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直近の医師国家試験:神経

解剖

・項目がとても多いので小項目に分けています。

機能解剖①:脳神経  ☆☆☆☆

115E25
左動眼神経麻痺のある患者が左方注視をしたときの両眼球の位置(①〜⑤)を示す。正しいのはどれか。

正解は③です。左眼は外転神経が生きているため外転可能。右眼は動眼神経が生きているため内転可能です。
参考:Weber症候群で扱う問題(115D18)にて
「左眼の直接対光反射は消失。眼球運動検査で右方視時に左右に分離する複視を認めるが、左方視で複視は生じない。」との記載があります。

☆Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ
・動眼神経(Ⅲ)、滑車神経(Ⅳ)、外転神経(Ⅵ)が眼球運動に関与します。
滑車神経は上斜筋支配で、障害されると眼位は外上転位。内下方が見にくいため、顎を引いて健側に頭を傾けるようになります(Bielschowsky‘s sign)
外転神経は外直筋を支配するため、障害されると眼位は内転位になります。
動眼神経は上記以外の外眼筋と、上眼瞼挙筋と、瞳孔括約筋を支配しています。障害されると眼球運動障害、眼瞼下垂、散瞳をきたします。

112B28
68 歳の男性。複視を主訴に来院した。昨日の夕方、自動車を運転中に突然対向車が二重に見えるようになり、今朝になっても改善しないため受診した。7 年前から糖尿病の治療を受けている。眼位は、左眼は正中位、右眼は内転位をとっている。複視は正面視で自覚し、右方視で増強するが、左方視では消失する。
最も考えられるのはどれか。
a 左 MLF 症候群
b 右外転神経麻痺
c 左動眼神経麻痺
d 右滑車神経麻痺
e 左 Horner 症候群

正解はbです。

114B29
32 歳の女性。自転車を運転中に転倒し救急車で搬入された。意識レベルは
JCS I-1 で、視野全体が暗く感じると訴えている。対光反射の瞳孔の写真を別に示す。
障害部位はどれか。
a 視神経
b 視交叉
c 外側膝状体
d 毛様体神経節
e Edinger-Westphal 核

正解はaです。右眼は光を当てても縮瞳していないため、右の求心路である視神経の障害を考えます。
c:外側膝状体は対光反射に関与しません(99D40で出題)。

☆対光反射
・求心路は視神経、遠心路は動眼神経です。
・光を当てたら縮瞳するのが正常です。

113C11
三叉神経の支配を受けるのはどれか。
a 前頭筋
b 側頭筋
c 眼輪筋
d 口輪筋
e 広頸筋

正解はbです。三叉神経の下顎枝は咀嚼筋を支配します。咀嚼筋は側頭筋、咬筋、内側/外側翼突筋も4つです。

☆三叉神経
・顔面の感覚と咀嚼筋を支配します。
参考:三叉神経の障害では、末梢神経レベルの障害では下図Aのような感覚異常の分布、中枢の障害では下図Bのようなonion -skin 型の障害になります。

機能解剖②:感覚系 ☆☆

115E42 連問の一部
病棟内歩行を再開したところ、洗面所で洗顔時に転倒した。詳しく問診すると、以前から、夜間に暗い場所ではふらつくようなことがあったという。
予想される診察所見はどれか。
a 静止時振戦
b 眼球運動障害
c Horner 徴候陽性
d Romberg 徴候陽性
e Chvostek 徴候陽性

正解はdです。
Romberg徴候陽性は別名洗面現象とも呼ばれ、顔を洗う際に目をつぶって倒れます。後索の障害を考えます。

114C66、68 連問の一部
80 歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。 現病歴:約半年前から家族との会話に積極的に加わらなくなり、家族からの問いかけにも答えないことがあったが、大きな声で話しかければ普通に会話ができており、挨拶も自発的にできていた。約 2 か月前から屋内外で歩行時にふらつきがみられるようになり、最近、転倒するようになった。公共交通機関を 1 人で利用することができなくなったため、家族に付き添われて受診した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:妻と息子夫婦の 4 人雑らし。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。入浴、トイレ動作は可能である。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:意識は清明。身長 164cm、体重 58kg。体温 36.6 °C。脈拍 72/分、整。血圧 132/76mmHg。呼吸数 12/分。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、 軟で、肝・脾を触知しない。神経診察において、Weber 試験では左に偏位している。軽度の構音障害を認めるが、失語はない。3 物品(桜・猫・電車)の即時再生には問題ないが、遅延再生は困難であ る。立方体の模写と時計描画試験は不正確である。上肢 Barre ́ 徴候は陰性で、四肢腱反射に異常を認めず、病的反射を認めない。指鼻試験で両側上肢に測定障害を認める。歩行は開脚不安定で、つぎ足歩行は困難である。Romberg 徴候は陰性で、表在感覚および深部感覚に異常は認めない。
検査所見:
血液所見:赤血球 450 万、Hb 14.0g/dL、Ht 42 %、白血球 5,600、血小板 30 万。
血液生化学 所見:総蛋白 7.8g/dL、アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 1.0mg/dL、AST 16U/L、ALT 18U/L、LD 210U/L(基準 120~245)、ALP 250U/L(基準 115~359)、γ-GT 18U/L(基準 8~50)、CK 80U/L
(基準 30~140)、尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 0.9mg/dL、尿酸 5.0mg/dL、血糖 88mg/dL、ト リグリセリド 150mg/dL、HDL コレステロール 40mg/dL、LDL コレステロール 140mg/dL、Na 145mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.1mg/dL。
頭部 MRI の T2*強調水平断像(A~C) を別に示す。

画像46

C66
神経診察所見から判断される病巣として考えにくいのはどれか
a 橋
b 海馬
c 頭頂葉
d 小脳半球
e 脊髄後索

正解はeです。Romberg signが陰性のためです。
・Weber 試験では左に偏位⇨左の伝音難聴か右の感音難聴です。感音難聴ならば橋の問題でも現れます。
・軽度の構音障害を認める⇨発生に関わる筋や神経(ⅨやⅩの障害)で出現します。
・3 物品(桜・猫・電車)の即時再生には問題ないが、遅延再生は困難⇨認知症(海馬の問題)はあるかも。
・立方体の模写と時計描画試験は不正確である。⇨眼は見えていても対象を正確に認知できていない=失認の可能性。頭頂葉の障害かも。
・指鼻試験で両側上肢に測定障害を認める。歩行は開脚不安定で、つぎ足歩行は困難である。⇨小脳失調を疑います。

C68
医療面接および神経診察の結果から判断して、異常を示す可能性が高いのはどれか。
a 嗅覚検査
b 針筋電図
c 膀胱内圧
d 純音聴力検査
e 体性感覚誘発電位

正解はeです。Weber試験で偏位があり難聴があり、その病態の首座は脳であると考えられます。
画像ではT2*で、微小出血が低信号で写っています。大脳皮質や小脳に多発し、アミロイドアンジオパチーを考えます。

機能解剖③:小脳 ☆☆

114B7
右上肢に運動失調をきたす病変部位はどれか。
a 右放線冠
b 右中脳被蓋
c 右小脳半球
d 左延髄外側
e 左脊髄後索

正解はcです。
・小脳半球は四肢、小脳虫部は体幹の運動に関与します。
・右の小脳半球の障害では「右」の運動失調です。
・指鼻試験、回内・回外試験、踵膝試験が代表的。

112E12
アルコール依存症でみられる神経学的所見のうち、小脳失調の所見はどれか。
a 外眼筋麻痺
b 記銘力障害
c つぎ足歩行不能
d Romberg 徴候陽性
e 手袋靴下型感覚障害

正解はcです。

機能解剖④:自律神経系 ☆

113C24
副交感神経を含むのはどれか。3つ選べ。
a 動眼神経
b 三叉神経
c 顔面神経
d 迷走神経
e 舌下神経

正解はacdです。副交感神経を含むのはⅢ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹです。

解剖⑤:画像☆☆

112D40
85 歳の男性。右利き。左上肢の感覚鈍麻を主訴に来院した。昨夜、入浴中に左上肢全体の感覚が鈍いことに気付いたが、そのまま就寝した。今朝になっても改善していなかったため、不安になり受診した。60 歳台から高血圧症と糖尿病があり、降圧薬と経口糖尿病薬とを内服している。意識は清明。脈拍 68/分、整。血圧 164/92mmHg。脳神経に異常を認めない。上肢の Barré 徴候は陰性で、両下肢の筋力低下も認めない。腱反射は全般に軽度亢進しているが、左右差は認めない。左上肢に表在覚鈍麻があり、閉眼すると左母指を右手指でうまく摘めない。左下肢および右上下肢に感覚異常はない。
別に示す頭部 MRI の拡散強調像(①〜⑤)のうち、この患者のものと考えられるのはどれか。

正解は②です。
・左上肢の位置覚異常(上位MNは大丈夫)です。
・左上肢に対応する脳領域は右大脳半球の外側です(ホムンクルス)。

112F11
頭部 MRI(①〜⑤)を別に示す。 黒質が映っている断面はどれか。

正解は③です。黒質は中脳の一部です。中脳は某資本主義ランドのマウス型のため③です。

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