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直近の医師国家試験:感染症

感染予防 ☆☆☆☆

・標準予防策:全ての患者で適応です。手指衛生やマスクの着用などです。
・各種感染性微生物がどのように感染するかの理解が重要です。

115B26
82 歳の男性。発熱、嘔吐および水様下痢を主訴に来院した。3 日前から 38°C前 後の発熱、嘔吐および 1 日 8 回の水様下痢が持続しているという。経口水分摂取 が困難であるため入院した。入院時検査で便中ノロウイルス抗原が陽性であった。 診察にあたり、①アルコール手指消毒を行ったのち、②ビニールガウンを着用し、 ③プラスチック手袋を着用した。その後腹部の聴診と触診を行った。診察後はプ ラスチック手袋とビニールガウンを外し、④聴診器を白衣のポケットにしまい、 ⑤石けんと流水での手洗いを行った。
①〜⑤のうち感染対策として誤っているのはどれか。

正解は④です。

☆接触予防策
・対応が必要な感染症:多剤耐性菌、下痢に含まれる菌(大腸菌やCDノロウイルス)、疥癬(ヒゼンダニ)、エボラ出血熱など。
・個室管理(可能なら)、石鹸をつけて手洗い、手袋着用、診察時はゴーグルやガウンの着用も行います。
次亜塩素酸ナトリウムは床やドアノブなどの汚染に用いますが手指衛生には用いません

☆アルコールが無効の微生物
ノロウイルスなどのエンベロープを持たないウイルス、破傷風やボツリヌス菌、C. difficileなどの芽胞を有する細菌はアルコール無効です。
≪注≫アデノウイルスはエンベロープを持ちませんが、新油性が高いためアルコール有効です。105B30で出ています。
≪注≫コロナウイルスはエンベロープを有するためアルコールは有効です。
・アルコール無効のノロウイルスの消毒には次亜塩素酸ナトリウムを用います。

115E47
75 歳の男性。発熱、腹痛および下痢のため救急車で搬入された。
現病歴:10 日前から左下腿蜂窩織炎のために入院して抗菌薬の点滴を行い、改善したため抗菌薬を内服投与に切り替えて 4 日前に退院した。2 日前から発熱、腹痛および 1 日 5 回以上の水様下痢が出現した。経口摂取と体動が困難となったため同居する妻が救急車を要請した。退院後に食中毒の原因となり得る食物の摂取歴はない。周囲に同じ症状の人はいない。
既往歴:50 歳台から高血圧症で降圧薬を服用中である。66 歳時に 2 型糖尿病と診断され 1 年前からインスリン治療を行っている。
生活歴:妻と 2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 家族歴:兄が糖尿病で治療中である。
現症:意識は清明。身長 168cm、体重 73kg。体温 38.6°C。心拍数 120/分、整。
血圧 136/70mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。皮膚のツルゴールは低下している。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常は認めない。口腔内は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で肝・脾を触知しない。 下腹部に圧痛があるが反跳痛はない。腸雑音は亢進している。四肢は下腿に発赤や熱感を認めない。
検査所見
血液所見:赤血球 490 万、Hb 14.3g/dL、Ht 42%、
白血球 18,200(好中球 84%、好酸球 1%、単球 3%、リンパ球 12%)、
血小板 20 万
血液生化学所見:総蛋白 6.2g/dL、アルブミン 3.8g/dL、
総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 30U/L、 ALT 38U/L、尿素窒素 40mg/dL、
クレアチニン 1.8mg/dL、尿酸 9.6mg/dL、 血糖 158mg/dL。CRP 4.3mg/dL。診察にあたり誤っている感染予防策はどれか。
a 個室での診察
b 直腸診実施時のゴーグルの着用
c 入室時のディスポーザブルガウンの着用
d 便検体採取時のサージカルマスクの着用
e 診察後の次亜塩素酸ナトリウムによる手指衛生

正解はeです。
・抗菌薬投与後の発熱と水様性下痢のためCD腸炎が考えられます。
・CDは接触感染であり、芽胞を有する菌のためアルコール無効です。

112D74
2 歳の男児。気管支肺炎の治療のため入院中である。セフェム系抗菌薬で治療を行っていたが、入院 5 日目に下痢が出現した。機嫌は良好であるが、微熱があり、1 日数回の下痢を認めるようになった。身長 76.9cm、体重 12.8kg。体温 37.7 °C。脈拍 124/分、整。血圧 112/48mmHg。呼吸数 30/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に発赤を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音は軽度亢進している。四肢に浮腫を認めない。便の検査を行ったところ、C.difficile 抗原陽性であった。
今後、診察の際に行うべき対応はどれか。2つ選べ。
a 手袋を着用する。
b エプロンを着用する。
c N95 マスクを着用する。
d 陰圧個室隔離を指示する。
e ベッドの間隔を 2m 以上あける。

正解はabです。いずれも接触感染予防です。

115F2
医療者が身につけるもの(1~5)を示す。
個人防護具[Personal protective equipmen〈PPE〉]でないのはどれか。

正解は④です。コロナ診療で特に個人防護具の重要性が指摘されています。正しい着脱法や注意点を理解する必要があります。

☆個人防護具(PPE)
・ゴーグル(アイシールド)、マスク、手袋、ガウンから構成されます。それぞれ上の画像の①②③⑤です。
・着脱順
着:ガウン⇨マスク⇨ゴーグル⇨手袋
脱:手袋⇨ゴーグル⇨ガウン⇨マスク

・手袋を外した後は手指消毒が必要です(手袋には微小な穴が空いてるため手指が汚染されているものと考える必要ありです)。

114B45
75歳の女性。発熱を主訴に来院した。
現病歴:昨日からわずかな排尿痛を自覚していた。今朝から悪寒戦慄を伴う発熱が出現したため、家族に付き添われて受診した。
既往歴:高血圧症のため、自宅近くの診療所で投薬を受けている。胆石症のため、同じ診療所で年1回の腹部超音波検査を実施している。
生活歴:60歳まで小学校の教諭をしていた。夫は5年前に死去し、現在は長男夫婦および中学生の孫と同居している。
家族歴:父が胃癌、母が大腸癌。
この患者の診察にあたり必要な感染予防策はどれか。
a 標準予防策
b 空気感染予防策
c 接触感染予防策
d 飛沫感染予防策
e 診察に用いたディスポーザブル物品の焼却

正解はaです。標準予防策は全ての患者に必要です。

114E25
麻疹ウイルスと同様の感染経路別予防策を要するのはどれか.
a A群レンサ球菌
b ムンプスウイルス
c 水痘帯状疱疹ウイルス
d 多剤耐性緑膿菌〈MDRP〉
e メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉

正解はcです。空気感染は結核、水痘・帯状疱疹ウイルス、麻疹の3つです。

114F45
16歳の男子。前腕部の切創を主訴に来院した。高校の部活動中に転倒し、前腕部に3cmの切創を負い受診した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍100/分、整。血圧110/60mmHg。呼吸数20/分。受傷部位以外に打撲、創傷は認めず、前腕部エックス線写真でも異常を認めない。
創部の洗浄、縫合処置を終えて、血液が付着したガーゼを廃棄する容器の表示はどれか。

正解はbです。バイオハザードマークには色による区別があります。
赤色は液体や泥状のもの、橙色はガーゼなどの固形物、黄色は鋭利なものです。

113B4
病原体と感染予防策の組合せで適切でないのはどれか。
a HIV ー 標準予防策〈standard precautions〉
b ヒゼンダニ ー 飛沫予防策〈droplet precautions〉
c 麻疹ウイルス ー 空気予防策〈airborne precautions〉
d C.difficile ー 接触予防策〈contact precautions〉
e インフルエンザウイルス ー 飛沫予防策〈droplet precautions〉

正解はbです。ヒゼンダニは接触感染です。

112B1
標準予防策〈standard precautions〉について正しいのはどれか。
a 患者を隔離する。
b 医療者の手指衛生を徹底する。
c 感染症と診断してから開始する。
d 感染症の治療が済んだら終了する。
e 特定の感染症への対策として実施する。

正解はbです。
a:空気感染予防です。
cde:感染症に限らず標準予防策は全ての患者に適応します。

112C1
アルコールによる手指衛生の効果が高いのはどれか。
a 破傷風菌
b ノロウイルス
c ロタウイルス 
d ボツリヌス菌
e インフルエンザウイルス

正解はeです。芽胞を持つ菌(Clostridium)や、エンベロープを持たないウイルスはアルコール無効です。

112E32
88 歳の男性。疲労感を主訴に来院した。1 週間前に上気道炎症状があった。3 日前から疲労感が強くなり、昨日から食事を摂ることができなくなった。トイレに起きるのもつらく、オムツをしていた。過去の健診で糖尿病の可能性を指摘されたことがある。現在、服薬はしていない。意識は清明。体温 35.7 °C。 脈拍 112/分、整。血圧 156/92mmHg。下肢に挫創を認める。
この患者に使用した物で、標準予防策〈standard precautions〉の観点から感染性廃棄物として扱わないのはどれか。
a 舌圧子を取り出した袋
b 口腔ケアに用いたブラシ
c 便が付着したオムツ
d 下肢の創部にあてたガーゼ
e 喀痰が付いたティッシュペーパー

正解はaです。他の選択肢(便、唾液、創部、喀痰)は全て感染性廃棄物です。

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