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軌道と速度

AさんとBさんの再会

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【質問】 
AさんとBさんは、それぞれ自転車で自分のコースを走っています。
Aさんは14日間で1周を/Bさんは7日間で1周を回り終えるスピードで走っています。

①AさんとBさんが次に行き会えるのは、出発してから何日後でしょう?
②AさんとBさんが次に同じ場所で行き会えるのは、出発してから何日後でしょう?

 先週、「今週のことば」の掲示に、こんな質問を載せてみました。数学みたいな問題ですね…そのまんま数学ですかね。私は数学科の教員ではないので、正確な解き方に自信はありませんが、おそらく答えはこんな風に求めるじゃなかろうかと思います。

【正解】 ①も②も、14日目 です。(※おそらく)
 この問題では「行き会える」というのがそれぞれの軌道上でAさんとBさんが同じ位置に来れば良いわけなので、距離を求めるよりも角度を求めるのが適切な導き出し方になります。1周=360° ですので、1周するのにかかる日数でそれぞれ割れば、1日あたりの進める角度が求められます。

となると、
Aさん=360 ÷ 14 = 51.42857143…°/日
Bさん =360 ÷ 7 = 25.71428571…°/日
です。更に、それが出発点の360°になると0°にリセットされて、それぞれの数が合うのは何日目…?と、ちゃんとExcelで表を作ってわざわざ比較してみたのですが、結果的には問題が単純すぎました(笑)。
 ①も②も、一度出発してしまうと、Aさんが1周を走り終える14日目の時点まではBさんも途中で抜かすことができないので、結局14日毎にしか行き会えないんですね。しかも、ちょうど1周なので、場所的に再会できるのも出発点と同じ場所なので、①も②も答えは同じ、というわけです。

 ということで、何とも解き甲斐のない質問を出題してしまいましたが、「今回、コレはいったい何から思いついたのでしょう?」というのが、実はもっと大切な質問です。数学よりも、理科の分野なのです。

 今回のタイトルに戻ってみると、「軌道と速度」とあります。そう、何となくイラストからも想像がつくかも知れませんが、宇宙に関する話です。

地球と火星の接近

 答えは、コレです。

 私自身、宇宙にも星にも全然詳しくもありませんが、先日のシルバーウィーク中に天文台へ行ってきました。なかなか遠出もできないご時世ということで、保育園や小学校の遠足で訪れたことがある我が子を連れて(※私も学校の遠足で行きましたが…)、プラネタリウムを楽しむことを目的にして行ってきたわけです。
 その中で、紹介されていたのが「火星の最接近」。恥ずかしながら、何となくギリギリでオリオン座とかカシオペア座くらいは分かるかな…という程度のもので、普段からあまり星空を楽しむこともしていませんでした。でも、いざプラネタリウムで色々な星座をストーリーを交えて紹介してもらうと、素直に面白く感じて引き込まれていきました。そして、「赤っぽく光るあの星は…?」と注目して見ていたところ、「あれが火星です!皆さん、知っていましたか?これからの時期、火星が非常に近づいてハッキリと見えるんですよ!」とお兄さんの紹介。

 『なるほど~!』と思いつつ、帰宅してから調べているうちに、地球と火星が接近する仕組みやタイミングを知り、ますます面白みを感じるようになりました。およそ2年2ヶ月に1度、「会合周期」と呼ばれるタイミングが来るわけですが、太陽の周りを公転している地球と火星の軌道は、地球が円に近い形なのに対して、火星は楕円形をしているとのこと。しかも、「会合周期」が2年ちょうどではなく2年2ヶ月と微妙なため、行き会える角度も毎回ずれていくという、ちょっといびつな関係性なのだと知りました。
 その地球と火星が今回最も近づくのは、来週の2020年10月6日だそうです。たまたま知り得たこの2年2ヶ月に一度しか来ないタイミングが、まさに来週に控えているとなったら、『せっかくだから見てみよう!』となりますよね。

科学の進歩と切ない気持ち

 でも、そんな火星の接近にちょっとワクワクしたのと同時に、少しだけ寂しい気がしてしまいました。なぜかと言うと、私はこの【火星と地球】を調べているうちに、何となく人と人との関係のように感じたのですが、そのそれぞれがたどってきた道筋もこれから先にたどる軌道も、全てがもう正確に明らかにされてしまっていたからです。まるで、運命が決まっている人同士の関係性のように思えてきて、『もう変わることはないんだなぁ…』なんて切ない気持ちになってしまったわけです。
 だからこそ、あえてAさんとBさんを例にして、軌道と速度の問題に換えて皆さんに紹介してみたのです。だって、「7日で1周回ります。」なんて言われたって、もしかしたら本当は途中でパンクして止まっちゃうかも知れないし、最初に頑張りすぎちゃって1日でほとんどゴール間近まで進んじゃうかも知れません。そんな”分からない運命”があるからこそ、人生は楽しいし飽きないのだと思います。「1周に14日かかる」とされていたAさんだって、Bさんに早く会いたくて頑張って走っているうちにスピードが上がりすぎて、もしかするとBさんと全く同じ周期になってしまい、結果的には一生巡り合えない2人になってしまうかも知れません。それも人生。

 くだらない質問だったかも知れませんが、そこから色々なイメージを自由に広げてもらえたらイイなぁと、私は思っています。Aさんの【軌道】とBさんの【軌道】、それは皆さんの「機嫌」と友達の「気分」にも置き換えられませんか?そのリズムが合う時もあれば、全然合わなくて最悪な関係性の時もある。でも、お互いに影響を与え合ったらそれぞれの軌道がちょっとずつ形を変えていって、いつの間にか交わってみたりもして。そんな【軌道】に自分たちの気持ちを重ねて、「私が地球で、あなたが火星?」なんてイメージしてみるのも良いでしょう。
 同じように、軌道を回る【速度】だって、私たちの「頑張り」とか「必死さ」なんかに置き換えられるかも知れません。「隣の席のあの子がメッチャ頑張ってるから、私も頑張ろう!」と必死になっているうちに、元々の【速度】からずっと早く走れている人も出てくるでしょう。逆に、人を全く気にせずにただただ淡々と自分のペースでやっていける人もいるはずです。そんな【速度】に自分たちを重ねてみるのも面白いですよね。

 ということで、今回は「ことば」というよりも、地球と火星に自分たちを重ねてみよう!という、ちょっとアバウトなお話でした。ともかく、来週はそれぞれの立ち位置から、ぜひ火星を見てみましょう。

Thank you!!