなものですよね。

なのでこの記事では「最速で事務所と契約を結んで、アニメや外画に出演する方法」を紹介していきます。

つまり、とりあえずの目標として「事務所所属」を目指す。

そのために必要な「最低限の演技力をつける方法やノウハウ」「事務所の選び方」などに絞った内容をお伝えします。

ちなみに演技力を短期間で爆発的に上達させることはほぼ不可能です。

なので「演技力抜群になりたい!」といった人は、事務所に所属してからじっくりと精進していくことをオススメします。

この順番を勘違いする人が結構多く、成長が鈍くなる原因にもなりえるので「①演技力抜群→②事務所所属」ではなく「①事務所所属→②演技力抜群」の順を意識しましょう。

間違っても「数か月単位でベテランの域に」なんて思わないでください。無茶すぎます。

なので演技未経験者や養成所生、専門学生がまず目指すのは「演技力ありまくり声優」ではなく「プロの肩書に耐えうる声優」です。

つまり、目指すのは新人声優レベルになることです。

「え、新人声優レベル?志が低くないか?」と思いましたか?

しかし、新人といっても事務所に所属するプロ集団の一員であることには違いありません。

これが意味するのは「事務所に所属するためにはベテラン級の演技力など必要ない」ということです。新人声優の技量にさえ届けば、事実上はプロの仲間入りができてしまいます。

※これと同じように「講師の話を理解できるレベルまで知識を蓄える」ということは「講師の域に(ある種)到達」と同義です。なので短期間でクリアする目標としては現実的ではありません。講師レベルを短期的な目標に設定するとかなりの遠回りになってしまいます。

それに「演技が抜群に上手い声優になる!」みたいな曖昧な目標設定だと日々の進捗具合の良し悪しも判断しにくいです。

なので、明確なゴールを定めることをオススメします。

そのためにも、まずは事務所所属(新人声優レベルに到達)を目標にすべきでしょう。

■段階を踏むことで道筋が見えてくる
1. 少年野球 → メジャーリーガー
2. 少年野球 → 甲子園出場 → プロ野球選手 → メジャーリーガー

1と2では最終目標が同じ「メジャーリーガー」ですが、2のほうがやるべきこと(流れ)が明確化しやすいですよね。

事務所所属はとりあえずの目標だけど、簡単じゃない

「まずは事務所所属」といっても、挑戦できる権利を持っている人(養成所生)の中から実際になれるのは5%未満です。

大半の人間が悔し涙を流します。

簡単に考え過ぎると、涙を流す側に回ってしまうので注意しましょう。

「とりあえず」という言葉に騙されずに、常に声優になることを考えて生活するくらいの心構えが必要です。

裏技はないけど、最短ルートは必ずある

記事内で紹介する「10の方法」の内容は、裏技的なショートカットではありません。基本的に「地道にコツコツと一歩ずつ」が前提です。

そんな地道な学習を続けていく中で、壁にぶつかり、成長が停滞してしまう時期があなたにも必ず何度か訪れることでしょう。

今回、紹介する10の方法はその時期を「少なくする」「短くする」ことに主軸を置いた内容です。

つまり「ムダを省いてタイムを縮める方法」を紹介しています(声優志望者は意味のないことに一生懸命になって、時間を浪費しがちなので)。

なのでこの記事では、

1.アニメ好きから声優になった講師による演技指導
2.タイムロスなく声優を目指すためのノウハウ

この2つを軸とした内容を展開していきます。

ちなみに講師の話を全て理解できなくてよいと説明しましたが、記事内の指導を参考にして学習を進めていくと、講師の話に反応できる部分が徐々に増えていきます(あなたのレベルが着々と上がっている証拠)。

そのまま講師の話が7~8割くらい理解できるようになれば、基礎的な演技力が既についている段階でしょう。

この段階まで到達できれば、事務所所属が射程圏内に入ってきます。

ただ「10割じゃなくてもいいの?」と不安な人もいるでしょう。

しかし先に述べた通り、全てを理解できる状態に1~2年ほどで到達するのは現実的ではありません。

なので、講師レベル(10割)を目指すのは、所属してからでOKです。

それでも全然遅くないので。というか、所属する段階で完成しきっている人なんて基本いないので、講師レベルに固執しすぎないようにしましょう(「不必要な焦燥感に駆られる」など、デメリットのほうが多いと思うので)。

地道にコツコツと努力すれば、きちんと成長していきます。

進捗は緩やかかもしれませんが、着実に講師との差が埋まっていくのは間違いありません。

そうすることで最終的には共通の言語(※)を手にすることができます。

(※)7~8割の理解があれば、共通の言語を手にしたと十分に言えるでしょう。しかも7~8割のラインであれば、1年以内で届くことも可能です。

そこまでいけば、この記事もお払い箱ですね(笑)

正直その取っ掛かりを掴むまでが大変なのですが、それはこの記事を何度も読んでぜひ掴んでいただきたいです。

「声優志望者が理解できる」に重点を置いた内容に仕上げましたので。

この記事はあくまで「橋渡し」でしかない

この記事は、講師と声優志望者の橋渡しになればとの思いで執筆しました。

なので間違っても、この記事だけを読んでいれば演技が上手くなるといった考えはやめてください。

メインに『専門学校や養成所、ボイトレでのレッスンや自主練習』
サブに『声優を最速で目指すための10の方法』

といった使い方を想定しています。

一番大切なのは日々の鍛錬です。キッカケをこの記事で掴めても、鍛錬を重ねなければ身に着きません。

この記事は「今回紹介する10個のポイント+あなた自身の努力」で完成します。

ぜひ高いモチベーションを維持し続けて、声優を目指してください。

その際には、この記事が最高のパートナーになってくれます。

そろそろ本編がはじまります…

ひたすら長い前置きを読んでくださり、ありがとうございました。

途中でお気づきの人もいたかもしれませんが、まだ本編が始まっていません(汗)

ここからがやっと本題です!!

声優を最速で目指す方法を、様々な観点から10個紹介していきます。

  1. モノマネ演技をやめる

  2. 時間や回数を指標にしない

  3. 自分が下手だと自覚する

  4. 演技力を磨くことに注力する

  5. 距離感をまずは考える

  6. 大手事務所を選ぶ

  7. 「24×365」を常に意識する

  8. 声優になるを一番にする

  9. 飽きるくらい1つの作品を観まくる

  10. ブログ声優への近道をみる

ここからさらに長いですが、声優を目指す人は読んで損はしない内容ですので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

※本記事は許可なく第三者へ公開すること、または本記事の内容を転載することを禁止しております。場合によっては法的措置をとらせていただきますのでご注意ください。

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