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小説・えんまの帳

ー序章ー
むかし
おばあちゃんがよく言ってたことがある。
嘘をついたら、「えんま様に舌を引っこ抜かれるよ」って。
私は、そんなもの信じなかった。
信じたら、ほんとうに舌をひっこぬかれて、恐ろしい目にあうって、
思っていたからだ。

ここへ来てもうどれくらいの月日がたつのだろう、、
私の記憶もだんだんに薄れていく。

やがてすべてを忘れてこの風景に溶け込む
日がくるのだろう

ここは、とても静かな場だ
なにもないただ美しい水面が広がっている
私は、そっと手をのばしてなまあたたかな水の中に
指をひたす
熱くもなく、冷たくもない
やわらかなシルクのような触り心地にほっと息をもらす

人は、この水辺を
¨三途の川¨とよぶ。

第一章「おわりのはじまり」に続く


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