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直近の医師国家試験:血液


2024/1/14更新! 116回、117回分を追加しました

血球について ☆☆☆

117F25
末梢血好中球について正しいのはどれか。2つ選べ。
a 減少症の原因として薬剤性が最も多い。
b 副腎皮質ステロイドの投与で増加する。
c 成人の末梢血多核白血球の約60%を占める。
d 発熱性好中球減少症での基準は1,500/μL以下である。
e 急性細菌感染症では桿状核に比し分葉核の割合が増加する。

正解はabです。
a:抗がん剤をはじめ抗精神病薬や抗甲状腺薬など様々なケースがありますが、この選択肢の知識はない人も多いでしょう。実際は他選択肢の除外で選んだと思います。
b:正しいです。ただしこれは見かけ上の数が増えるだけで、好中球機能はむしろ低下します。副腎皮質ステロイドは好中球の血管内への接着を阻害するため、結果として骨髄血管内に張り付いている(プールされている)好中球が血中に遊離して見かけ上の数が増えます。
c:誤りです。多核白血球(好中球+好酸球+好塩基球)全体の中では90%ほどです。単核球も合わせた全体の白血球の中では60%ほどです。
d:500です。これは覚えるしかない。
e:左方移動と呼ばれるものです。急性感染症では好中球の需要が一気に高くなり、未熟な好中球である杆状核が増えます。

115C26
血液細胞に関する記載で正しいのはどれか。2つ選べ。
a 赤血球の寿命は約 30 日である。
b 造血幹細胞は多分化能を有する。
c 好中球は分葉核球と桿状核球を指す。
d 乳幼児の主な造血組織は肝臓である。
e 血小板は巨核球の核が断片化して産生される。

正解はbcです。
a:赤血球の寿命は120日、血小板の寿命は7日ほどです。
b:幹細胞は他の細胞への分化能と自己複製能がある細胞です。
c:正しいです。この2つが末梢血に出ています。 
d:骨髄です。造血の場は胎生2ヶ月ほどまでは卵黄嚢、2〜7ヶ月ほどは肝臓と脾臓、それ以降は骨髄です。
e:核ではなく細胞質です。

114C10
造血幹細胞の特徴で正しいのはどれか.
a 止血作用
b 貪食作用
c 酸素運搬能
d 自己複製能
e 血栓溶解作用

正解はdです。

輸血 ☆☆☆☆☆

血液製剤の使用指針が以下にあります。

☆輸血のトリガー値
赤血球輸血はHbが7未満が多くの場合トリガー値
≪注≫貧血であるかと貧血症状の有無は別。同じHb値でも、それが急激な低下か緩徐な低下かでは症状の度合いも異なります。輸血するか否かの判断、輸血後の経過では臨床症状も重要です。
血小板数が 5 万/μL 以上不要。
・血小板数が 1~5 万/μL では場合によっては血小板輸血が必要。
血小板数が 1 万/μL 未満では血小板輸血が必要
≪注≫一般的に血小板減少では皮下出血や歯肉出血など浅い出血がキーワードですが、血小板数の大幅な低下は脳内出血など危険な出血を伴うこともあります。
新鮮凍結血漿は凝固因子の補充を目的とします。

☆輸血製剤の保存法
新鮮凍結血漿は-20℃以下で保存
血小板は20~24℃で振とう保存
赤血球は2~6℃で保存

☆輸血の副作用
①急性反応:輸血後24時間以内の反応
・溶血:ABO不適合
・輸血関連急性肺障害(TRALI):非心原性肺水腫
・輸血関連循環過負荷(TACO):過剰負荷による心不全。BNP↑、血圧↑です。
・アレルギー:アナフィラキシーを起こすことも。
・細菌感染症:輸血製剤の細菌、エンドトキシンによる。
②遅発性反応:輸血後24時間以降の反応
・溶血:ABO以外の原因(不規則抗体など)
・GVHD:後述
・鉄過剰:後述
・ウイルス感染症:HBV、HCV、HEV、HIV、CMVなど。

116B34
19歳の男性。交通外傷のため救急車で搬入された。河川沿いの堤防道路でオートバイ運転中に対向車と接触し転倒、崖下に転落した。問いかけに対して名前は言える。心拍数122/分。血圧72/50mmHg。呼吸数28/分。SpO2 96%(room air)。右前胸部に圧痛があり、右呼吸音が減弱している。腹部は膨満している。右下肢は外旋位で右下腿の変形と開放創を認める。大量輸液を行っても血圧の上昇がみられなかった。出血の持続と凝固障害の合併が懸念されるため、血液型の確定を待たずに院内にある輸血製剤を用いて輸血療法を行うことにした。
投与が可能な濃厚赤血球液と新鮮凍結血漿の組合せはどれか。

正解はbです。
血液型確定前に輸血を行う場合、赤血球は抗原性のないO型、FFPは抗A、抗B抗体を含まないAB型を用います。
Rhは多くの日本人でRh(+)のためこれを用います。

115A43
5歳の女児。急性リンパ性白血病で入院中であり寛解導入療法を行っている。体温 36.4 °C 。眼瞼結膜は貧血様である。下腿に紫斑を認める。血液所見:赤血球 288 万、Hb 8.8g/dL、Ht 26 %、網赤血球0.1 %、白血球 800(分葉核好中球 19 %、単球 0 %、リンパ球 81 %)、血小板 1.0 万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)、APTT 29.2 秒(基準対象 32.2)、血漿フィブリノゲン 170mg/dL(基準 200~400)。
対応として適切なのはどれか。
a 血小板輸血
b 新鮮凍結血漿輸血
c 赤血球濃厚液輸血
d エリスロポエチン製剤の投与
e トロンボポエチン受容体作動薬の投与

正解はaです。血小板数1万は重篤な出血のリスクが大です。

115D32
78 歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。約 1 か月前から全身倦怠感があり増悪するため受診した。意識は清明。脈拍 88/分、整。血圧 130/84mmHg。眼瞼結膜は貧血様であるが眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点と する収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 185 万、Hb 6.5g/dL、Ht 21%、白血球 2,600(骨髄芽球 0%、桿状核好中球 3%、分葉核好中球 50%、好酸球 1%、好塩基球 1%、 単球 2%、リンパ球 43%)、血小板 9.2 万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン 3.4g/dL、総ビリルビン 0.7mg/dL、AST 21U/L、ALT 11U/L、LD 240U/L(基 準 120~245)、尿素窒素 17mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸 5.2mg/dL、血清鉄 120μg/dL(基準 80~170)、TIBC 280μg/dL(基準 290~390)、フェリチン 120ng/mL(基準 20~120)、エリスロポエチン 180mIU/mL(基準 4.2~23.7)。骨髄は正形成で骨髄塗抹標本では 3 系統の造血細胞に異形成を高頻度に認めた。骨髄細胞の染色体は正常核型であった。
この患者への対応で適切なのはどれか。
a 赤血球輸血
b 鉄キレート剤の投与
c 同種造血幹細胞移植
d 副腎皮質ステロイドの投与
e トロンボポエチン受容体作動薬の投与

正解はaです。MDSでは同種幹細胞移植を行いますが、本症例は78歳と高齢なため行いません。Hbが7を下回り貧血症状が出現していることから赤血球輸血を行います。

112B33
59 歳の男性。左腎細胞癌の診断で腎部分切除術を受け入院中である。手術 2 時間後にドレーンから血性の排液があり、意識レベルが低下した。JCS II-20。脈拍 152/分、整。血圧 56/42mmHg。呼吸数 16/ 分。SpO2 は測定できなかった。腹部は軽度膨満している。
血液所見:赤血球 218 万、Hb 5.0g/dL、Ht 18 %、白血球 9,300、血小板 15 万。
次に行うべき処置として誤っているのはどれか。
a 酸素投与
b 赤血球輸血
c 血小板輸血
d 細胞外液の投与
e ノルアドレナリン投与

正解はcです。血小板数は保たれています。

115C36
32 歳の経産婦(2 妊 2 産)。1 年前からの不正性器出血を主訴に来院した。病期 Iの子宮頸癌と診断され、4 週後に広汎子宮全摘術とリンパ節郭清術が予定された。 予測出血量は 800mL である。血液所見:赤血球 390 万、Hb 10.1g/dL、Ht 31%、 白血球 5,200、血小板 30 万。血液生化学所見:総蛋白 6.4g/dL、AST 32U/L、 ALT 29U/L、フェリチン 5ng/mL(基準 20~120)。血液型は AB 型 RhD(-)で ある。
現時点の対応として誤っているのはどれか。
a 鉄剤投与
b 自己血貯血
c 不規則抗体スクリーニング
d 赤血球液-LR との交差適合試験
e 血液準備量について院内輸血部門と調整

正解はdです。
111E56と同じ問題です。大量出血が予想される場面では、輸血に備える、鉄剤投与、自己血貯血を行います。クロスマッチは実際に投与する輸血製剤を使って反応を見るため、輸血直前に行います。「現時点」で行うことではありません。

113E21
輸血開始 1 時間後に、発熱、悪寒および呼吸困難が出現し、血圧が低下した。 可能性が低いのはどれか。
a 輸血関連急性肺障害
b 異型輸血による溶血
c エンドトキシンショック
d アナフィラキシーショック
e 輸血後移植片対宿主病〈GVHD〉

正解はeです。GVHDは輸血後24時間以降に見られる遅発性反応です。

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