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人事評価の仕組み

 前回のnoteで、メンバーポテンシャルに応じた目標を設定し、評価で報いる話をしました。そこで、今回は人事評価の仕組みについて考えてみます。



人事評価制度

 人事評価制度とは、メンバーの組織内における役割を明確にし、そのパフォーマンスを公平に評価し、報酬に反映する仕組みです。グレード、評価、報酬の3つのポイントがバランスすることで、制度が運用されます。
 グレードは、年功・職務・職能・成果などの軸によって定められ、例えば、日本の古い会社は年功序列的なものが多かったと思いますし、グローバルIT企業は職務、国内IT企業は職能が多いと思います。


MBO

 MBOとは、Management by Objectiveの略で、メンバーが上司との間で目標を設定し、その達成度合いを振り返る方法です。ドラッカーによって提唱された目標管理制度で、日本では年功序列のグレード体系をベースに、成果創出する優秀な若手をリテインする目的で、短期成果を加味する手法として浸透してきました。国内IT企業の場合は、職能ベースのグレード運用に成果連動で賞与を加味し、MBOで振り返りを行っているところが多いように思います。

MBOの方法
①組織プラン〜上司のMBO〜メンバーのMBOとそれぞれを共有した上で目標設定します
②目標設定する項目は、短期・中期、組織・個人で、業績、アクションプラン、能力開発について記載します
③振り返りの際に達成度を測れるようできる限り定量要素を加味するようにしましょう

 MBOはメンバーが主体的に目標設定し、それを上司と共有し、振り返ることができることがポイントです。組織の目標が一方的に降ってくるのではなく、自身のキャリアビジョン(Will Can Must)と照らし合わせ、自分ごと化した目標を設定することが重要です。
 そうすることで、日常業務の中でCanを増やしていき、それを振り返ることが能力開発に繋がっていきます。また、組織目標〜チーム目標〜個人目標と因数分解されることで、組織における個人の役割が明確になり、仲間との連携を実感できる効果があります。そして、自身のキャリアの展望、上司の期待、組織のビジョンを、自己評価とともに上司と振り返ることで、関係の質を高めることができます。

人事評価

絶対評価と相対評価

 評価においては、まず最初に絶対評価を行うことが重要です。個人の設定した業績目標、能力開発目標に対して、進捗した点、苦戦している点を振り返り、Canの拡張を確認し、メンバーの成長を認めます。うまくいかなかった点については改善ポイントを協議し、次に繋げていきます。そうして、Will Can Mustの重なりを拡大していくのです。

 最終的に、評価の結果をもって報酬を決定することになります。報酬の総額は、会社の中期計画を策定した際に予算に組み込まれているので、この有限の原資をメンバーに割り振るために相対評価を行う必要があります。
 人事評価というと、誰より売上が大きいとか、達成率が高いとか、だから報酬が多くなるべきという相対評価の話に終始しがちですが、まずは自身の目標設定に対し、絶対評価で振り返りを行い、その後、報酬原資の分配のために相対評価があるということを理解してください。


能力と成果

 前述の通り、グレードの軸は様々ですが、例えば、職能グレードで成果連動賞与を加味する場合は、能力評価によって予算ベースで給与が決定され、成果評価によって予算を上回った利益の一部を賞与として分配する形になります。


 人事制度の仕組みを理解せず、上司の主観的な説明だけで評価を行うのは、もったいない話です。会社の目標と個人のキャリアビジョンをすり合わせ、メンバーが目標を自分ごと化することで、やりがいを持って仕事を行い、能力開発に繋げていきます。その進捗を上司と振り返ることで、メンバーは自身の役割と組織との連携を実感し、関係の質を高めていくことができるのです。
 だからこそ、人事評価もまずは、絶対評価で過去の自分との差分を振り返って、未来に繋げていって欲しい。相対評価は、あくまで有限の報酬原資を分配するためのステップだと考え、周囲との比較に囚われ過ぎないことが大事だと思います。


後輩 竜野が思うこと
人事評価は、マネージャーがその仕組みを理解するのはもちろん、メンバーにもきちんと伝える必要があると感じました。そうでないとメンバーに自分の貢献や成長が正しく評価されていないと思わせてしまい、モチベーションを削ぐ原因になりそうです。これは、評価者、ひいては会社への不信感にもつながりそうです。

そして何より、評価以前に「私は『あなた』と向き合っている」というメッセージを伝えないといけないなと思いました。個々人のWill Can Mustを理解して、そのメンバーへの期待や課題を一緒に共有しながら目標設定をして、振り返りではマネージャー自身の素直な言葉も伝えて、そのうえで「今ある仕組みに則って決まった評価と報酬」を伝えていくべきなんだろうなと思います。

限られた時間と個性豊かなメンバーの中で、実際のところどこまでできるだろうかと思いますが、人事評価の仕組みをコミュニケーションにどう組み込むか、考え続けたいと思います。

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